藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自己否定のチカラ。

IoTやAIの記事を見ない日はない昨今。
東の横綱がITなら西の横綱は「社会保障費」だろう。
社会保障が「産業」と呼ばれることにも違和感があるが、ともかく当分野はなんと40兆円・600万従事者の規模になっているという。

国民皆保険は世界に誇れる素晴らしい制度ですが、作られてから半世紀が経過し、これまで制度を維持するために払われた努力が忘れ去られているようです。

健保・介護保険を勉強すればするほど。
確かに官僚が作り上げたすごい制度だと思う。
さらに「皆保険」を医療だけでなく介護にも広げた。

けれど「被保険者」が増えすぎて制度がひび割れている今、制度のリセットが必要なのに違いない。

税制も、中央政府の役割も、社会保障も、みんな同時に悲鳴を上げているように聞こえるのだ。
何よりも「既得権益」を持つ人たちの抵抗は凄まじい。
「これまで作り上げた制度そのものに関わる人が、"次の制度"に対して最大の抵抗勢力になっている」ということだと思う。

無血革命を起こす、くらいの覚悟で臨まないと「既存の壁」はなかなか崩れず、事態は悪化していくばかりだろう。
またそういう「自己否定」ができないと、人間だってどんどん硬直して老いが進む。
若さとか成長力っていうのはそういう「自己否定する力」のことなのではないだろうか。

医療費適正化政策を考える(6)伸び抑制へ根本的考察不可欠 慶応義塾大学教授 印南一路
 日本の国民医療費はそのまま市場規模を示します。つまり医療は40兆円を超える産業なのです。そのうち製薬産業、医療機器・材料産業は10兆円超の規模があり、自動車産業と納税額を競っています。これに介護市場の10兆円が加わります。医師・看護師・介護士をはじめとする関係者は600万人に上ります。これらの関係者は基本的には医療費の増加を歓迎し、既得権益を守るために業界団体を通じて陳情します。

 医療政策は政府の審議会などで議論されますが、専門的で一般国民には理解し難い部分があります。民主主義国家では基本的に合意形成が重視されるので、政策が採用されるまで長い時間がかかります。例えば医師の地域・診療科偏在問題は指摘されてから40年以上も解決されていません。強力な政策が採用されても激変緩和の名の下に経過措置が設けられ、中にはそのまま長期間継続しているものも少なくありません。

 国民はどうでしょうか。健康・医療は国民の最大の関心事です。でも、自分が払う自己負担額や保険料には関心はあっても、制度全体の持続性に関心を持つ人は多くありません。国民皆保険は世界に誇れる素晴らしい制度ですが、作られてから半世紀が経過し、これまで制度を維持するために払われた努力が忘れ去られているようです。

 老人医療費の無料化で過剰に医療費が増え、その修正に10年近い年月を要したのに、今度は未就学児・就学児の医療費無料化措置が拡大しています。3.8兆円に及ぶ生活保護費の半分は、やはり自己負担がない医療扶助です。経済的に厳しい人に対する医療費無料化はとても優しい政策に見えます。しかし、無料化は医療費の無駄使いを助長します。社会全体のコストを無視し、財源の手当てを考えない政策は無責任です。

 こうした状況が医療費問題の解決を難しくします。しかも、医療費の分析から得られる抑制策はどれも重要ですが、決定的な対策とまでは言えないようです。診療報酬の単価を一律に切り下げるような極端な措置に訴えずに、医療費の伸びを抑えていくにはどうしたら良いのか。もっと根本から考える必要があります。