藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

波は意外に早い。

インドでは想像をはるかに超えてデジタル化が進んでいるという。
それもお金の分野の話。

日本にいると「まだ現金は当面無くならない」という声が多いが、思いの外早めに全部が「デジタルマネー」になる日は近いような気がする。

日本ではタンス預金などが多く、「富裕層が資産把握を嫌うから実現しない」というけれど果たしてそうだろうか。
ギリギリまでの攻防はあるだろうが、最後に一般大衆が賛成して実現するだろうと予想する。

便利さと透明性の効果が、既存体制を打ち負かす。
そんな一種の革命が静かに起きるだろう。

脱税とか汚職とかインサイダーとかいうのは昔のギャングみたいに古臭い話になってしまうのに違いない。

ダイナミックインディア(十字路)

 英国から独立して70周年を迎えたインドを訪問し、独立記念日にモディ首相の演説を聴く機会があった。そこで再認識したのが同国が抱えるブラックマネー問題である。

 インド経済の約半分は、政府が資金の流れを把握できない現金ベースの活動とされ、その規模は1兆ドル(約110兆円)にも上る。

 昨年11月に米国でトランプ氏が新大統領に選ばれた当日、モディ首相は事前予告なしで高額紙幣の廃止を発表した。市中に流通する紙幣の9割弱を年末までに使えなくするという前代未聞の政策だ。

 古い紙幣は銀行に持ち込み、自分の口座に入金するか、新紙幣との交換を余儀なくされた。2兆ルピー(約3.4兆円)の現金が回収され、銀行口座数も急増したという。

 インド政府はデジタル社会の構築にもまい進する。現金決済を極力廃止し、口座を通じた電子決済で資金の移動を透明化する。それにより横行する脱税を撲滅すると同時に、汚職を徹底的に排除する狙いがある。現金決済が主流のインドでは、役人による賄賂の要求が常態化し、貧困層に支給される補助金も、役人によるピンハネの温床になってきた。

 切り札とするのが、前政権時に導入されたアーダールと呼ばれる生体認証によるマイナンバー制度だ。補助金申請や教育、医療サービスを受給するにはこの登録が必要で、モディ政権になって全人口の9割にまで普及した。デジタル技術を使い、国民の経済活動を全て把握しようとしている。銀行口座の利用が普及すれば賄賂もなくなる。

 キャッシュレス化により地下経済を透明にし、脱税と汚職を排除する。増えた財源を教育や衛生施設など社会基盤の整備に充てる狙いだ。インドは平均年齢27歳の「若い国」。スマホに抵抗がない世代が主導する経済のダイナミズムが、インドにはある。

住友商事グローバルリサーチ社長 高井裕之)