藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

若さを使うこと。

自分も二十代半ばで、いわば勢いで独立したから思うこと。

経験は早めがいい。

経験とか知識はとっても重要なのだが。
「リアルとバーチャル」という観点で全く違う。
知識レベルでは出会えない「感情的なこと」にリアルでは日々出会うことになる。
今50歳を過ぎた自分が今の経験で「これから独立するかどうか」を考えると躊躇するだろう。
リスクだって知っているからだ。

若気の至り、って誰が言ったのか全くの金言だと思う。
若気の失敗は、なんとかなるものなのだ。(と思う)

対して年寄りの冷や水、は結構深刻なことが多い。
なんでも「若い」ということのアドバンテージはとても大きい。
最大の持ち味を、若い人は是非使い切ってもらいたいと思う。
私も「無茶をして使っていた族」の一員ですが。

社長や経営幹部を経験しないと分からないことって多いんですよ。僕は、その人が持っている頭の良さってそれほど大きく変わるわけではなくて、変わるのは、経験によって幅や奥行きが広がる知識や判断力、スキルなどだと思っています。だから、早く経験させて、成長を促した方がいい。

お金の制約から解放 日本の元気を取り戻したい 辻庸介 マネーフォワード社長インタビュー

 個人向け家計簿アプリからスタートし、成長を続けるフィンテック企業、マネーフォワード。ビジネス向けサービスも急拡大している。辻庸介社長は起業家として経験した失敗とそこから得た学びの先に、「お金」から自由になる活力ある未来を描く。(聞き手は米田勝一日経ビジネスアソシエ編集長)

──個人向けの自動家計簿・資産管理サービスから始まり、ビジネス向けのクラウド会計サービスまで事業が急拡大しています。マネーフォワードのミッションは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」ですが、これはどういう意味なのですか。

マネーフォワードの辻庸介社長(写真:菊池くらげ)

 お金って手段ですよね。物々交換のための。でも、この単なる手段のために、我々の人生はものすごく制約を受けているし、そういう人生はあまり楽しくない。だから、お金からある程度自由になりつつ、お金をうまく使えるようになるためのお手伝いをしたいと思ったんです。

 日本人はお金の使い方・扱い方に関する教育を十分に受けていないし、お金の話は、依然として、後ろめたいものとして捉えられがち。「お金を前へ。」は、そうした現状の改善に役に立ちたいという気持ちを表現した言葉です。

■最初のソーシャルサービスが大コケ

──そもそも、お金に着目したサービスで起業しようと考えたきっかけは何だったのですか。

 私は、大学卒業後、ソニーマネックス証券を経て2012年にマネーフォワードを設立しました。35歳の時です。

 マネックス証券時代に、人生におけるお金の制約の大きさを実感したのがそもそものきっかけです。あと、ソニー時代は経理部に所属していたのですが、当時感じていた経理業務の面倒さに対する個人的な怒りも理由の1つですね(笑)。これは、弊社が手がけるビジネス向けクラウド会計サービスの原点になっています。

家計簿アプリ「マネーフォワード」は銀行の入出金やクレジットカードの履歴、レシート情報などを基に家計簿を作成。家計の管理・見直しに役立てられる。

 最初に始めたのは、「マネーブック」というお金をテーマにしたソーシャルサービス。自分の資産をオープンにすれば、他のユーザーの資産を匿名で閲覧できるというものです。お金に関する有効な教育法の1つは、うまくいっている人の手法を学ぶこと。どんな資産運用によってどれくらいの儲けや損が出ているかを閲覧できるサービスだったんですが、1日の利用者数が10人ほどにしか伸びず大失敗。すぐに閉鎖しました。

 マネーブックからSNS的な要素を取り除いたのが、現在、個人向けに提供している自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」です。おかげさまで、利用者数は500万人を突破しました。振り返ると、お金の情報の「シェア」は、ちょっと早すぎたのかもしれない。ただ、今でもニーズはあると考えているので、またいつか再挑戦してみようと思っています。

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2017/10/7 6:30
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■起業は、そのほとんどが失敗する

──最初に始めたサービスが不幸にも失敗して、その後の方向転換は容易だったのでしょうか。

「マネーフォワード」の利用者数は現在約500万人で、「MFクラウドシリーズ」のユーザー数は50万以上。全国2600以上の金融機関関連サービスと連携している

 現実的に結果が結果ですから、変えざるを得ない(笑)。

 失敗の原因って、大きく分けると2つあると思うんですよ。1つは方法論自体の問題。課題に対するアプローチの道筋が間違っていれば、目指す場所に到着するわけがない。もう1つは、努力の程度。絶対量が足りなかったり、もうひと踏ん張りが利かなかったりすれば、やはり結果は出ない。

 マネーブックの場合、利用者があれほど少なかったのだから、方法論が完全に間違っていたと受け止めるしかない。その点に迷いはありませんでした。

 失敗には仮説の検証という側面もあります。マネーブックの場合、「ユーザーは他の人の資産運用を勉強したい。そういうモチベーションがあれば、自分の情報もオープンにするんじゃないか」というものでした。仮説が間違っていたと判断したら、次の仮説検証に移ればいい。起業においては、失敗は当たり前ですから。

