藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本当に見ていますか

首相が経団連に賃上げを要請したという。
この一行だけで???である。
「首相が上げろというもんで」では会社は動かない。
なぜなら見ている場所が違うから。
(これもおかしな話だが)給料を上げれば、その分減税になる、とかダイレクトに補助金を何十パーセントか出す、とか"そういうこと"をしないと経済は動かない。
現にもう「輸出の会社さんはいいけれど、うちは原材料費が上がって帰って不景気で」と言う人はもう多数出ているし、そんなもの事前に火を見るより明らかだったのだ。

どうせそれをやるなら公共投資だ、補助金、手当の増発であろう。
けれど偉い経済学者が指摘してるように、100兆円予算をとっても数パーセントしか景気には跳ね返ってこない。
これでは経済浮揚は無理だろう。

今の日本は二十代の若者から、八十代の高齢者まで「一億総不安病」である。
年金は破綻するだろうし、独居高齢者も増え、職のない中年以下も多い。

一丁ハッタリをかましても、政治家は勝負に出てはどうかと思う。
このままでは確かに年金もじり下がりし、就業人口は確実に減り、税収も減る。
それは誰もが理解している事実である。

だから、消費税を35%にします。がすべての高齢者や職のない人の生活は保証します。

と言えばいい。
消費税3%増で税収は五兆円ほど上がるという。
あと30%上げれば五十兆。
国家予算は百兆を超えるので、まず国債の返済計画を立てつつ、福祉政策を最優先にすればいい。
しかも老後の生活が本当に「基本的人権」を満たすようなクオリティかどうか、国民はみんな見ている。
まずそこに目を向けないと、企業が賃金を上げるのを待って「景気はよくなりましたか?」というのではまったくスピードが遅すぎるし、財政の破たんに間に合わない。

冨山さんの言う、七割を占める中小サービス企業に従事する人たちにこそ、そういう提言をすべきである。
新しい政党は既存路線でのケンカを止めて、視点を全く変えてみてはどうだろうか。

「それ、会社病ですよ」

 安倍首相が日本経団連などに賃上げを要請した、と報じられました。賃金アップで消費を上向かせ、デフレ脱却を図りたいシナリオのようです。
 円安で業績好調な企業には、応じるところも出てくると思います。日本の経営者は、空気に弱い存在。また、グローバルに展開する大企業では、もはや日本人の従業員比率が30%以下というところが少なくない。リストラと団塊世代の大量退職もあってかなりスリムになっています。賃上げは、それほどハードルは高くないでしょう。
 しかし、残念ながら大企業の雇用は、全労働者のせいぜい3割程度に過ぎません。すべての消費者の財布のヒモがゆるむ、などということはなく、全国津々浦々まで景気の好循環を作るのは難しい。
 むしろ、中小企業では、生産性が落ちているという事実があります。円安によって輸入原価やエネルギーコストが上がったこともあり、賃金が上がるような状況にはまるでない。それどころか、心配しなければいけないのは、放っておくとブラック企業化しかねない、ということです。コスト競争力を人件費でコントロールしようとする企業が出てくるからです。
 グローバル企業を別とすれば、国内での競争は限られた縮小するパイの奪い合い。そこで参入規制の緩和政策だけを推し進めて、過当競争が繰り広げられれば、人件費を削るしかなくなる。

一方で国内産業の多くを占めるサービス産業は、実は不完全競争な業態です。例えば北海道の路線バス会社と、大阪の路線バス会社は競争関係にありません。もっというと、駅を挟んだふたつのスーパーや通りを挟んだコンビニも棲み分けができてしまう。業種によってはとても狭い地域で閉じているのです。こうした雇用吸収力のある労働集約的な産業で賃金を上げていくには、生産性の高い企業へ事業を集約し、ある種の寡占的な産業構造を容認するしかないのです。
 寡占のデメリットは、腐敗が起こることです。それを防止する規律とガバナンスを作りながら、再編・統合を促していく。また、労働生産性を高め、賃金を上げられないブラックなマネジメントには退場してもらうような賢い規制、「スマート・レギュレーション」を作っていく。
 賃金が上がったら、雇用が奪われる、という議論があります。しかし、この手の国内型サービス産業においては、海外の企業に代替能力はない。つまり、雇用は減らない、ということです。賃金コストが高くなっても、その場で提供せざるを得ない社会的なニーズがなくなるわけではないのですから。
 実は、政治が目を向けなければならないのは、自分たちの声を代弁してくれる存在がない70%の労働者、サービス産業や中小企業で働く労働者たちです。彼らが立ち上がるのは、選挙という投票行動においてのみ。だから、選挙結果は大きく揺れる。彼ら70%の置かれている状況を想像し、スマート・レギュレーションを軸とした必要な手を打っていく。今、最も求められていることだと思います。