「プラットフォーム」という概念が、特にウェブが普及してから言われだしたのは、まだここ十年くらいのことだ。
もともとは「土台」という意味らしい。
そして「プラットフォームの取り合い」が始まった。
ネットスケープとかniftyとか、消えた存在も数多い。
けれど。
「ネット以前」の時代にはそんなに多くのプラットフォームってなかったのでは。
例えばテレビやラジオ、新聞や紙媒体。
文字通りの公共交通機関。
あるいは車。
思えばアナログの世界は悠長だった。
ネットの登場で事態は様変わりし、色んなものの種類とか速度が何十倍にも速くなった。
でもそれはつい数年間の出来事だ。
マインロソフトが脅かされるとも思わなかったし、
その前のIBMがどうにかなるとも思わなかった。
Googleが出てきたときは戦慄したが、今は「次は誰か」という気持ちになっている。
AIを開発する二十代は「次はGoogleではないでしょう」と本気で思っているらしい。
素晴らしい技術革新、つまり「イノベーションの時代」は今確実に起きているのだと思う。
さて自分の歳で、今のような「黒船の時代」をどう過ごしていくのか、と考えると毎日も案外楽しんで過ごせると思っている。
グーグル売上高最高 強さの源泉はトラブルの源泉
米グーグルがプラットフォーム(基盤)企業のジレンマに陥っている。1日発表の決算では売上高が過去最高を更新した。クラウドなど新規事業も拡大が続くものの、収益の柱である広告事業はコンテンツの質を巡り批判が集まる。データ独占への視線も欧州では厳しい。強さの前提だった「市場支配力」が成長の重荷になっている。■広告獲得コストが増加
「クラウドと(傘下の動画投稿サイト)ユーチューブ、そしてハードウエア。大きな潜在力を持つ3つの分野で着実に投資を進めている」。持ち株会社アルファベットの決算会見、グーグルのスンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は「検索」とは異なる新たな事業の成長性を強調した。
クラウドは四半期で10億ドルの売上高を稼ぐまで成長し、ユーチューブの動画は毎月15億もの人が視聴しているという。それでも投資家の興味をひくのは広告事業だ。グーグルの売上高の85%は広告収入だ。クラウドもユーチューブもスマートフォン(スマホ)も、そして自動運転車の開発も、検索広告の稼ぎが無ければ成り立たない。
この日質問が集中したのは「トラフィック獲得コスト(TAC)」と呼ばれる広告獲得コストだった。グーグルが検索システムを使ってもらうために外部企業に支払う費用で、例えばiPhoneでの検索がグーグルにつながるのは、グーグルがアップルにこの費用を支払っているからだ。
17年10〜12月期はこのコストが前年同期比で33%増えた。費用の増加はグーグル本体の利益率減少につながる。ルース・ポラット最高財務責任者(CFO)は「今後の主要な広告市場になるスマホの世界でいい地位を築けている証し」とかわしたが、隠れたリスクとして投資家たちの目をひいた。
だが、フェイスブックやアマゾン・ドット・コムなど「プラットフォーマー」企業が相次ぎ自らのサービスを広告媒体として使うなか、高い広告収益性を維持するのはそもそも困難だ。TACの増加は検索市場での支配力を守りたいグーグルなりのやむを得ない判断とも言える。
■ソロス氏「ギャンブルと同じ」
視線を決算会見の外に転じれば、デジタル広告の世界はいまやリスクの固まりだ。フェイスブックが社会の分断を招くロシアがらみの広告を載せていたように、ユーチューブ上でもロシアが関与した広告の投稿が見つかった。プラットフォーマーとしてのシェアが高いほど、悪用もされやすくなる。グーグルとフェイスブックのネット広告のシェアは6割。もうけの源泉は時にトラブルの源泉になる。
2社に広告出稿が集中するのは、大量の個人データを持っているからだ。ネットの閲覧、入力履歴や位置情報などから広告主が狙いたい層を絞り込むことができる。まさにプラットフォーマーの強さの源泉だが、欧州などではプライバシー保護の視点から独占禁止法の適用を求める声がある。
著名投資家のジョージ・ソロス氏はグーグルとフェイスブックについて「彼らの優位性を維持するために、ネットワークを拡大しユーザーの注目度を高めている」と批判する。ネットワークの膨張はギャンブルと同じで人の自主性を損ねており、公的に見て有害だとの主張だ。
ソロス氏の指摘は極端かもしれない。だが無料で集めたデータを有料広告に活用し、さらに広告媒体としての価値を高めるべく大量のユーザーを取り込むというプラットフォーマーの成長方程式が今や批判の対象になっていることは確かだ。RBCキャピタルマーケッツはグーグルについて「今後は欧州と米国での規制強化がリスク」と指摘している。
1日までに決算を終えたアップルやアマゾンなどをIT(情報技術)大手4社は軒並み過去最高の売上高を記録した。それでも各社の会見ににじむ「慎重さ」は外からの逆風を予想してのものなのか。プラットフォーマー企業は他社の追随を緩さない高い壁をつくり上げた。巨大になった今、その壁が自らの前に立ちはだかっている。
(シリコンバレー=中西豊紀)