藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

日本の土俵に。

グーグルグラスに対抗するともいう、眼鏡型端末の開発を日本メーカーが手掛けているという。
テレパシーという名のその会社は、「グラス型」という次世代端末のデザインを日本のメーカー(眼鏡の鯖江市)とアメリカのデザイン会社の両方で設計しているということである。

記事を見ていると、コンピュータの小型化、軽量化の一方で「デザインや質感」が益々重要な要素になっている点に気がつく。
もうスマートフォンは一定以上の普及を見ているが、「その先の質感」についてはアップル以外のメーカーはあまり頓着していないというのが一般的な感想ではないだろうかる

これから端末が用途別、場面別に先鋭化されていく(だろう)につれ、日本や欧州の伝統メーカーのような、「職人的物作り精神」が再び復興してくるような感もある。

面白いものだが、究極にIT化が進み、
再び「物作りルネサンス」が訪れるという揺り戻しの予感がするのである。
日本企業が再び活気ずく時も案外近いのではないだろうか。

「ウエアラブル」でグーグルに挑戦状 日本人起業家の勝算
2013/9/17 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 身に付けて利用するウエアラブル型の情報端末が盛り上がってきた。韓国サムスン電子が9月下旬に腕時計型を発売するほか、米アップルが開発中とされる「iWatch」を巡る情報も流れている。そして注目を浴びているのは米グーグルの「グーグル・グラス」だ。
インタビューに応じる米テレパシーの井口尊仁最高経営責任者(CEO)
 一気に競争が激化するなか、日本人起業家が設立した米テレパシーはグーグルと同じ眼鏡型に参入する。大企業相手に勝ち目はあるのか。井口尊仁最高経営責任者(CEO)に聞いた。
 カリフォルニア州サニーベール市。グーグルから車で15分ほどの距離にテレパシー新本社があった。
 テレパシーは1月に日本で発足したばかり。5月にはサンフランシスコのシェア(共有)オフィスを借り、8月にはここに入居したという。まずシリコンバレー移転の理由から尋ねた。
 「日本では『海外に脱出した』という見方をされるかもしれないが、こちらに来てみるとそういう感覚はないですね。シリコンバレーではインド、中国、台湾、韓国など世界中から集まった人が起業しています。脱出という大げさな話ではなく、起業家が成功を期して仕事をする場所がたまたまシリコンバレーというだけの話です」
 「会社を作る時点からシリコンバレーに行くことを当然、考えていました。世界規模で成功するプラットフォーム(基盤)にならない限り、ニッチプレーヤーに甘んじざるを得ない。世界中で使われる新しい製品・サービスの多くはスピードが速く急成長を志向するシリコンバレーで生まれている。そうだとすれば事業をやるのがもっとも効果的で効率的です」
《電機・IT各社のウエアラブル機器》社名商品名形態発売時期価格サムスン電子ギャラクシーギア腕時計2013年9月299ドルクアルコムToq(トーク)腕時計13年10〜12月300ドル程度?グーグルグーグル・グラス眼鏡14年にも1500ドル以下の見通しテレパシーテレパシー・ワン眼鏡14年(予定)未定アップルiWatch?腕時計未定未定
■経営者として「頓智」は失敗だった
 井口氏といえば、拡張現実(AR)技術を活用したスマートフォンスマホ)アプリ(応用ソフト)「セカイカメラ」の生みの親として有名だ。
 だが、2011年12月に運営会社(頓智ドット)のCEOを退いた。こうした経緯と新会社の運営方法に関連があるのだろうか。セカイカメラに話題が及ぶと慎重に言葉を選びながら話した。
 「以前の会社への言及が適切か分かりませんが、自分は頓智で失敗したと思っています。会社そのものではなく、頓智の経営者としての自分がという意味です。(米国の有力ベンチャーイベントの)『テッククランチ50』で製品を立ち上げて米国のベンチャーキャピタル(VC)からも投資を受けた。世界的なARのプラットフォームを目指していましたが、全社を挙げて進む実力が伴っていませんでした」
 「世界を目指していたのに日本人が日本の文化だけに基づいて動く仕組みにしてしまったことが反省点です。ですから今回は投資家、人材、企業形態、ストックオプションもすべてこちらの基準に従っています。特に投資家はパートナーですから、私たちと同じ目線、速度感、感覚で並走してくれることが重要だと痛感しています」

