藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

進むほどに出会う困難。

がんの遺伝的原因の予防のために手術したというアンジーが、米紙に寄稿。
まだ術後間もないうちに、こうした話題をオープンにし、ピシっと胸を張って発信する精悍さがいかにもアメリカらしい。

それにしても友人の医師の言葉を思い出す。

医療科学が進み、いかに病名や病原が増え、そしてそれらに対する治療法や薬剤や手術法、またそれらの「予防医療」が増えても、それでも医学は"前に向かって進んで"いるのだ。

ある時代をみれば、誤った治療法もあった。
また副作用が強すぎる薬剤や負担が大きい手術もある。

まさに科学が進めば進むほど、病名も増え、自分たちはさらに多くの「病のようなもの」と戦うことになる。
けれど、これこそが人の叡智であり、科学の軌跡なのだろう。
百年単位、千年単位でみれば、確実に人の寿命は延び、過去数世紀に深刻だった多くの病気は克服されている。

でも、さらに寿命は延び、また貧困の問題はまだ解決はできず、今の医学もまったく「さらなる発展の途上」なのだろう。
今のところ、我われはついに「遺伝子をどう見るか」という局面に入りつつあるようで、遺伝子科学がついには「遺伝子診断をしただけで寿命が確定する」というところにまで行き着くか、またさらにその遺伝子に「手を加えるか」というところが一つの現代医療の終着点ではないだろうか。

恐らく今の科学の延長線上で「生命の創造」は困難かもしれないが、「今の自分たちの分析」は極まるような気がする。
今から数百年後には、自分たちは"自らの体のこと"については、そうとう詳らかに把握できているのではないだろうか。

また「精神の科学」については、その先の分野なのではないだろうか。

乳房にメス…アンジーの決断、ブラピの支え 米紙に寄稿
遺伝的に乳がんになりやすいため、予防として乳房を切除する――。米女優アンジェリーナ・ジョリーさん(37)の決断には、どんな思いがあったのか。「私の医学的選択」と題して14日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿した全文は次の通り。
    ◇
 私の母は、約10年間の闘病生活の末、56歳でがんで亡くなりました。初孫を抱くことはできたけれど、他の子たちは、彼女の愛情深さを知る機会がありませんでした。
 子どもたちとよく、病気が奪い去った「ママのママ」の話をします。ママにも同じことが起きるのかと聞かれ、「心配しないで」と答えています。
 でも本当は、私の「BRCA1」という遺伝子には変異があり、乳がん卵巣がんになるリスクが著しく高いのです。医者からは、個体差はあるものの、乳がんになる確率が87%、卵巣がんが50%と告げられました。
 遺伝子の変異による乳がんの発症はわずかです。でも、BRCA1の変異を持つ人は、平均して65%の確率で発症するリスクがあります。
 これが私の現実だと知り、リスクをできるだけ減らすためのことをしようと決めました。予防のため、両乳房を切除することにしたのです。胸から始めたのは、乳がんのリスクが卵巣がんより高く、手術がより難しいからです。
 4月27日、私は3カ月間に及んだ治療を終えました。その間、このことは公にならず、仕事を続けることができました。
 いま、この経験を公表するのは、他の女性たちにも役立つと思うからです。がんは今も、人々の心に恐怖心を募らせ、強い無力感を与える存在です。でも今日では、血液検査を受けることで、卵巣がん乳がんになる確率を知り、対策を取ることができます。
 最初の施術は、2月2日に始まりました。まず乳首の奥の乳管と、ここに余分な血液を呼びこむ血管を除去し、乳首を温存する手術をしました。術後に燃えるような痛みを感じましたが、この手術で乳首を守れる可能性が高まります。
 2週間後、乳房組織を取り除き一時的に詰めものをする手術をしました。手術は8時間。目覚めた時は、ドレーン管や拡張機が胸につながれていました。SF映画のようですが、数日後には日常生活に戻れます。
 9週間後、インプラントによる乳房の再建手術を受けます。この分野は、ここ数年進歩が著しく、美しい仕上がりが期待できます。これが最後の工程です。
 こんなことを書いたのは、切除手術を受ける決断は簡単ではなかったということを伝えたかったから。でも、私はよかったと思っています。私が乳がんになる確率は、87%から5%以下に下がりました。子どもたちに、「乳がんでお母さんを亡くすことを怖がらなくていいよ」と言えるようになりました。
 子どもたちの目に、不快になるようなものが映ることはありません。小さな傷痕、それだけです。後は、いつも通りのママ。私が子どもたちを愛していること、彼らのためにはできるだけのことをするということを知っています。個人的には、女性として衰えたという感覚はありません。むしろ、勇気ある決断をしたことで力を得た気持ちです。
 パートナーのブラッド・ピットがとても愛情深く、支えてくれたことはとても幸運でした。妻や恋人がこのような決断をした時、男性がとても重要な役割を果たすことは知っていてほしい。彼は手術の間ずっと、病院に付き添ってくれました。一緒に笑い合うように努めました。これが家族のために正しい選択で、絆を深めるだろうと思っていました。その通りでした。
 これを読んでいる女性が、選択肢があることを知る助けになればと思います。すべての女性、特に乳がん卵巣がんになりやすい家系の人には、専門家を訪ね、選択をしてほしい。
 手術の代替となる素晴らしい予防医療をしている医者もいます。治療を受けた病院のホームページに、私がどんな養生法を実践したかが掲載される予定です。この情報も多くの女性たちの助けになることを願っています。
 世界保健機関(WHO)によると、乳がんで毎年45万8千人の人が亡くなります。多くは発展途上国の人たちです。その人の出自やどこに住んでいるかに関わらず、より多くの女性が遺伝子検査を受け、命を救うための治療を受けられるようになることは優先課題です。BRCA1とBRCA2の検査は、米国では3千ドル以上もかかり、受けられない女性も多いのです。
 この経験を公にしたのは、自分ががんになりやすいことを知らずにいる女性たちが多いからです。そういう人たちが検査を受け、リスクがあるならば、選択肢があるということを知ってほしいと思います。
 人生には多くの挑戦が伴います。受け止め、コントロールできるものを恐れるべきではありません。