今またバブルと言われている。
特にそんな空気が漂い出したのは唐突にオリンピック招致が決まってからである。
まるで経済界とマスコミが、自らにいい聞かせるように2020年に焦点を合わせている。
人口は減り始め、製造業は空洞化し、世界最速で高齢化している国なのに「ここ五年の景気」にしか関心がない。
というか、実はそんな先行きの悲壮感からの逃避意識が今の空気のもとなのかもしれないと思う。
たとえほんの少しの間でも「嫌なことからは目を逸らす」というのは一番愚かな行為だ、と誰もが知っているというのに。
社会に出て、いわゆる「出来ないやつ」の典型的なふるまいが今の日本なのじゃないだろうか。
ツケは早々に回ってくるに違いない。
集団の狂気というのは、先のバブルもそうだったように麻疹(はしか)のように伝染する。
病気のさ中に正気に戻ろうという感覚にはなかなかなれないものなのだ。
皆が浮かれている時に悲観論ばかり唱えていては周囲から浮いてしまう、などと引け目にすら感じて沈黙してしまったりもする。
金融緩和をしたって、その先に「力の源泉」とか「将来展望」がなければ息切れするに決まっている。
ほんの数年、姑息に延命しているだけなのにその空気に酔っているのが今ではないか。
かつてのバブルの崩壊を見た経験からはそう思えて仕方がない。
特効薬がない、と分かっているのに何も行動しないのでは再び80年代と同様の轍を踏むのは間違いないだろう。
かつての自分がそうだったように、今の三十代以下の人たちにはそこをよく見ていてもらいたいと思う。