*[次の世代に]政治の本分
日経FTより。
バイデンかサンダースか、あるいは若手の彗星候補か。
まるでスポーツチームの勝ち負けのように米国の行方を世界中が見ている。
さすが世界トップの国、と思うがそれにしても政治の世界の実に「あからさまな構造」は見ていてつくづく難しいものだ。
政治家の候補者は「広く国民に話す」わけだが、それは均一ではない。
要するに候補者は「特定の業界」「特定の思想」「(弱者や移民や人種など)特定の立場にいる人」「特定の業界・業種の人」「特定の地域の人」「特定の年代の人」などに個別に語りかけるわけだ。
当然「ボリュームゾーン」は票田ということになる。
自分がこんな風にあからさまに感じたのは、今のトランプ氏の登場がきっかけだ。
世界中のあらゆるメディアが「なぜトランプが勝ったのか」「民主党の負けたわけ」「どうなる?これからのトランプ政権」などと徹底的に分析した。
そりゃそうだ。
ほっとんどのメディアが「大外し」したからみんな理由の分析(というか後付けの解説)に必死なままである。
アメリカは合衆国だから、それぞれの州でその「いろんな立場や思想や業界の人」に投票してもらうべく演説が必要になる。
記事では「これから二十代が最大の有権者グループになる」と指摘しているが「そこ」へ向けての語りかけがアピールの中心になるわけだ。
つまり、「他集団からの共感を得つつも忌避されず」しかも「最大のボリュームゾーンにいかに支持されるか」ということを競うゲームのように見える。
それがつまり政治なのだろうか。
(つづく)
バイデン氏、若者の支持獲得に苦戦
2019年5月28日 7:00
2020年の米大統領選に出馬表明したバイデン前副大統領が5月中旬、ニューハンプシャー州南部の小都市ナシュアで演説を終えると、1人の若い女性が鋭い質問をした。同州での遊説はバイデン氏が選挙運動を開始してから初めてだ。彼女はバイデン氏が上院議員時代に強力に支持した包括犯罪防止法の成立でアフリカ系米国人社会が傷ついたが、彼らをどう救済するつもりなのか、と尋ねた。
バイデン氏の選挙集会には若い有権者が少ないとの声もある=ロイター
「それは小論文の課題になるような良い質問だね」とバイデン氏は質問したキャサリン・エムリー氏に返した。「犯罪防止法のおかげで(アフリカ系米国人が)大量に収監されたという見方があるが、法律が原因で大量の収監者が出たということはない」。23歳のエムリー氏は、この答えに若者を見下す「上から目線」を感じたという。
1994年に成立したこの法律は、署名した当時のクリントン大統領でさえ大量の収監者を出す要因になったことを後に認めている。バイデン氏の答えは守りを意識しただけで具体的な政策がほとんどない「目くらましだ」とエムリー氏はこきおろした。
「私はこれからどういう政策をとるのか知りたかっただけなのに、彼は答えなかった」。彼女は個人宅で開かれたバイデン氏の集会に男兄弟のロデリックと出席したのだが、若い有権者は数えるほどだった。
アイオワ州ではサンダース氏が優勢
犯罪防止法の問題は民主党の大統領候補指名レースで一つの争点に浮上した。トランプ大統領の政策に対する懸念から大きな論点になっている人種的不平等の問題に関連するからだ。若い有権者が関心をもつテーマでもあるが、世論調査では76歳のバイデン氏は民主党のこの層の有権者を十分取り込めていない。
米政治専門サイトのリアル・クリア・ポリティクスがまとめた最近のいくつかの世論調査の平均によると、バイデン氏の支持率は約35%と、民主党の指名争いでは紛れもないトップにつけている。急進左派バーニー・サンダース氏は2位で約18%だ。とはいえ年齢別の支持率をみると、18歳から49歳の間の有権者ではバイデン氏のリードはわずかであり、18歳から35歳の有権者では差はさらに縮まる。
米広報コンサルティングのファイヤーハウス・ストラテジーズと情報分析会社オプティマスの共同世論調査では、20年に全米最初の予備選が行われるアイオワ州で、50歳未満の有権者のうちサンダース支持者は22%だったのに対し、バイデン支持者は17%だった。アイオワ州に続いて予備選が行われるニューハンプシャー州ではバイデン氏が25%と優位に立ったものの、その差はわずか3ポイントだった。
ナシュアの集会に参加した68歳のマイケル・テレシュコ氏は、若い有権者は他の候補にひきつけられているようだと話した。「私の子供たちはそれほどバイデン氏を支持したいとは思っていないだろう」
