*[ウェブ進化論]獣も自分も。
鳥獣による農家の被害は毎年の問題だが、いよいよそこにもITが導入される。
今のところは「罠にセンサーをつける」という発想のようだが、将来は「自然をそのままセンサーする」ということになるだろう。
どこにどれだけの野生生物がいて、現在地や侵入経路も「山ごと」わかるようになるだろう。
人工衛星や地面のセンサーから情報が得られるようになると思う。
素晴らしい「勘」でクマを斃すまたぎの仕事も相当ITが助けることになるだろう。
世界中の野生動物や、さらには人間だって「IoTセンサーの網」に入る日は近い。
自分たちもいずれは「個別に管理される」存在になる世界をイメージしてこれからのことを考えておいた方が良さそうだ。
狩猟ワナにIoT 鳥獣被害や猟師の高齢化に挑む2019年1月31日 21:30野生のイノシシやシカによる農作物や人的被害は農家や自治体にとって悩みの種だ。一方で捕獲を担当する狩猟者は減少し、高齢化も進んでいる。捕獲の効率を高めて負担を減らそうと、huntech(ハンテック、東京・目黒)はあらゆるモノがネットにつながる「IoT」を活用した狩猟ワナ用センサータグの展開に挑戦している。2人の隣にあったのは、動物が餌に釣られて箱型のオリに入ったら戸が閉まる構造の幅1メートル、奥行き2メートルの大きな箱ワナだ。スマートトラップはワナの戸の部分に取り付けて使う。戸が閉まるとスマートトラップの磁石付きフックが引っ張られて外れ、それをセンサーが感知。すぐに猟師の携帯端末にメールで通知する仕組みだ。通常、猟師は捕獲の成否がわからないまま、毎日広範囲の多数のワナを見回っている。しかしスマートトラップを使えば、通知が来るので優先的に捕獲に成功したワナに向かうことができる。全地球測位システム(GPS)付きで設置場所の把握も助ける。「箱ワナ」だけでなく、ワイヤを脚にくくり付けて捕獲する「くくりワナ」にも対応している。通知だけでなく、捕獲情報やワナの設置情報をデータベース化して管理できるのも特長の1つだ。データを蓄積することで獣の出没場所や時間の傾向を分析し、対策に役立てることができるという。猟師のカンや暗黙知をビッグデータで「見える化」し、次世代につなぐ狙いだ。農林水産省の調べでは、野生鳥獣による農作物被害額は16年度に172億円にのぼる。国や自治体の対策強化でイノシシやシカの捕獲頭数が大幅に増え被害額は減少傾向にはあるものの、農家の耕作放棄や離農の増加の一因になるなど影響は依然として大きい。兵庫県はこれまでも鳥獣対策に取り組んでおり、18年末から新たスマートトラップを取り入れた。県内の六甲山や淡路市に120台を導入。農政環境部環境創造局鳥獣対策課の塩谷嘉宏課長は「(市販の)多様なワナに利用でき、構造がシンプルで価格も安い」と評価し、今後は狩猟者だけでなく被害を受けている農家にも利用を働きかけたいとしている。ハンテックは19年末までに全国の自治体などに3000台の導入を目標としている。料金は本体価格が1台3万3800円(税抜き)で、1台当たり月額980円(同)のシステム利用料が必要だ。似た仕組みを提供する競合他社と比べ、価格を2分の1~3分の1程度に抑えた。創業は17年。川崎CEOを含めた東京大学出身の3人が全員副業で起業した。小学生の頃から環境に関心を持っていた川崎氏は生産用機械器具を手がける企業で働きながら、ハンテックを経営する。普段はメンバーや顧客と電話やネットで連絡を取り合い、導入先の現地に行く必要があれば週末や有休を駆使して両立している。コストをかけずに機動的に運営しているからこそ低価格を実現できている。川崎氏は「メインが他にあるからこそ、ニッチな分野にも挑戦できる」と「副業起業」のメリットを強調する。いきなり全てを捨てて起業するにはリスクが大きくても、副業ならハードルは低い。そしてニッチでもIT化によるイノベーションを必要としている分野は数多くある。川崎氏は捕獲の先にジビエ流通につなげることも構想している。捕獲した野生鳥獣の9割は有効に利用されず廃棄されている。しかしスマートトラップを使えば捕獲後すぐに回収できるので、鮮度の高い食用肉としての流通も可能になる。捕獲から加工、流通、レストランや個人への販売まで一貫した仕組み作りを将来の目標に描く。全員副業で社会的課題に挑戦するハンテック。ビジネスの規模が拡大すれば本業との両立に課題も出そうだが、まずは目先の事業を軌道に乗せるべく奔走している。働き方が柔軟になる時代の新たな起業の形といえそうだ。(企業報道部 佐藤史佳)