日本も欧米も「景気の底入れ宣言」が声高に宣言されている。
有体に言ってしまえば「悪くなる坂の勾配」が「ゆるくなり始めた」というような内容で、まだ坂を下っているのだし、少々加速度が弱くなったからといってもあまり良い話ではない。
「少しはまし」という程度だろう。
それにしても売上が前年比20%ダウン、とか前月比10%落ち、とかいってるが、10%ダウンを一年も繰り返せばどうなるか。
1月:100として
2月:90
3月:81
4月:73
5月:66
6月:59
7月:52
8月:48
9月:43
10月:37
11月:35
12月:31
翌1月:28
1年後には「当初の三割を切る」ことになる。
売上が七割ダウンしたお店。
悪化は、一年も続けば七割ダウン。
もはや「存在すること」すら困難なことなのだ。
下げ止まり、の先。
景気は底を打った、という。
(実はこれそのものも現在の株式相場の戻り方といい、各国の国債の金利や長期金利などを見ても相当あやしい。国債も、長期金利も上がる一方である。)
仮に底だとしても「果たして戻るのか」という話は誰もせぬ。
無理もない。
戻るアテなどまったくないからである。
債権の流動化や小口化で結局誤魔化され、被害を受けた個人投資家や機関投資家は、「投資とか消費そのもの」への懐疑心というか、嫌悪感を持ってしまった。
しかしながら、「利殖マインド」のある人というのはまたぞろ「その畑」に手を出すものではあるだろう。
だが、現在のように日米欧各国政府が協調して市場を支え、株価を作り、会計基準を変更し、ビッグ企業を救済し、資本を注入しまくる様子には、まだまだ安心感は持ち得ない。
大衆心理というのは、あざといものだ。
生活保護の申請数の「増加が緩やかになった」というのは全然「元へ戻る」ということを担保しない。
企業の倒産件数とか、工場の閉鎖とか倒産とか。
日本で5%、米国で10%を超える失業率が「縮小する日」は来るのかどうか。
ひょっとしたら、当面はそんな日は来ないのではないか。
そんな心理が簡単に一般人を消費には走らせないのだ。
もともと不安心理、といのは人間の警戒心を刺激し、必要以上にエスカレートした行動に一般大衆を走らせる。
「もう安心だ、どんどんカネを投資していいぞ」という為政者や金融界の声を、「まあもうちょっと様子を見させてくださいや」という一般大衆がいるように思う。
ともかく、下げ止まりは決してそれほどの好材料ではない。
「回復の鈍さ」こそがこれからの時代の価値観や、「我われはどこに投資するべきか」ということを判断させてゆく材料になるのだろう。
じっくりじっくり。
これからが「次の価値観の形成期」だろう。
過去の方程式に「当てはめ計算」しても、もう正解はでないのだ。
実感なき「底打ち宣言」 雇用・賃金悪化 凍りつく消費 月例経済報告
政府が6月の月例経済報告から「悪化」の表現を削除し、事実上の“景気底打ち宣言”に踏み切った。
前日には日銀も景気の現状判断について「下げ止まりつつある」との認識を示したばかりで、土砂降りだった日本経済に薄日が差してきた。だが、企業の業績不振を背景に完全失業率は5%の大台に乗り、夏のボーナスも軒並み減額。雇用・賃金情勢の悪化から個人消費の持ち直しも力強さに欠け、庶民の景気実感は「底打ち」にはほど遠い。
「夏商戦は小売業全体で厳しいと覚悟している」
大手百貨店関係者が弱音を漏らす背景には、雇用や所得の急激な悪化がある。
「派遣切り」に端を発した雇用調整は今や正社員に及び、4月の完全失業率は5年半ぶりに5%台を記録した。
所得環境も急激に悪化しており、大手企業の今夏のボーナスは前年比で平均19.4%減と過去最大の下落率を記録。
中小企業ではボーナス自体を支給できないケースも増えている。
「悪化に歯止めがかかった実感はない」。大手スーパー関係者からもこんな声が聞こえてくる。
4月の全国スーパー売上高は前年同月比3.7%減となり、5カ月連続で前年実績を下回った。
食料品は3カ月、衣料品にいたっては40カ月連続の前年割れだ。大手百貨店5社の5月の売上高(速報値)も10%台の減少となる見通しだ。今月初め、与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は景気について「(1〜3月が)底打ちの時期だったと思う」と述べた。
財界からは「経営者として与謝野大臣の言っていることは実感に近い」(日本経団連の御手洗冨士夫会長)との見方を支持する声が相次ぎ、景気回復への期待感は一気に高まった。
だが、消費の現場は凍てついたままだ。
定額給付金など政府の景気対策もあり、6月の月例報告では個人消費が「一部に下げ止まりの兆し」と上方修正された。
その一方で政府は「今後の個人消費は所得との綱引き」(内閣府幹部)と所得環境の悪化による消費回復の腰折れを懸念する。
景気対策の効果も「今年後半から来年始めころに息切れする」(野村証券金融経済研究所)との見方が市場では支配的だ。
政府には苦い思い出がある。平成5年6月の月例報告をめぐり、船田元・経済企画庁長官(当時)が「景気はおおむね底入れした」と表明したものの、その後の急激な円高や冷夏で撤回に追い込まれた「幻の底入れ宣言」だ。
雇用・賃金情勢の悪化が続き、消費が一段と落ち込めば、当時の“二の舞”になりかねない。