藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

この発想を、医療に。介護に。お仕事に。

先日お会いした会社の社長さんは「会社のメールアドレスは一つだけ」とのこと。
今の時代に、と思うでしょうけど案外仕事が共有できていいもんです、と。

万が一、過去データがない場合は本社から全店に呼びかけ解決法が分かる従業員を見つけ出し、当該店舗に連絡させる。
全国約60店の1000人規模が知識を共有し、対応できないトラブルは限りなくゼロに近い。

「今、○○店でお客様が困っています!」と聞いて、自分がその一助になれるとしたら。
目の前にあるそんな状態って結構前のめりになるものだ。
要はそういう「環境」をうまくセッティングできるかどうかということなのではないか。
困っている人を無条件に救いたい、と思うのは人の自然な感情だ。

当たり前のことが案外難しい。

発掘 強い会社(9) PCデポ パソコンなどの専門店 ITの「かかりつけ医」 操作苦手な中高年つかむ
2016/7/21付日本経済新聞 朝刊
 「今朝から動かなくなっちゃって……」。7月上旬、横浜市の主婦(57)が「ピーシーデポスマートライフ新横浜店」を訪れた。握りしめていたのは愛用のスマートフォンスマホ)。以前から調子が悪かったが、とうとう電源が入らなくなったという。数十分でスマホは無事に復旧。女性は笑顔で家路についた。

 IT(情報技術)機器の専門店、ピーシーデポコーポレーションはこうした修理・点検サービスが強みだ。メーカーを問わず、他社で購入した機器にも対応する。店頭には問診票が置かれ、来店客は機器の症状や発症時期を記入する。さながら、IT機器の病院だ。

 PCデポの2016年3月期の売上高営業利益率は8%。2〜3%台の家電量販大手をしのぐ。17年3月期の連結純利益は33億円と4期連続で最高を更新する見通し。利益率の高い月額会員サービスの伸びが背景だ。

 会員数は非公開だが数十万人にのぼるという。多くはIT機器が苦手な中高年層だ。対象となる機器の数に応じ、1カ月あたりの会費は1千〜5千円。初期設定やスマホの料金診断まで対応する細やかさが売りだ。

 野島隆久社長が起業したのは1994年。家電量販店の野島電気商会(現ノジマ)で創業者の次男として兄の野島広司・現ノジマ社長とともに働いていたが、普及期にさしかかっていたパソコンの専門店を展開しようと独立した。

 だが2000年代に入ると家電量販大手との販売競争が激化し、不振に陥った。違いを出そうと06年に始めたのが月額会員サービスだった。

 年間50万件を修理・点検するノウハウを支えるのは独自に構築した社内ネットワーク。「こんな症状が持ち込まれました。アドバイスをお願いします」。店舗の従業員が無線機で質問すると、本社のオペレーターが過去の修理データを調べて解決法を探す。

 万が一、過去データがない場合は本社から全店に呼びかけ解決法が分かる従業員を見つけ出し、当該店舗に連絡させる。全国約60店の1000人規模が知識を共有し、対応できないトラブルは限りなくゼロに近い。岩井コスモ証券の岩崎彰氏は「大手といえど一朝一夕にはまねできないノウハウ」と評価する。

 あらゆるものがインターネットでつながる「IoT」は新規会員獲得や、より高額な会費を払う会員増加の追い風となりそうだ。異なるメーカーの機器同士ではうまく接続できないといった事例が生じやすいためだ。

 需要拡大を見越し、ヤマダ電機など家電量販大手もサービス部門強化に乗り出している。転機となった競争が再燃しそうな雲行きだ。「IT機器のかかりつけ医」としての強みを維持できるかどうかが勝敗を分けそうだ。

(和田大蔵)