藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

これまでの常識とこれから。

それでも今、夜の繁華街に行くと歩きながらタバコを吸う人は結構目にする。
自分も喫煙者だったから、今のスモーカーたちの窮屈さは察するに余りある。

今、昭和の前半に作られたドキュメンタリーや映画を見ると、もうお茶やご飯と同様に「喫煙」が生活の一部になっているのに苦笑する。
ほんの数十年前は「そういう空気」だったのだ。

この間まで喫煙していた人が、禁煙した途端に「嫌煙者」になっている。
煙に目くじらを立てているが、「ついこの間までの自分」がそこにいるわけで、人というのは立場が変われば平気で「ま反対」の行動を示す。

こういうことは、お酒でも、コーヒーでも、あるいは食事でも、薬や手術でも、生活習慣でも、これからどんどん「新常識」に取って代わられるだろう。

お酒なんて、数十年先には禁酒になりかねなくないだろうか。(嘆)

そして、仕事だって経常利益、とかROEとか今は喧(かまびす)しいが、すぐ先には全く別の評価基準が常識になっているのだと思う。
くれぐれも「今の自分の価値観」は絶対ではないのだ、ということを頭の隅に置いておきたいものです。

日本へ「タバコ・バスターズ」の架け橋が〜民間レベルの反タバコ国際連携
グローバルブリッジ(Global Bridges)のHP
 革新的かつ先導的な医療機関として有名な米国のメイヨー・クリニック(MAYO CLINIC)と米国がん協会が2010年に設立した「グローバルブリッジ(Global Bridges)」は、禁煙サポートとタバコ規制の政策提言を目的にし、禁煙治療などに携わる医療関係者を中心とした国際的な連携組織だ。これまで5万人以上の参加者と世界60カ国が参加していたが、日本対がん協会が共同パートナーシップを結び、初めてこの世界的な組織と日本との間に橋が架かることになった。

公衆衛生の政治性

 けが人や病人を医療従事者が助けるのは当然だが、予防医学としての公衆衛生は極めて政治的政策的な分野であり、常に個人の自由と公共の利益との間に挟まれる。タバコ問題はその最たるもので、喫煙の自由や所有権、タバコ税収や利権防衛などと、医療費などの社会保障費の負担や受動喫煙の害などとの間で利益対立が起きがちだ。

 これは自由主義リバタリアニズム、libertarianism)と家父長的温情主義(パターナリズム、paternalism)とのせめぎ合いだが、公共の利益が常に個人の権利より上位にくるわけでもなく、政治的政策的な決定が道徳倫理的にすべて正しくもないだろう。だが、社会全体を俯瞰した場合、健全で健康な市民の存在は、経済や技術を含めた社会の成長発展や秩序維持にとって欠かせないものであり、公衆衛生による健康問題の解決が社会にとって重要であることは言うまでもない。

 政治の主な役割は利害対立が生じた際の利害調整だが、公衆衛生に関する複雑な政策的判断をなかなか下しにくい立場にある。タバコ問題のように、利害対立が拮抗して利害関係者が常に緊張関係にある問題ではなおさらだろう。

 そのためにも市民レベル民間レベルでタバコ問題に取り組み、ポリティカルパワーを強めて政策提言につなげていく必要があるが、対するタバコ産業との力の差が隔絶し過ぎている。

 たばこ規制枠組条約(WHO FCTC)は日本も加盟批准する国際条約だ。その第5条3項(Article5.3)では、締約国に対して「たばこ規制に関する公衆衛生政策の策定と実施にあたり、国内法に従い、たばこ産業の商業上及び他の既存の利益からそのような政策を擁護するために行動する」ことを求めている。

必要な民間の国際連携

 米国での市民や行政の反タバコ運動の進展により、21世紀に入るあたりからタバコ産業は大きな戦略転換を強いられている。だが、タバコ産業には莫大な資金力や強力なロビーイングと政治力があり、寡占化と独占化、多国籍化が急速に進み、先進諸国での喫煙率が減衰する中もますます強大化する存在だ。

 依然として拮抗し続けているタバコ問題は、タバコ規制側が力を弱めれば途端にタバコ産業側が息を吹き返えし、ポジションを押し戻してくるだろう。

 ところで、禁煙にはまだはっきりと確立された治療法はない。ニコチン依存症は症状の度合いが患者個々人によって異なり、薬物依存の側面があると同時に心理的習慣的社会的な依存状態になっている場合も多いからだ。

 グローバル化が進むタバコ産業に立ち向かうために、禁煙サポートや治療などに携わる医療関係者の存在と反タバコ運動の国際連携が欠かせない。

 前述したグローバルブリッジは、科学的なエビデンスを基礎にタバコの健康への害を明らかにし、世界の医療関係者が協力してネットワークを組み、タバコ規制の政策提言をすることを目的に設立された。その主な目的は、禁煙サポートや治療などに携わる専門家やスタッフを世界中で質量ともに高め、彼らの発信力により政治や行政へタバコ問題の政策提言(アドボカシー、advocacy)をしていくことだ。

 中低所得国も含め、禁煙サポートと治療は世界中で行われているが、それぞれの知見を持ちよってより効果的な禁煙プログラムの開発をすることが重要になってくる。グローバルブリッジは、まさにその架け橋として活動を展開している組織というわけだ。

 日本にもこれまで日本禁煙学会や日本禁煙科学会、日本禁煙推進医師歯科医師連盟といったタバコ問題に取り組む医療関係者や研究者の組織があり、タバコ問題首都圏協議会や無煙社会をめざす会、各地のこどもをタバコから守る会などの草の根民間団体もあった。だが、国際的なネットワークへの参加や国際連携といった活動はかなり手薄いといわざるを得ない。

