女性の幹部の数が少なすぎるという恒常的な問題に対して、米ゴールドマン・サックスが新しい方針を打ち出した。新規採用者を男女同数にするという目標を、アナリストと新卒者採用枠のアソシエートにも例外なく広げることなどを目指すという。
ゴールドマンが18日に発表した取り組みは、同社のダイバーシティー(多様性)戦略の最新施策。その中には、トレーダー志望の女性を対象に1年間の試用期間を設ける計画もある。これによってキャリア開始の初期から女性の人材を育成し、最上級職に就く女性の層が薄いという問題に対処したい考えだ。
金融業界は総じて、同じ課題に取り組んでいる。シティグループをはじめ他行もすでに、新規採用者の大半が就くアナリストとアソシエートの2つの最下級ポストで男女同数を採用する目標を掲げている。
「これはどう見ても最先端の取り組みではないし、画期的な対策でもない。だが、(企業がダイバーシティーを推進する姿は)いつ目にしてもよいもの」と語るのは、アンナ・ベニンガー氏。同氏は、職場におけるインクルージョン(包摂)を推進する非営利団体、カタリストで調査・企業との対話を統括するシニアディレクターだ。
時代のサイン
「ゴールドマンが性別の多様性について今方針を発表していることは時代のサインであり、率直に言えば、事業目標として性別多様性を達成することがいかに重要かを示している」と同氏は語った。
ゴールドマンは昨年、2021年までに大学新卒採用者の半数を女性にするという目標を設定した。同社のデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)は18日、最上級幹部2人とともに社員にメッセージを送り、その中で、大学新卒者の採用目標は「ほぼ達成している」ため、施策をさらに一歩先に進めると述べた。
「募集職種で経験者を中途採用する手法は、当社の成長において重要な役割を果たしてきた。その一方で、幹部層でダイバーシティーが後れを取っている大きな原因ともなっており、それについては対処が必要だ」と経営幹部3人はメッセージで語った。その上で、新規採用者を男女同数にする目標を、他社から採用するアナリストと新規採用枠のアソシエート職にも広げる計画を打ち出した。なお、この目標をいつまでに達成するかは明らかにしていない。
ベニンガー氏は、女性の採用者数引き上げは出発点としては良好としたものの、調査結果を引き合いに出し、「最下級職の採用者を男女同数にしても、相当数が辞めていくため、組織内のダイバーシティーを幅広く推進することにはならない」と指摘した。
ゴールドマンの最新データによると、最下級ポストでは女性は全体の56.6%を占めるが、「専門職」層では37.2%、「管理職」層では28.8%に下がり、最高幹部層ではわずか21.6%にとどまっている。
ゴールドマンは、社員の離職防止と女性の登用を目的として幅広いプログラムを推進している。今年はさらに新たな施策を導入し、取締役への昇進審議プロセスに先立って「全組織を対象に男女比を評価し昇進候補者」を再検討する方針だ。
管理職の評価材料に
「多様性に対応できるインクルーシブな環境を構築し、これまでに説明してきた目標に向かって取り組む責任は、各事業部門長が負うことになる」と、同社の経営幹部はメッセージで述べている。「以上に対する取り組み姿勢は、マネジャーの報酬や昇進を決定する際に重要な判断材料となる」
男女の賃金格差について報告義務がある英国で、ゴールドマンがつい先ごろ開示した資料によると、男性社員の賞与中央値は女性よりも67.7%高く、男性社員の時間給中央値は女性よりも36.4%高かった。
この数値に関してゴールドマンは、「当社内の幹部職で女性よりも男性が多いという現状」が反映されていると述べた。同様の職種における女性の賃金は全社的、全世界的に男性の99%に達していたという。
By Laura Noonan
(2019年3月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)