藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

おっさんが活躍

*[ウェブ進化論]ミドルが頑張る。
日経より。
おっさん起業家が案外活躍している、という話。
記事に紹介されている人たちの経歴を見ると、実に「バランス」がいいことに気づく。
そしてなにやら実に楽しそうな雰囲気が伝わってくるのだ。
社会人になって数年、様々な職場で働き、そこで得た気づきを頼りに「エイ」とひらめいて起業している。
この「エイ」。
自分たちの昭和の時代に「そんなことをする奴」はごく少数派だった。
先日若者の価値観が変わっていると書いたが、なになに。
おっさんの価値観もちゃんと変わってきている。
旧タイプの価値観から変わらないのは80歳以上だけになるのではないだろうか。
 
二十代はバンドマン。
技術や営業の現場で数年間学び、
割とマクロな時代の流れを感じて、銀行やGoogleをスパッと辞めて起業する。
これからはそんなスタイルがお手本になるような気がする。
 
何しろおっさんたちの表情はどれも楽しそうだ。
 
おっさんず起業に株式市場がラブ 意外な高評価の理由
 
2019年9月26日 2:00
 

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

スタートアップ企業の創業者といえばTシャツが似合う20代の爽やかな若者。そんなイメージはないだろうか。ところが最近では30代後半から50代の起業も活発だ。過去2年弱の間に新規株式公開(IPO)したスタートアップを日本経済新聞が調査したところ、そんな「おっさん」たちが率いる企業は市場の評価が高いことが判明した。知られざる「おっさんず起業」の実態を追う。
 

時価総額で若手起業家を圧倒

日本経済新聞は2018年1月から19年8月末までに東証マザーズIPOしたスタートアップの経営実態を独自調査した。創業者以外の人物が代表に就いている企業は除き、起業家が現在も陣頭指揮を執る企業に対象を絞り込んだ。最近は米国でスタートアップのIPOに逆風が吹き始めたともいわれるが、日本での成果はどうなのか。
 
当てはまった起業家は合計で73人。年齢別にみると34歳以下の「若手起業家」が45人で最も多く、35歳~59歳の「おっさん起業家」が24人で続く。60歳以上の「シニア起業家」が4人だった。
 
「やはりスタートアップの経営は若手起業家が主役じゃないか」と思いがちだが、株価に注目すると風景が変わる。
 
9月17日時点の株価とIPO時点の公開価格を比べ、どちらが高いかを比べてみた。若手起業家の会社では直近の株価の方が高い割合が67.7%。これに対し、おっさん起業家が率いる会社は若手をしのぐ75%の会社で株価が上昇している。
 
市場の期待を直接示す時価総額でみると、その差はさらに鮮明。おっさん起業家が経営する24社の平均時価総額は295億円で、若手の211億円を4割も上回った。
 
売上高は若手の会社よりも約2割小さいにもかかわらず、おっさん起業家は市場からの「ラブ」を受けている。この格差は、どこから来るのか。おっさん一人ひとりの具体例で探っていこう。
 

NTTとグーグルで勤務経験

ディーオーシャン(東京・新宿)の山本圭社長(48)はNTTに18年、グーグルに3年勤めて46歳で起業した。給与はグーグル時代の10分の1になったが「暮らすのに必要な金額があればいい」と気にしていない。
 
新卒でNTTに入社した当時、起業は「頭の片隅にもなかった」。転機は同社が約6000億円で買収した米ベリオに5年間駐在したことだ。ソフトウエアで複数のハードを統合する「仮想化技術」に触れて、刺激を受けた。当時は米アマゾン・ドット・コムクラウド事業に力を入れ始めた時期だ。社内で「クラウドサービスを始めるべきだ」と提案したが、周囲の反応は鈍かった。
 
14年にグーグルから誘われ、日本のクラウド事業で4人目の社員として入社する。小さなチームで工夫して事業を成長させるのは面白かったが、15年に同僚の八木橋平氏(43)と居酒屋で交わした言葉が次の転機となる。「データとデータが気軽に出会えるSNSを作れたら面白いよね」
 
約1年間、事業プランを練ったが起業には不安も強く、八木橋氏の元上司であるIoT向け通信のソラコム(東京・世田谷)の玉川憲社長に相談した。KDDIに200億円超で買収されたことで知られる玉川氏が個人で投資を決め、2人はグーグルを退職した。
 
そして今年2月にデータ専門SNS「ディーオーシャン」を立ち上げた。工場の稼働データや商店街の売り上げなど異なる業種で安全にデータを交換できる仕組みだ。
 
山本氏の経験を頼ってくる企業は多く、ITコンサルティングの依頼も多い。これまでの関係を生かし、大手企業のシステム担当者らで構成する「ユーザー会」を作った。ここで導入した企業のサービス活用事例を他社に見せて、さらに利用企業を広げる戦略だ。
 