■象とアリの競争でもチャンスはある
米テレパシーの井口CEOとウエアラブル機器「テレパシー・ワン」の試作機
 テレパシーは8月、ツイッターなど有力ネット企業への投資実績がある米ファーストハンド・テクノロジー・バリュー・ファンドから500万ドル(約5億円)の資金を調達した。
 米アップルで動画関連技術の開発を手掛けたピーター・ホディ氏をアドバイザリーボードのメンバーとして招き、地元企業で経験を積んだエンジニアや事業開発担当者の採用も進める。
 こうした取り組みはいずれも“シリコンバレー流”だが、それだけで競争に勝てるほど甘いものでもないだろう。
 実際、シリコンバレーでのベンチャーの成功確率は極めて低い。テレパシーの場合、ライバルとして社員4万人超、年間売上高460億ドルのグーグルがグーグル・グラスの開発を進めている。井口氏も「象とありんこの競争」と笑うほどだ。
 「でも、考えようによってはチャンスでもあるのです。グーグルは莫大(ばくだい)な予算をグーグル・グラスにつぎ込んでいます。資金力をフルに活用して、新しい製品の法律的、社会的な問題を解決していってくれる。その恩恵を我々も受けることができるんです。こんなにありがたいことはないですよね」
 「予算や人が潤沢にあると、いろいろなことをやり過ぎるという傾向があります。一方、私たちには資金もなければ、時間も足りない。こういう状況の方が余計なことに気をとられずに、必要なことに集中できます。電気自動車(EV)も同じでした。最初、大手自動車メーカーは米テスラ・モーターズをバカにしていたけれど、あれだけの規模に育った。必要なことに集中したからです」

■世界各地の「いいとこ取り」めざす
 確かにテスラはEVで一定の地位を確立したものの、一方でこの業界は大手、ベンチャーを含めて失敗例も多い。成功と失敗を分けるものは何か。テレパシーは本当に勝ち組に入ることができるのか。
 やや釈然としない気持ちでこんな思いを巡らせ「それだけでグーグルに勝てるのですか」と尋ねると、井口氏は興味深い話を始めた。
 「象徴的な話をすると、こういうことなんです。実は今朝、(シリコンバレーにある世界的なデザインコンサルティング会社の)IDEO(アイディオ)で製品のユーザーインターフェースについて相談してきたのですが、ほぼ同じ頃、日本のチームは(眼鏡メーカーが多く集まる)福井県鯖江市にいたんですね」
 「本当にいい眼鏡って、装着しているときの方が気持ちがいいんですよ。いい感じの締め付け感で。我々はそういう技術をウエアラブルにも取り入れたいと思っているんです。我々は日本にも足場があるから、IDEOと鯖江をつなぐことができる。こうした強みを生かしていくことができると思っています」
入居したばかりの米テレパシーのオフィス(カリフォルニア州サニーベール市)
 よくよく話を聞くと、本社はシリコンバレーに移したものの、日本にも拠点を残しているという。
 日本ではソニーなどのOBがハードウエアの開発を手掛け、ソフトはシリコンバレーが担当。製造はアジア、マーケティングはニューヨークと世界各地の「いいところ取り」をするのが再び「世界規模のプラットフォーム」を目指す井口氏の戦略だった。
 それでも確実に成功する保証はないが、一方で吉兆もある。今年3月、グーグルの社内で予定されていた井口氏の講演会が直前にキャンセルになったのだ。
■巨人グーグルがライバル視
 グーグルの社内弁護士から「当社のダイレクトコンペティター(直接の競争相手)に当たるので、(講演は)控えてほしい」と連絡が入ったという。
テレパシー・ワンの“強敵”グーグル・グラス(試作品)
 これはIT(情報技術)業界の巨人がはるかに小さいベンチャーを競争相手と見ている証左だ。
 IT、そしてシリコンバレーのこれまでを振り返ってみれば俊敏さや大胆さに勝るベンチャーが大企業を隅に追いやってきた歴史の連続だ。井口氏もその系譜に名を連ねることができるのか。
 「懲りない挑戦者」か、それとも「失敗を糧とした成功者」か。シリコンバレーの変化のスピードは速く、井口氏への評価が定まるのもそう遠い将来の話ではないはずだ。
 (シリコンバレー=奥平和行)