ピアノの練習曲にハノンピアノ教本、てのがある。
- 作者: ハノン,全音楽譜出版社出版部
- 出版社/メーカー: 全音楽譜出版社
- 発売日: 2008/08/08
- メディア: 楽譜
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色々な形の「指の練習」がえんえんと続く。
1番から60番まで。
まともに通して練習すれば、二時間を下回ることはない。
十代まであるいは十代のころは、この練習曲が無味乾燥、もうただただ「いやな存在」でしかなかった。
まあ腕立て伏せとか、サーキット走行とかの「基礎トレ」みたいなもので、「ただ体力をつける練習」のようなその存在が疎ましくてしかたなく。
結局、十数年でピアノの道は断念したわけである。
因果応報か。
そんなことすら、とうに忘れ去って社会人。
それが厄年を迎え、身体の変調に気づき、何か文化的な「拠り所」を求めるような格好になって、再び音楽に目が行った。
そこで、四十の手習いよろしく再チャレンジした音楽は、以前のものとは「雲泥の差」だった。
まったく別物といっていい。
ハノンは必然、だったのだ。
優れたアスリートが、基礎体力の維持、向上に余念がないのと同じく。
「一定の演奏」を自らがするためには「一定の筋力、体力、技術が要る」そんなことが、音楽であれ、スポーツであれ、仕事であれ、恋愛であれ?、必要不可欠なのだ、ということに気付いたのはここ一年のことだ。
音楽を始める年齢は若いころから、が常識だが、その幼いビギナーたちに「基礎練の尊さ」とか「その後の楽しさ」のようなものを伝え、啓蒙していくのが師事される教師たちの役目なのではないか。
なに、一般教養の世界と同じ。
学ぶ楽しさ、基礎練の楽しさ、みたいなものが伝わり、醸成されるか。
教育の成果はその一点にあるのではないか、などと思うようになる。
ハノンすら楽しく。
さらにいろんな時代の作曲家の作品に触れることは、さらに楽しいのだ。
そんなことを指導者たちは、もう一度念頭に置くべきではないか。
業界の第一線で活躍するプロたちの共通点は、そんな「楽しみ方」を「師や、あるいは自らの練習の中で見つけ得た人たちのその後」ということのような気がするが、どうだろうか。
ハノンも楽し。
ソナチネも楽し。
ショパンも楽し、ベートーベンは難しだけれども。
要は結構、頭を使う作業なのだ。
その意味で、知的な興味を包含している。
音楽、絵画など芸術の楽しみはこの「頭で感じる快感」が要諦なのだろう、とようやく気付いた四十半ばなんである。
道の追及は、ようやく始まる。