藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

騙しの構造。

和牛商法とか、パチンコ詐欺とか。
悪知恵はいつもアッと思わせる「心の隙間」を突いてくる。


ずい分前、海外の投資がらみの話に巻き込まれたことを思い出す。
自分も軽く被害に遭ったが、その時の登場人物たるや、現役の大学教授や、弁護士や、上場企業の役員や、有名NPOの代表とか、フィクサーの末裔とか。
同様の顔ぶれが、同じく海外でも揃う。
東南アジアの場合はさらにエスカレートして、現地の警察やら、現役の政治家やらが前面に立ってくるから話はややこしい。(さすがに日本では政治家は出てきても「紹介者」であって当事者ではなかった。)

次々と変わる論点。

詐欺の話を思い出したのは、実は日常のちょっとしたこと。
一年ほども前、ある投資案件を売り込みに来た仕事仲間。
その後とんと顔を見せなかったが、つい先日ふらりと現れ、近況を話しだす。
どうも聞くと、また中東の国の投資話に一枚噛んでいるらしい。
おそらくもうこの十年くらいは「そんな話」をずっとしている。


単純に考えれば、おかしい。
油田だの、鉱脈があるの、レアメタルが精錬できる、とか漁業権を売りに出す、とか。
国の原発建設計画がある、とかトルコとイスラエルの問題でパイプラインが迂回する、とか。


また時事ネタに反応して、誰かが巧妙に話題づくりをしているとしか思えないほど色々と出てくる。
しまいには、旧日本軍の埋蔵金、とか現地政権の隠しガネがある、などとミステリーにでもなりそうなほどである。


彼と話していて思う。
彼も自分自身で一つだけ見落としていること。
それは「論点」が「一つも収束していない」ことなのである。
「彼が用意すると言っていた紹介状は?」とか
「まず最初に設立するはずの会社の資本金は?」とか
「大手ガス会社による採掘の契約のその後は?」とか
一点々々の質問には、すべて「あれこれの事情で止まっている」とか「政権が変わったためにゼロベースになった」「リーマンショックの回復を様子見している」などと曖昧な回答が返ってくる。


そう。
彼自身も、どこかおかしい、と思いつつ「決定的な反応」を得られないために泥沼から脱出する機会を失っているのだ、と気付く。
また気付いたとて辛い。
これまでの長い時間を失うことになるのだから。

強欲が目をくらます

ある詐欺師氏曰く、「しつけの良い人は騙されない」という。
少々世間知らずでも、「危うい話を未然に遠ざけるだけのもの」を持っていると。
逆に頭がいかに良くとも、「強欲」な奴は騙しやすいそうである。
どんなにおかしい話でも、欲が目を眩ませ、「独自の論理」まで編み出して、普段冷静な状態ではありえない危険な判断を、勇気をもって下してしまうのだと。

頭の回転が速いほど、地道な努力よりも「飛び道具」てきな手法に目が行ってしまう、というのは何とも皮肉である。
自らに力があるゆえ、「急がば回れ」という教訓を知っていても我慢ができない。
勇み足で走っては滑り、を繰り返すうちにあっという間に時間は過ぎてゆく。

劣勢を巻き返すための、一攫千金狙い

これこそが、詐欺に嵌められたり、いつまで経っても結果が出ない元凶なのだろう。
劣勢を巻き返すのも一歩づつでしかないのである。