藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

人を支える。

就職、転職、採用。
企業の永遠のテーマとも言える。

日本は人手不足が進み、限られた人材を無駄なく生かすことが一段と問われる。本質的に重要なのは、職を巡るミスマッチを減らすことだ。テクノロジーがカギを握る。

これまで人事担当者の「経験と腕と勘」に委ねられてきた採用基準。
これへのアドバイスはコンピュータが一役買いそうだ。

2012年設立のi―plug(アイプラグ、大阪市)は、自己PRやふだんの様子の動画、適性検査でわかったコミュニケーション力やストレス耐性といった学生の情報をデータベース化し、企業がこれを検索して気になる人材に接触する採用支援を手がける。

ストレス耐性なんて、自分が図ってもらいたいくらいである。
さらに。

興味深いのは「思いがけない出会い」(中野智哉社長)があることだ。同社を通じ入社が決まった18年卒の学生の場合、55%は当初の志望とは異なる業界に進んでいる。

大量のデータを処理し、人間には発見できないパターンや相関を浮かび上がらせ、最適と思われる組み合わせを示すのはIT(情報技術)が得意とするところだ。

つまり、「誰がどの職場に向いているか」というような難しい判断は、もはや人間が単独でやるべきではなくなったのだろう。
求職者のいろんな能力を測りながら、お互いの相性をシミュレーションする。
そのやり方は「一対一」の交際でも大いに役に立つに違いない。

何せ「人では気づかない傾向」とか特徴を洗い出すコンピュータはかなり信頼できるツールになってくるに違いない。

ぜひ誤用にないように、うまく使いたいものだと思う。

データで探る職の最適解
経団連の中西宏明会長が「日程を采配することに違和感がある」と発言したのをきっかけに、就職活動ルールの見直しが政府や大学を巻き込んで始まった。就職・採用は学生・企業にとって大きな選択であり、見直し論議にスポットライトがあたっている。

だが、ここでは別の角度から考えてみたい。日本は人手不足が進み、限られた人材を無駄なく生かすことが一段と問われる。本質的に重要なのは、職を巡るミスマッチを減らすことだ。テクノロジーがカギを握る。

2012年設立のi―plug(アイプラグ、大阪市)は、自己PRやふだんの様子の動画、適性検査でわかったコミュニケーション力やストレス耐性といった学生の情報をデータベース化し、企業がこれを検索して気になる人材に接触する採用支援を手がける。アイプラグは各社の要望に合いそうな学生を人工知能(AI)で優先的に表示する。19年卒の学生は10万人以上が登録し、約4400社が利用する。

興味深いのは「思いがけない出会い」(中野智哉社長)があることだ。同社を通じ入社が決まった18年卒の学生の場合、55%は当初の志望とは異なる業界に進んでいる。
企業は大学名や学部といった従来の基準だけに頼らず、多様な視点から学生を見るうえ、一部の有名企業に目を奪われがちな学生も「こういう会社があったのか」と気づくケースが多い。

厚生労働省の統計によれば、新規大卒者の就職後3年以内の離職率は3割前後と決して低くない水準で推移してきた。すべてが後ろ向きな理由とは限らないが、ミスマッチが生じているのは確かだろう。企業にとって放置できない問題ではないか。

リクルートホールディングスは社員の性格診断データを用い新入配属の案をつくる試みをグループ内で開始した。「どの部署に配属すると活躍できるか」「指導役が誰なら伸びるか」などを割り出す。
今春に実施した現場からは「今年の新人はいいね」との声があがる。新人と職場のマッチングがいい方向に動いた可能性がある。
リクルートの人事部門にはデータサイエンティストなどデジタルの専門家が所属する。扱うデータを増やし、情報の質を上げることを志向している。

大量のデータを処理し、人間には発見できないパターンや相関を浮かび上がらせ、最適と思われる組み合わせを示すのはIT(情報技術)が得意とするところだ。
ネット通販や動画サイトは商品やコンテンツを顧客にレコメンド(推薦)し、シェアリングではサービスの担い手と受け手を効率よく結びつける。マッチングのしくみが社会や経済に変革をもたらす。

就活と同様、人生の節目となる婚活でもテクノロジー利用が世界的な潮流だ。
米国では結婚したカップルの3組に1組がマッチングサービスで知り合ったとの調査もある。

波は日本におよび、エウレカ(東京・港)が運営する「ペアーズ」で交際や入籍に至った人は16万人以上いる。
社会進出に伴って女性の可処分時間が減り、相手探しの機会が少ないのが背景で、居住地や年齢、関心分野など多様なデータを駆使する出会い方が求められているという。

職に話を戻せば、本来、働く個人は一人ひとり性格も能力もばらばらだ。
企業の側もたとえ業種や職種が同じでも、社風や規模によって求める人物像は違ってくる。
勘案すべき変数の多い人事の世界こそ、最適解に迫るのにテクノロジーが効くはずだ。
実際、人事にテクノロジーをかけ合わせるHRテックは各国で注目を集める。ある予測では、関連スタートアップへの18年の投資額は約3300億円にのぼる。

米パイメトリックスは神経科学とAIに強みをもつベンチャー
図形などを使った簡単なゲームのプレーぶりから、その人の認知力や社会性、感情面の特徴を浮き彫りにし、顧客企業に合った人材を見つける。履歴書をさっと眺めただけではわからない候補者の個性をつかみ、性別や人種への偏見を排した採用にも役立つ。これまでに世界で100万人超の求職者がゲームにのぞんだ。同社は9月、約45億円の資金調達を発表した。

HRテックの活用は採用時に限らない。チームワークの醸成ややる気の向上、退職の予測と予防など応用の範囲は広い。個人が常に力を発揮でき、ミスマッチを防ぐ工夫をする余地は大きい。

求人・求職のデータが集まるビジネスSNS(交流サイト)米大手リンクトインの村上臣日本代表によると、いま世の中で求められているのは複数のスキル(技能)をもつハイブリッド人材だ。例えば需要が増えているのは「皆の前で話せるエンジニア」。情報システムを売り込むにも顧客が抱える課題が複雑になり、先端領域に詳しくない従来型の営業員はもはや通用しない。

そうした求人が多いと知ったエンジニアはプレゼン術を学び出す。企業の戦略や業界動向が求人データで可視化され、個人がスキルを磨く動機づけになるわけだ。

AIも万能ではなく、データが自動的に正解に導いてくれるわけではない。それでもデータから得られる洞察を適材適所に生かさない手はない。
ネット社会のダイナミズムは人と人、人と組織を縦横無尽につなぎ価値をつくること。
労働人口は減っても個々のパフォーマンスを極大化できれば、日本の産業界も21世紀型に近づく。