藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

逆境こそが母。

日経、十字路より。
"高齢化社会とAIの台頭"はどのような影響をもたらすのだろう。
一見別問題のような両者だけれど、一つの世界で同時に起きている現象だ。

イノベーションは、それを望めば盛り上がるわけではない。
リスクに挑む民間経済のアニマルスピリッツによるところが大きい。
(中略)
さかのぼれば、高度成長期は好条件に恵まれていた。今後の見通しはどうか。

自分は『逆境がなければ新しいものは生まれにくい』と思っている。
つまり"辛いところ"にこそ何かが生まれる素地があると思うのだ。

高度成長期は終戦があったこそ生まれた。
幕末は徳川治世から民主主義の胎動によって生まれた。(と思う)
「それ」を望んでも機が熟していないとそれは訪れないだろうと思う。

今度の超高齢化は「それ」ではないだろうか。
そして一方、自分たちはどんどん働く時間が短くなっている。
この度は国を挙げて「残業60時間制」へという声が上がっている。

生産性は上がりつつ仕事は減り、
高齢化がどんどん進んで働く人は減る。

仕事が減ったり、リタイヤで仕事が無くなった自分たちは一体「次に何をするのか」。
そんな"アニマルスピリッツ"がこれからの10年の主役ではないだろうか。
これから、何かが起こる気がする。

人口減少とイノベーション

 少子化による人口減少は深刻な問題だ。働き手(労働力人口)が減って経済成長にマイナスに作用する。このため日本経済の将来に悲観論が強まり、それが翻って足元の経済活動に影を落とす。

 この状況に対し、悲観主義(ペシミズム)の行き過ぎを心配する声が上がっている。労働力人口が減っても、そのマイナスを上回るほど労働生産性を伸ばせば経済は成長すると説く。そして、成長を決めるのは人口よりも、新しい需要を作り出し生産性を高める広い意味での技術進歩(イノベーション)だと論じる。

 理屈はその通りだ。勇気付けられもする。だが疑問が残る。リアリティーの問題である。日本経済に改めてイノベーションのうねりが訪れるというハッピーストーリーの現実味はどの程度だろうか。

 イノベーションは、それを望めば盛り上がるわけではない。リスクに挑む民間経済のアニマルスピリッツによるところが大きい。その試行錯誤を見守る風通しの良さ、共感する積極性が社会に求められもする。さかのぼれば、高度成長期は好条件に恵まれていた。今後の見通しはどうか。

 大きな問題は、少子高齢化の帰結として世の中の空気がいや応なく老化していくことにある。競争よりも平穏が好まれ、覇気のない雰囲気が広がる可能性がある。

 そうなれば草食系のムードが定着し、成長せずに定常化する経済を受け入れる生活感覚も根を下ろす。ハングリー精神の発揮よりコンプライアンスやガバナンスを重視し、企業に無難な振る舞いを求める風潮はさらに強まろう。イノベーション加速にとって必ずしも順風とはいえない。

 行き過ぎたペシミズムは無用である。しかし、イノベーションの効用を聞かされ、それを漠然と当てにして安心するのも、単なる皮算用で危うい。人口減の不都合な真実は願望や期待では変わらない。

損保ジャパン日本興亜顧問 中川洋)