藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

未来を考える力。

日経中山記者の良記事。
それにしても、「次の500年」の著者エイドリアン・ベリーの言葉を思い出す。
「未来を一番正確に予測し得るのは、SF作家である。」

技術を持っていなかったGMが一度破綻し、トヨタ自動車やホンダの経営と株価が比較的安定しているのは、後者が燃料電池車や電気自動車、ハイブリッド車などの次世代分野で常に先んじてきたからだ。

それにしても、ガソリン車が「数十年後にはなくなる」というのは知らなかった。
最近はシェールガスの発掘など技術も進み、まだまだ石油の時代は続くのだと思っていたがこれにも驚いた。

それにしても、GMが破たんし、「トヨタやホンダが次世代技術に先んじた」という件(くだり)は読んでいて感慨深いものがあった。

その当時をリアルタイムに知る者としては、とてもそんなカッコいい代物ではなく、もう自動車の進化が行き詰っての「最後の悪あがき」にしか見えなかったからである。

もう時代の覇者だった自動車産業が斜陽になり、いずれはなくなる…と誰もが感じ始めてからの技術革新である。
『劣勢が見えてからの努力』は優勢な状態に比べて遥かに苦しいものである。
その劣勢な気分を奮い立たせて「それでもか」とばかりにあがき、少しでも燃費を伸ばし、少しでも便利に、という技術の集積が、ついには「ガソリン車の終焉」をもたらす。
努力の力と言うのは恐ろしい。
またそうした不断の努力を続けるメーカーの力も大したものである。
ガソリンスタンドが国中に広がるように、そこに「電気スタンドがあって、充電しながら日本中を旅する時代」は永遠に来ないと思っていたが、実際はそうなるようである。

自家用機が、今の自家用車のように、しかも電動で実現される日が来世紀には来るかもしれない。(あとまだ87年もあるのだ)


米IT企業にあって日本の電機にないもの
編集委員 中山淳史2013/7/17 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
中山淳史(なかやま・あつし) 89年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)、証券部、産業部編集委員論説委員などを経て産業部次長兼編集委員。専門分野は自動車、電機、運輸など。
 ホンダと米ゼネラル・モーターズ(GM)が技術提携を発表した今月初め、GMの発表資料にこんな内容の話が載っていた。
関連記事・6月6日英紙フィナンシャル・タイムズ「グーグルは21世紀のGE」・7月3日日経朝刊3面「燃料電池車主戦場に、ホンダ、独自路線転換」・7月8日日経ビジネス「特集・人材逃避、純血主義で戦えるのか」
 GMの燃料電池システムの開発は歴史が長い。月面着陸に成功した宇宙船「アポロ」にもGMの技術が搭載された――。同社はかつて、人工衛星のメーカー、ヒューズ・エレクトロニクスを買収、「戦闘機と自動車のシナジーをねらった」奇想天外な時代もあった。宇宙ロケットにどんなGMの技術が乗ろうと驚くには値しない。
 ただし、燃料電池技術については、自社開発でもヒューズの手土産でもなかったらしい。GMに技術を与えたのは米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)。GMと国家の利益が一体だった古き良き時代の、神話のようなノンフィクション・ストーリーだ。
 自動車は未完の技術といわれる。現在、市場の主流をなしているのは、数十年後には終わりがやってくるガソリン走行車。いずれは電気自動車や水素で走る燃料電池車に置き換わることがわかっており、だからこそ、技術を持っている企業の株価は買いたたかれることがない。技術を持っていなかったGMが一度破綻し、トヨタ自動車やホンダの経営と株価が比較的安定しているのは、後者が燃料電池車や電気自動車、ハイブリッド車などの次世代分野で常に先んじてきたからだ。
今週の筆者月(国際)飯野克彦火(政治)秋田浩之水(企業)中山淳史木(経済)滝田洋一金(市場)梶原誠
■サービスで稼ぐ事業モデルづくりで出遅れ
 では、IT(情報技術)産業はどうだろう。これが見事に日米逆転の構図だ。
 音楽プレーヤー、カメラ、電話、テレビ。アナログを席巻し、デジタル化に先んじたところまではよかったが、日本の電機はその後がいけなかった。サービスで稼ぐ事業モデルづくりで米国勢に出遅れ、コストの安さでは勝てるわけがない韓国や新興国を向こうに回して垂直統合モデルという無謀なコスト競争路線に固執した。
 日本の電機にも恐らく、技術はあった。だが、足りないものがあった。
 ヒントをくれるのが、最近発売された「インテルの製品開発を支えるSFプロトタイピング」という本だ。書いたのは、米インテルで「フューチャリスト」という肩書を持つブライアン・デビッド・ジョンソン氏。フューチャリストは「未来研究員」「未来予測者」などと訳す。
■10年間の詳細な技術ロードマップを作成
5月15日、米サンフランシスコでインターネット検索最大手の米グーグルが開いた開発者向け会議で、眼鏡型端末を装着する技術者=ゲッティ・共同
 やっているのは「今ないもの」を想像し、創造するだけでなく、それが社会や生活に与えるインパクト、悪影響を最小化しつつ、新技術を軟着陸させることだそうだ。見渡しているのは、10年後の世界。SFの小説や映画、日本のアニメをあたりまくり、10年間の技術ロードマップを詳細につくっていく。
 インテルはいま、主力のパソコン向けの半導体製品がたいへんだ。スマートフォンスマホ)やタブレットに対し、パソコンが劣勢に立たされているためだ。
 それでも、インテル株は買いたたかれることがない。簡単にいえば、パソコンの先、具体的にいうなら医療機器向けや、機械間の通信といわれる「M2M」技術など、仕掛けている新分野が数多い。10年先、20年先まで技術のロードマップができ上がっていて、あとは時期をみて製品を送り出すだけだ。
 同じような会社は米グーグルだろう。同社はスマホの次といわれる眼鏡型携帯端末のほか、自律走行車、人工知能再生可能エネルギーなどでも目覚ましい技術を持ち、「軟着陸」させる時を待っている。英紙フィナンシャル・タイムズはそんなグーグルを「21世紀のゼネラル・エレクトリック(GE)」と形容している。
 シャープやパナソニック。昨年度に大きな最終赤字を計上した2社に聞いてみると、フューチャリストと呼べるようなプロフェッショナルは時節柄もあり置いてないという。この際、ポストの名前はどうでもよい。10年先、20年先に思いをはせ、社会と日常生活を一変させるような技術を想像し、創造する専門家集団はつくれないものか。人材流出が著しいとされる電機業界だが、今からでも10年後に勝てる技術や戦略を描いていきたい。いや、そうでなければいけないはずだ。