藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ポビュリズムな私たち

*[政治]原因は我にあり。
なんで幼稚な政策と圧力団体を代表するような政党がずっと与党で居座るのか。
一体支持しているのは誰か。
そんな実に不思議な感覚を覚えることは多い。
でもそれは自分達だったようだ。
まともな報道機関が視聴者数を4倍に増やしたとしても、ポピュリズムの隆盛は抑えられなかっただろう。
西側の民主主義国が抱える問題は、国民が事実と虚構を混同することではない。
事実を知らされても、非常に客観的で説得力のある議論を聞いても、なお考え方を変えない有権者が非常に多くいることだ。
まあ自分達は普段から「自分にとって」という「自己エゴ」から逃れられずに生きているから。
社会人の自分、
親の自分、
業界にいる自分、
税金を払う自分、
買い物をする自分、
老後の自分、
実に様々な「自分の見た目」に直面している。
 
介護保険増税は困るが、教育の無償化には反対だ』
そんな身勝手な話も「いくつもの自分の立場」があれば理解できる。
我々が偽情報にとらわれるのは、眼前のより厳しい現実から目を背けるためかもしれない。
我われに一番必要なのは「自分の心の偏り」を正直に見つめることだろう。
いつまでもポピュリズム、と言われていては情けないではないか。
 
大衆迎合 温床は「私たち」
2019年3月10日 17:00
ラジオ局というより航空会社のような名前を付けたのに巡航高度に届かなかった。恒常的な資金難も手伝い、看板司会者の大半が辞めるころには、米ラジオ局エアアメリカが短命に終わろうとしているのは明らかだった。15年前の3月に開局したこのリベラル系ラジオ局は閉局までの6年間、保守系ラジオ局に挑み続けた。
環境が違えばうまくいっただろうか。共和党ブッシュ政権時代、民主党が活路を見いだせるメディアを作ろうと開局されたのだが、世論はそう簡単に変わらないことは考慮されなかったようだ。
トランプ大統領の元側近コーエン被告の議会証言で、共和党議員らは疑惑自体についてはほとんどコメントしなかった=AP
筆者は良識ある人々が偽情報と闘う姿にエアアメリカを思い出す。それは重要なことではあるが、政治におけるメディアの役割を過大視してしまうきらいもある。たとえ偽情報サイトや、外国政府が背後でやらせている悪意ある自動投稿が規制で一掃され、まともな報道機関が視聴者数を4倍に増やしたとしても、ポピュリズムの隆盛は抑えられなかっただろう。
西側の民主主義国が抱える問題は、国民が事実と虚構を混同することではない。事実を知らされても、非常に客観的で説得力のある議論を聞いても、なお考え方を変えない有権者が非常に多くいることだ。ニュースの配信方法を技術的に見直せばポピュリズムへの支持を抑制できるという考え方は、あまりに楽観的すぎる。

デルフォイの神託であっても信じない

トランプ米大統領の元側近マイケル・コーエン被告が2月末、議会公聴会で証言した。トランプ氏の不倫相手への口止め料の支払いや、民主党の内部メールの内部告発サイトからの流出をトランプ氏が事前に把握していたことなどについて、疑惑が一段と深まった。出席していた共和党議員らは証言の信ぴょう性を問題視するだけで、疑惑に関してはほとんどコメントしなかった。近く出される見通しのモラー特別検察官による捜査報告書に対しても、彼らがどう反応するかは想像がつく。
すなわち「大統領、我々はいかなる場合でも支持します」ということだ。固定観念のある人は新たな情報に触れたからといって、たとえそれが真実でもさほど考えを変えない。だからこそ、トランプ氏の岩盤支持層は強力なのだ。この現象は共和党に限ったことでも米国特有のものでもない。欧州連合EU)からの離脱が決まって3年近くたつ英国でも、離脱の代償の大きさが明らかになっているのに、離脱の是非に関する世論はほとんど変わっていない。
穏健派はポピュリズムがもっともらしい偽情報から生まれるものであり、国民は事実を知れば容易に考え直すと思っている。これは一種の気休めだ。ちょうどエアアメリカが右派系ラジオ番組は過激な保守派の論調を利用こそすれ、作り出しているわけではないことに気付かなかったように、メディアの力を過大評価する人が多い。
情報発信の方法をいくら変えても人間の弱点は修正できない。古代ギリシャデルフォイの神殿に掲げられた神託でも、自身の見方と違えば信じないような有権者もいる。我々が偽情報にとらわれるのは、眼前のより厳しい現実から目を背けるためかもしれない。時として有権者は、極端な思想や常軌を逸した政治家だと十分わかっていても、嫌悪感を抱かなくなることもある。ポピュリズムの台頭を招いているのは情報ではない。私たち自身なのだ。
By Janan Ganesh
(c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
本コンテンツの無断転載、配信、共有利用を禁止します。