 日本でがん対策に取り組んできた1958年設立の日本対がん協会は、がんの大きな原因であるタバコ問題に関しても活動を続け、タバコのない社会の実現を目指してきた組織だ。タバコ原因のがんは約30%といわれ、がんの予防に禁煙は欠かせない。全国46カ所に設けた支部により日本対がん協会も、がんの早期発見早期治療に携わってきたという。

タバコ規制を推し進める「タバコ・バスターズ」に

 2020年の東京オリパラを前に、日本の受動喫煙防止対策は不十分のまま法整備が進みそうだ。喫煙率も2010年のタバコ値上げ以降、下げ止まっている。新たにタバコ産業が市場に投入した加熱式タバコに対する公衆衛生の研究者の見解や行政の政策的姿勢も定まらない。日本におけるタバコ問題は、今まさに拮抗状態でタバコ規制の推進についても閉塞感が漂っている。

 グローバルブリッジでは、これまで公募型の研究助成として北米で54プロジェクト、ヨーロッパや中東、アフリカ、ラテンアメリカなど30プロジェクトが選定され、数千人規模の禁煙サポート治療のエクスパートが養成されている。日本対がん協会が率先してグローバルブリッジというタバコ対策の国際ネットワークに参加することは、世界中の医療関係者や研究者らと連携して現状の拮抗状態の打破のきっかけになるかもしれない。

 今回のグローバルブリッジと日本対がん協会との共同パートナーシップ締結に際し、2018年4月15日、都内で日本プロジェクト始動のキックオフ・ミーティングが開かれた。日本で実施する禁煙サポートや治療に関するプロジェクトを世界中から公募し、16プロジェクト(2年間で合計2億円)が選定され、これで世界で合計100プロジェクトとなる。

キックオフ・ミーティングでは主催者から「タバコ・バスターズ」と呼ばれた各16グループが、それぞれプロジェクト内容を発表した。医師の禁煙外来向けのeラーニングプログラムの開発、地域の薬剤師による禁煙サポート活動、全国の看護師から禁煙サポートの専門家育成、肺がん・結核・高血圧・歯周病などの患者向け禁煙指導など多種多彩な実践的研究内容となっている。また、グローバルブリッジに参加する医療関係者や研究者らはタバコ産業からの利益を受けてはならず、参加にあたって利益相反は厳しくチェックされている。写真:撮影筆者

 日本対がん協会参事でグローバルブリッジ・ジャパンの望月友美子ディレクターは「世界の反タバコ運動は主に対がん組織や人権擁護団体から始まったものが多い。今回のグローバルブリッジと日本対がん協会の共同パートナーシップ締結により、医療関係者や研究者、患者団体が主体となって国境を越えて(アウトオブボーダー)タバコ・ゼロミッションを掲げて人々の命を守る原動力になることができるはず」と力を込めた。

 キックオフ・ミーティングで来日したケイティ・ケンパー(Katie Kemper)グローバルブリッジ・エグゼクティブ・ディレクターは「日本はタバコ対策に関して脆弱である一方、路上喫煙が厳しく禁止されるなどユニークな国だ。政府とタバコ産業のつながりの強さは危惧すべき状態ともいえ、日本におけるグローバルブリッジの活動推進に期待している」と語った。また、日本対がん協会の岡本宏之事務局長は「このプロジェクトに興味のある医療関係者や研究者がいたら、ぜひ日本対がん協会まで連絡してほしい」という。

ケイティ・ケンパー(Katie Kemper)グローバルブリッジ・エグゼクティブ・ディレクターは、現在の日本政府のタバコ政策について「name and shame(名指しして批難すべき)」と強い口調でいう。国際的にみると、日本のタバコ対策の遅れはかなりのものだ。写真:撮影筆者

 グローバルブリッジの実践プロジェクトの領域は、ニコチン置換薬やカウンセリングなどを含むニコチン依存症の治療、医療関係者向けの教育プログラム開発、喫煙者への禁煙サポートなど多岐にわたる。タバコ・ゼロ・ミッションを掲げる日本のグローバルブリッジ・プロジェクトが、2年後にどのような実践的な成果を上げるか注目していきたい。

※2018/04/17:8:53:「日本対がん協会参事でグローバルブリッジ・ジャパンの望月友美子エグゼクティブ・ディレクターは「世界の反タバコ運動は主にがんの患者組織によるものが多い。今回のグローバルブリッジと日本対がん協会の共同パートナーシップ締結により、医療関係者や研究者、患者団体が中心になってタバコ対策を進めていく原動力になることができるはず」と力を込めた。」と「メイヨー・クリニックのスタッフでもある」のパラグラフを削除。「その主な目的は、禁煙サポートや治療などに携わる専門家やスタッフを世界中で質量ともに高め、彼らの発信力により政治や行政へタバコ問題の政策提言(アドボカシー、advocacy)をしていくことだ。」のパラグラフを追加した。

※2018/04/17:14:45:「日本対がん協会参事でグローバルブリッジ・ジャパンの望月友美子ディレクターは「世界の反タバコ運動は主に対がん組織や人権擁護団体から始まったものが多い。今回のグローバルブリッジと日本対がん協会の共同パートナーシップ締結により、医療関係者や研究者、患者団体が主体となって国境を越えて(アウトオブボーダー)タバコゼロミッションを掲げて人々の命を守る原動力になることができるはず」と力を込めた。」のパラグラフを追加した。