藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

専守防衛。

保険コンサルタント、後田亨氏のコラムより。
"自己責任"は少し前のバブル以降の流行語だが、保険にまつわるこうした話を聞くにつけ、「表面には必ずしも出てこない裏の意図」というものがあり、そうしたことまでを斟酌して選択する力が自分にあるかどうか、で人生ずい分と損もするものなのだなぁ、とため息をつく思いである。

特に、ここ二百年程の間に台頭してきたいわゆる「金融商品」については。
いわゆる"投資家の発明"の工夫に次ぐ工夫で、次々と繰り出される「金融商品」。
これに対し、"政治サイド"でも何とか「行き過ぎた行為」を慎むようにルール作りには腐心してきた。
けれど、特にここ数十年をみれば、いわゆる「規制サイド」の惨敗である。
その結果、"バブル経済"なる用語すら日常語にしてしまい、もはや経済界は「その存在はある程度認めざるを得ない」というスタンスになってしまった。

そして、金融商品はさまざまにその姿を変え、保険とか、国債とか、投資信託とか、債権の流動化、とか実に色々なところに入り込んでしまった。
ある有名なエコノミストにして、「もはやどこまで浸透してしまったか見極められない」というほどに拡散してしまったのである。
その意味では、原因不明のウィルスや病原菌などと同様の性質を有しているようである。

そして、そんな危険な病もぞろぞろと存在する世の中で暮らすのなら、「自分の経済活動のルール」などは、国の規制を待って、それが至らぬ場合に文句を言うのではなく、「自らの調査と決断」の上で対処せざるを得ない。
「政府の規制がなかったから、私は損をした」という事件の被害の回復を"政府"に求めても、あまりにそれは遠く、難しいのである。
話題の「一時払い終身保険」についても、「胴元側」へいくら質問してもせん無いこと。
いかに「胴元」の都合のよい理屈でできているかは、その仕組みを聞けば明らかである。

でも、こんな話は自分たちの日常に「平気で」いくらでも転がっている。

石に躓いた後の被害を回復するのではなく、躓かぬ工夫をするべし。

わが身を守るための努力は、やはり自分でやるしかないのである。

ここが理不尽、人気の「一時払い終身保険
保険コンサルタント 後田亨
<nikkei.comより>
「手数料ビジネスの鬼?」。先日、30代の方から大手生保の「一時払い終身保険」の提案書を見せていただきながら、思いました。

「1000万円ほどの余剰資金を運用したい」と銀行の窓口で相談したところ、死亡保険金が1700万円のプランを提示されたそうです。

保険料を一括払いにして、一生涯の死亡保障が持てる「終身保険」を買う。それが「一時払い終身保険」です。銀行のパンフレットには、

・ご家族の生活への備え

・相続への備え

・老後資金への備え

の3つの機能が活用できるとあります。確かにその通りですが、この方の場合は「資産運用」が目的です。

したがって、将来、解約した際に払い戻される「解約返戻金」の額を最重要視することになります。ところが、その解約返戻金の推移が目を疑ってしまうものでした。契約後7年もの間、大きく元本割れしていたのです。当初の4年間は10%以上割り込んでいます。私だったら、これらの数字を把握した時点で「視野に入れなくていい商品」と決めてしまいます。

なぜ、こんな商品が資産運用に適していると案内されているのでしょうか。私には、保険会社から銀行に支払われる販売手数料が魅力的なのだろう、としか思えません。


セールストークは、「いまどき、普通預金に預けっぱなしでは、お金は殖えません。この保険では、契約後数年間は元本割れの状態が続くものの、10年後には107%までお金が殖え、その後も着実に殖え続けます」といった内容だったそうです。

私は、元本割れが長期にわたる理由を尋ねるため、銀行に行ってみました。窓口の女性によると「保険ですから、死亡保障に回るお金もかかります」「そのほかにも、証券発行などにかかる経費や手数料なども発生します」ということでした。

「死亡保障に要するお金はいくらですか? 証券の発行には10万も100万もかからないですよね? 手数料は何%ですか?」と聞いてみましたが、「詳細は開示されていないので、こちらではわかりかねます」と言われました。

予想通りとはいえ、運用面においてマイナスの要素である諸経費が一切わからないのは、不可解なことです。しかし、コストを確認するまでもありません。少し視点を変えるだけで、この商品の理不尽さがわかります。「銀行で自分のお金を運用してもらう」のではなく、お客様が「銀行にお金を貸して運用の機会を与えている」と考えてみるのです。

すると、7年間の元本割れは、お客様から1000万円もの大金を借りている側が、「7年以内に資金を引き揚げる場合、『罰金』を取ります。1年だと160万円、3年なら130万円、5年でも80万円、7年で30万円です」と言っていることになります。


そして罰金が発生する理由は、「諸経費がかかるから」の一言で済ませようとしているのです。「わざわざ死亡保障の確保にも費用がかかる商品を選んだのは誰だ?」と思います。

「10年間で一括払いした保険料が107%に殖えるメリットを与えている」という反論も予想されますが、年平均利回りに換算すると、0.68%程度です。証券会社の運用部門の人に「10年で0.68%って、どう思いますか?」と尋ねたところ「低過ぎ。年俸制で勤務する場合はクビ」と言われた数字です。

死亡保険金を支払うための経費のほかに、銀行や保険会社が契約の初期段階で高い手数料を抜いてしまい、運用に回るお金が小さくなってしまうため、低レベルの成果にとどまっていると考えられます。

「一時払い終身保険」の売れ行きは順調だそうです。今回の例などに接すると、銀行や保険会社の取り分など「お客様の損に直結する部分」について、しかるべき説明がなされていないことが“勝因”に思えます。それは許されていいことなのでしょうか?


後田亨(うしろだ・とおる) 1959年生まれ。1995年に日本生命に転職。2005年より(株)メディカル保険サービス取締役。2007年に上梓した「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)で保険のカラクリを告白、業界に波紋を広げる。以後、主に執筆・セミナー講師・個人向け有料相談を手掛ける。近著に『がん保険を疑え!』(ダイヤモンド社)。このほか「“おすすめ”生命保険には入るな!」(ダイヤモンド社)、「生命保険のウラ側」(朝日新書)。メディア掲載多数。
公式サイトhttp://www.seihosoudan.com/