7人の社員のうち半数以上は40代。「思いつきで行動せず、メンバーで議論して決める。スピード感は出ないが安定感はあると思う」。山本氏は自社をこう評する。
 
この自己評価は、実は経験豊富なベンチャーキャピタル(VC)の見方とも共通している。ジェネシア・ベンチャーズ(東京・港)は63社ある投資先のうち35歳以上が起業した会社が20社と、全体の約3割を占める。
 

「意思決定の精度が高い」

おっさん起業家の会社への投資が多い理由を田島聡一代表パートナーは「おっさん起業家は若手起業家よりも経験や場数を積んでいる分だけ、意思決定の精度が高い。いったん経営上のゴールを設定すると、回り道せず進んでいける割合が高い」と説明する。この安心感が背景にある。
 
数多くのユニコーン時価総額が10億ドル=約1100億円を超えるスタートアップ)を生み出している米国に、こんなデータがある。05年以降に創業したユニコーン195社のうち半数の起業家は35歳以上で、10年以上の社会人経験を持つという。スタートアップの本場でも、おっさん起業家は実績を残している。この「法則」は日本でも成り立つ可能性がある。
 
日本は米国と比べて人材の流動性が低く、優秀な人材は新卒で入社した大手企業で長く働くことが一般的だった。しかし大企業では、社内で生まれた優れた技術を生かし切れないことも多い。
 
豊富な経験や知識を持つ「おっさん」が独立して埋もれた技術やアイデアを事業化すれば、米国に比べてユニコーンの数で見劣りする日本の現状を変えられるかもしれない。
 

前職はバンドマン

オルターブース(福岡市)の小島淳社長(43)は高校時代から20代前半までは「バンドマン」として活動していた。1999年にプログラマーに転身し、物流や金融システムの開発に携わった。07年からはスカイアーチネットワークス(東京・港)に入社し、ウェブシステムの開発運用を主導した。
 
しかし仕事は厳しかった。「都会の生活に少し疲れたな」と感じたこともあり、12年に福岡に移住する。フリーランスで地元企業のIT顧問をしていると「クラウド化を手伝ってくれないか」という相談が相次いだ。1人ではとても要望に応えられないため、仲間を誘って15年にオルターブースを設立した。
 
同社がIT業界で知名度を高めた出来事がある。17年にマイクロソフトがパートナー企業向けに開催するコンテストで、スタートアップとしては異例の受賞を果たしたのだ。受賞後には40社ほどのVCが同社を訪れ、4社からは出資直前まで交渉が進んだ。
 
当時は個人の健康データを解析し、その人に合った調味料を作る事業を考えていた。小島社長は「計画は夢物語の要素もあったが、VCから何も言われなかったことに違和感を感じた」という。最終的には出資を断った。
 
その後は原点回帰を決めた。企業が導入したウェブアプリケーションのプログラムを解析してクラウド化の方法を助言するサービス「コーズミッシュ」を始めたのだ。
 
今年6月にはVCのマネックスベンチャーズなどから、約1億円の資金調達を果たした。「今回は、ちゃんと根拠を明確にして作った計画だ」と成果に自信を見せる。
 
小島社長がベンチマークとするのは19年にマザーズに上場したサーバーワークスやリックソフトのようなIT販社だ。「彼らにできて僕らができないことはない」とIPOに意欲を燃やしている。
 

「経営者として多くの引き出しを」

「1つのサービスだけでは成長が止まってしまう。経営者として多くの引き出しを持つことを意識している」。今年7月に東証マザーズへ上場したフィードフォースの塚田耕司社長(51)は、普段からこんなことを心がけているという。
 
同社はネット上に散らばっている企業の商品情報や広告をリアルタイムで更新する仕組み「データフィード」を主力とする。この事業を10年以上前から手がけている蓄積が強みだが、それだけが長所ではない。
 
上場後に力を入れているのはグーグルにショッピング広告を自動運用する「EC Booster(ブースター)」。中小企業の顧客が急速に増えているという。グーグルとの良好なパートナー関係のうえで成り立つ新規事業だ。
 
収益規模はまだ小さいものの「成長には非常に手応えを感じている」と塚田氏は語る。
 
もともと信託銀行の営業マンとして働いていた塚田氏がフィードフォースを設立したのは37歳のときだった。銀行を退職して96年にウェブサイトの企画・制作事業を手がける会社を立ち上げたが、景気の波に左右されて業績が安定しないのが悩みだった。
 
つまりフィードフォースは塚田氏にとって2回目の起業にあたる。設立後はクラウド経由でソフトを提供するSaaS(サース)事業を展開し、月額課金で安定収益を積み上げたうえで複数の新規事業を仕込んでいる。直近の時価総額は約120億円と、公開価格を8割以上も上回る高評価だ。
 
地方への移住や転職、そして起業。こんな経験の積み重ねが、おっさん起業家たちを強くしている。
 
(企業報道部 鈴木健二朗)