藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

学問と商売。

*[次の世代に]間をつなぐもの。
日経より。
産学連携(特にベンチャーと)いうけれど、その溝を埋めるにはお互いを尊重し、理解している「エージェント」が不可欠なのだと思う。
これは「産学」だけではなく、一般の企業でも同じだ。
例えば研究者にとって研究開発とは、新たな発見や発明を行いその成果を論文にできるものを意味する。
一方、企業にとっては、新たな発見・発明よりも一定の品質の製品を大量に製造できる技術の実現の方が重要であるが、このようなタイプ
の研究開発はかならずしも論文につながるものではない。

つまり「両者の利害」は一致していない。というか性質的にはま反対だと言えるだろう。

研究者は論文が完成して以降の開発推進には関心が薄く、逆に企業は新たな研究にテーマを広げていくことに抵抗を感じる。これが、大学発ベンチャーの研究開発戦略策定において衝突の原因となる。

 大事なのは、双方の優先事項が必ずしも一致しているとは限らないということを認識した上で、意見が対立しそうに感じた時には「企業の成長にとって何がベストなのか」といった原点に立ち返り、早めに基本方針を確認することだ。

 
と見る限り、両者の間には「耐えがたい隔たり」があるわけではないらしい。
むしろ「自分の分野に集中しすぎる」あまり、技術もマーケットも「互いを譲れない」と言ったところだろうか。
専門化し、プロ同士が関わるような世界でこそ「互いのコミュニケーション」を取る能力とか、エージェントが重要になるのだと思う。
せっかくのダイヤの原石同士が、互いにコミュニケーションできずにまとまれないのは実にもったいない。
 
これからはそうした「対話のエージェントサービス」が主流になってくるのではないだろうか。
 
大学研究者とベンチャー企業
当社は現時点では、京都大学の研究成果を活用しているベンチャー企業にだけ投資することができる。そのため、投資先には大学研究者(京大に在籍している研究者だけとは限らない)を創業者とするいわゆる大学発ベンチャーも少なからず存在する。

 
大和企業投資に20年以上在籍。京大では特任教授として医学分野での研究開発マネジメントの支援活動に従事。2016年6月から現職。京大産官学連携本部参与・医学研究科非常勤講師を兼務。
 
ベンチャー企業の成功条件としては、「競争優位性のある技術シーズやビジネスモデルを持つこと」「経営陣が優秀であること」などが必要とされている。大学発ベンチャーではこれらに加えて、「創業研究者との適切な関係が維持されていること」がキーファクターとなろう。大学発ベンチャーにおいて、筆者の経験では、創業研究者と経営者との関係が悪化して破綻した例は少なくない。
 
ある大学発ベンチャーA社の例では、創業研究者と大手企業出身経営者がコンビで創業。その後、経営者は、初めて外部から資金調達することを計画し、その内容を研究者に説明した。その計画は、研究者の保有株式の比率が50%を割り込む内容となっており、研究者は「私の持ち株比率が50%以下になるのは、私の会社ではなくなることだ」と猛反発。これを機に研究者と経営者の間がぎくしゃくするようになり、結局A社は清算に追い込まれた。
 
別の大学発ベンチャーであるB社の例では、研究開発戦略を巡って創業研究者と経営陣との意見が対立した。両者の関係は研究者がB社を公然と非難するまでに悪化し、最終的にはこの研究者はB社との関係を断ち、競合する可能性のある別のベンチャー企業を新たに立ち上げた。
 
大学発ベンチャーに関わったことのない人にはにわかに信じられない話かもしれないが、こうした事例は決して珍しくない。産業界の常識と大学(アカデミア)の常識の間には、それほど深くて広い溝がある。研究者がビジネス的な側面からは不合理と思える意思決定をする場合もある。
 
例えば研究者にとって研究開発とは、新たな発見や発明を行いその成果を論文にできるものを意味する。
 
一方、企業にとっては、新たな発見・発明よりも一定の品質の製品を大量に製造できる技術の実現の方が重要であるが、このようなタイプの研究開発はかならずしも論文につながるものではない。研究者は論文が完成して以降の開発推進には関心が薄く、逆に企業は新たな研究にテーマを広げていくことに抵抗を感じる。これが、大学発ベンチャーの研究開発戦略策定において衝突の原因となる。
 
では大学発ベンチャーの経営陣と研究者は、互いにどのように付き合うべきなのか。大事なのは、双方の優先事項が必ずしも一致しているとは限らないということを認識した上で、意見が対立しそうに感じた時には「企業の成長にとって何がベストなのか」といった原点に立ち返り、早めに基本方針を確認することだ。
 
基本的な方向性をすり合わせる努力をしても衝突するようであれば袂(たもと)を分かつことも必要かもしれないが、やるべき事をやらずに破綻する大学発ベンチャーが実に多い。経営陣と研究者のどちらが正しいかという問題ではない。互いに相手の考えや立場を理解しようとするコミュニケーションが大学発ベンチャーの成否を決めるのかもしれない。