*[ウェブ進化論]芸術との接し方。
ここ数年小劇場の芝居や映画を見るようになった。
若い頃にはなかった習慣である。
お金を大量にかけた舞台などとはまた違い、しかし作品の数は多く圧倒的な多様性がそこにはあると思う。
そして、それぞれの小さな芝居や映像には必ず作家や監督が存在し、そして演じる俳優がいる。
そんな作品を観ていると、それらは「バーチャル体験をさせてくれる一幕」なのだと実感する。
舞台や映画の中で、人は「よく死に、事件に遭い、そして悩み、泣いて何かを感じる」。
自分たちの日常では、そんなに大きな事件が頻発することはないが、だから反対に「いつでも起こり得ること」を紙芝居のように見せてくれているのだ。
だから「日常のふとした瞬間から起こり得る悲しいこと」を演じられると自分たちは驚き、興奮し、そして我がことのように悲しみを感じる。
芝居や映画というのは、ただ「観て楽しむもの」というよりは「擬似体験をさせるもの」なのではないだろうか。
どんな作品にも、いろんな脈絡があり、視聴者はそれぞれ違う部分に反応する。
けれどそうした「作品の起承転結」に対して、観客が「自分なりに解釈する」というのが芸術の醍醐味なのだろう。
作品そのものが「ダイレクトに自分に迫ってくるもの」こそが芸術の真骨頂なのだ。
文学でも絵画でも音楽でも、同じ理屈が通じているのではないだろうか。