ナシュアの近隣2都市で開かれた2つの集会でも、ほとんどの出席者は中年またはそれ以上の年齢層だった。支持者で満員になったハンプトンの「コミュニティ・オーブン」レストランにいた57歳のジェフ・ブラウン氏は、若い有権者はもっと急進的な候補を望んでいると話した。「ジョーはどちらかというと中道派だが、若い人たちは中道でもかなり左寄りだ」
存在感増すミレニアルと下の世代
マンチェスター・コミュニティー・カレッジでの集会に参加した60歳のパトリシア・ドービン氏は、集会が夕方に開かれたにもかかわらず若い人が少ないのに驚いた。彼女は「若い人たちはもっと進歩的な考え方をするからなのかも」とみていた。
だが、バイデン陣営で世論調査を担当するジョン・アンザローン氏はバイデン氏に問題があるという見方を気にしていない。米クイニピアック大学の最近の調査では50歳未満の民主党員のうち73%がバイデン氏に好感を持ち、これはサンダース氏に次いで2番目に高い数字だと言う。バイデン氏のペンシルベニア州フィラデルフィアでの演説会には多くの若い人が訪れたとも述べた。
「確かにサンダース氏が調査ではリードしているが、バイデン氏が若者とも十分、渡り合えることは驚きだ。渡り合えるだけでなく、若者にとても好かれている」とアンザローン氏。学生を対象にしたある調査ではバイデン氏が支持率でトップになったという。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、Z世代やミレニアル世代と呼ばれる1980年以降に生まれた米国人は2020年には全有権者の37%を占め、16年の31%から上昇すると見込みだ。一方、ベビーブーム世代やその上の世代の比率は44%から37%に低下する。Z世代やミレニアル世代は上の世代より民主党を支持する比率が高いため、民主党の予備選ではこの比率の変化が数字以上に影響するとみられる。
とはいえ、たとえ民主党の支持基盤が若返っても、実際に投票所に出向くのは年配世代の方が多いと強調する専門家もいる。ベテランの政治アナリスト、チャーリー・クック氏は、16年の大統領選で民主党に投票した有権者の60%が45歳以上だったが、20年の選挙でもほぼ同じ結果になるだろうとみる。
活発に発言し始めた若い世代
「バイデン陣営はきっと今の米国を映し出すような政治集会にしたいと思っているだろうが、彼はすでに断トツで優位な位置にいるというのが実態だ」とクック氏は述べた。
もっとも、環境問題や人種的・社会的不平等などの多くの問題に触発されて若い有権者は以前より活発に発言するようになっているという見方もある。ニューハンプシャー州で民主党の青年組織を束ねるルーカス・メイヤー氏は、16年の大統領選では同州の若い有権者の存在感が他のどの州よりも大きかったという。
「選挙運動をするたびに、20年には私たちの世代が有権者として最大のグループになることを感じる。多くの候補者が若い人の声に真剣に耳を傾けようとしているのには勇気づけられる」とメイヤー氏は語った。
若者を動員してクリーンな環境政策を推し進めようとしている政治活動団体「ネクストジェン・アメリカ」で若年世代担当のベン・ウェッセル氏は、ニューハンプシャー州の若い有権者は「保守的になりがちな年配者」より大きな影響力をもつと断言した。
12年にバラク・オバマ氏を勝たせるためにニューハンプシャー州の若者の票のとりまとめに奔走したウェッセル氏は、バイデン陣営も若い有権者を取り込むことに全力を尽くすべきだと理解しているという。バイデン氏がエムリー氏のような若い有権者と今後どう向き合ってゆくかが極めて重要になると述べた。
「バイデン氏はこれから全米中で(エムリー氏のような)若い有権者と対峙することになる。若者への対応が変わるかどうか、すぐにわかるだろう」とウェッセル氏は言う。若い有権者は「自分たちと真剣に関わろうとする候補なのか、笑ってごまかすだけの候補なのかを厳しく区別するだろう」
By Demetri Sevastopulo
(2019年5月26日 付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)
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