 起業の際には、マネックス証券松本大社長(当時)からこう言われました。「起業はほとんどが失敗する」。

 とはいえ、そうした現実を頭の中では理解していても、実際に失敗に直面するとやはりかなりつらいんですけどね(笑)。

■普通の人が普通にやっても普通の結果しか出ない

──もともと、起業志向だったのですか。学生時代には、先輩と一緒に学習塾を始めたそうですが。

 学習塾は、無理やり引きずり込まれたようなもので。いわば「もらい事故」です(笑)。ただ、ビジネスの面白さを教えてくれたのはこの学習塾でしたね。

 社会人になった時点では、「いつか起業しよう」といった考えは全くありませんでした。現在当社で提供しているサービスも、マネックス証券内の社内起業の形で考えていたのですが、リーマンショックの影響で難しくなった。それで、マネックス証券から出資していただき、独立したのです。

 ただ、起業云々(うんぬん)とは関係なく、ビジネスパーソンとしてどう成長していくかという点については、社会人になった当初からある種の危機感を持っていました。「プロとして通用するビジネスパーソンになって、新しい価値を作り出していきたい」という意識は強かった。そのために、何をすればいいのか――と。振り返ると、その危機感の結果として起業に行き着いたというところでしょうか。

──マネックスでの経験はどのように生きていますか

 配属先はCEO室だったのですが、やはり、松本さんから得た学びは大きかった。

 あれだけの能力を持つ人が、あんなに努力している。先ほど「起業はほとんどが失敗する」という話をしましたが、普通の人が普通にやったら、普通の結果しか出ないから成功は難しい。普通の人の何倍も考え、努力する人が、諦めずに最後までやり続け、初めて成功する。秋元康さんが「夢は手を伸ばした1ミリ先にある」と語ったそうですが、1ミリ伸ばすための不断の努力と、そのためのもうひと踏ん張りをできる人だけが果実を得られる。古い言葉ですが、「ローマは1日にして成らず」は真実なのだと、肌で感じました。

辻社長は「もともと起業志向ではなかった。 ただ、危機感はあった。日本の閉塞感に対する悔しさも」と語る(写真:菊池くらげ)

──起業家にはパッションの塊のような方が多いですが、辻さんの場合、事業に対するパッションの源泉は何ですか。

 著名な起業家の方と会うと、そのパッションに圧倒されます。「自分はまだまだ足元にも及ばない」と感じて、ショックを受けることもしばしばですね。

 パッションの源泉って、自分でもうまく言語化できないんです。ただ、どこかに、今の日本の閉塞感に対する怒りみたいなものがあるのかもしれません。

 米国にMBA留学した時にも感じたのですが、日本って本当に素晴らしい国です。モノの品質は高いし、安全だし、便利だし。なのに、経済は停滞状態から脱せず、世界での存在感も薄れつつある。正しく評価されていない気がして、すごく悔しい。何かフェアじゃない。この状況をどうにかするために、微力ながらも、少しでも役に立ちたいという思いは強いですね。

■人を変えるのは「経験」

──はた目からは、事業は非常に順調に見えますが、現時点での経営上の大きな課題を挙げるとしたら、何になるでしょうか。

 今、強く意識しているのは、新しい事業の立ち上げの必要性です。2017年6月に、企業間の後払い決済サービスを提供する100%子会社「MF KESSAI」を設立しました。社長は30歳の若さ。当社の新卒採用第1期で、25歳の取締役もいます。

 新サービスを分社化した1つの理由は、組織としての活性化。権限を与えないと事業のスピード感が生まれないし、人も育たない。特に、起業家的な人間が。

 社長や経営幹部を経験しないと分からないことって多いんですよ。僕は、その人が持っている頭の良さってそれほど大きく変わるわけではなくて、変わるのは、経験によって幅や奥行きが広がる知識や判断力、スキルなどだと思っています。だから、早く経験させて、成長を促した方がいい。

 ベンチャー企業が、大企業では得にくい成長の場を提供できなくなったら危ない。活力を失ってしまう。だから、自分たちのような生まれて間もない企業でも、新規事業への取り組みが大切なんです。

■お金の心配をせずアクティブに生きられる世界

──最後に。今、マネーフォワードが提供しているようなサービスの先に、どのような未来が広がると考えていますか。

 抽象的な表現になりますが、ある程度の収入や資産があれば、人や企業が安心して生活・活動できる世界を実現したいですね。

 我々が提供するようなサービスの下でお金の管理が自動的に行われ、将来を見据えてその時々で検討すべきアクションのアドバイスと、判断を下すのに必要な情報が容易に入手できる。そして、選択したアクションに必要な手続きが自動的かつ迅速に実施される。お金に関する無用な心配がなくなり、自由になる時間も増える。結果として、個人も企業もよりアクティブになり、日本が元気になる。

 そんな世界が実現するように、これまで以上のパッションで頑張らないといけませんね。

日経ビジネスアソシエ 2017年9月号記事を再構成]