藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

廃県置藩。(はいけんちはん)


いわゆる有識者、であるエコノミストや大学教授たちが経済の回復のために提言をしたという。
主宰する団体の性格が報道記事からだけでは分かりにくいが(もう少ししっかりアウトプットしてくれよ)、ようやく大前研一さんの二十年来の持論である「地域国家論」が日の目を見た感がある。


地方分権、といえばその徴税や予算取りの方法、また結局一番キモになる「各地域の政策」、しかもその地域の特性を活かした付加価値の高い具体策にまで及んで、大前さんの右に出るものはいないだろう。
それにしてもようやくこの経済危機でモコモコ出てきた「廃県置藩」だが、少し中身を検討したい。

まず「廃県置藩」。

中谷巌・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の提言とのことだが、全国300、というのが気にかかる。
政策を藩単位でどこまで動かせるか、ということが重要だが細かすぎないだろうか。
ある程度予算を立てて、大胆に地方色を打ち出し、その「藩」を経営せねばならないわけだ。

300というと、いまの50ほどの「都道府県」という単位がさらに「六分割」されることになる。
その単位で地域色を出し、また「全国の中でもわが藩へ来たれ」という政策を「藩主」が打ち出せるだろうか。

大前さんの指摘にもあるが、江戸時代の統治エリアよろしく、もう少し日本の「各地方が持つ特色」を出せる単位での政策立案が必要ではないか。
300の藩を50づつ束ね、統治してゆくと「六ブロック」で大前論になぞらえられるが、ともかく「一藩の経済力」という点でよく検討しないと、「船頭多くして船山に登る」で混乱が予想される。

特に徴税のシステムなどを藩単位にゆだねた場合は複雑すぎてロスを生むのではないかと懸念する。
藩単位で通貨の発行が可能、などとなれば正に江戸時代、通貨の発行元である藩の信用力などを考えると再考の余地ありかと思う。

デフレによる景気悪化を防ぐ必要性を指摘し、預金残高への課税新設を提案した。

課税を嫌った資金が株式や不動産資産などに流れる効果に、期待できるとしている。
深尾光洋・慶大教授の提言とのこと。さらに

リチャード・クー野村総合研究所主席研究員は「継続的な政府支出は効果がある」との持論を展開した。
これに対しモルガンスタンレー証券のロバート・フェルドマン経済調査部長は「生産性向上につながらない需要喚起は負債が残るだけ」と構造改革の必要性を訴えた。
伊藤元重・東大大学院経済学研究科長は「高齢者が保有している金融資産を動かすことが必要」と説明。

住宅資金などとして子どもに資金贈与した場合に、課税を期限付きで免除する案を提言した。

内需拡大に関しては、翁百合・日本総合研究所理事が医療、介護、少子化対応のための環境整備が必要と述べた。


この四点ではモルガンスタンレーロバート・フェルドマンが正しいと思う。

その他の提言はこれまでよろしく「金融資産を動かせ」というもの。
なぜ動かすのか。動かす必然性のない消費、など起こりえない。


フェルドマンの指摘は正鵠を得ている。
「生産性向上につながらない需要喚起は負債が残るだけ」。
付け加えるなら翁百合・日本総合研究所理事の指摘する「医療、介護、少子化対応のための環境整備」。
これはあり得る。

需要喚起の誤謬(ごびゅう)


文脈として、

意味のはっきりしない公共投資はもう止める。

そのための廃県置藩ではないか。そして

高齢者に分布する金融資産は「高齢者のための消費」を促すこと。

少子化が進んで、あまり子孫に縁がないのなら、無理に住宅という形で継承させることもない。
その代り今の高齢者たちが思う「豊かな老後」に使うよう、安心して死ねるように環境を整えればいいのである。

「あの世」までカネを持っていきたい人間などいないのだ。

今の高齢者は、いや押し並べて国民を包む心理は「不安」である。

いつ何時、自分の会社がつぶれるかも知れぬ。
どんな企業とて安泰ではない。
年金頼みの高齢者などは言わずもがなだ。


そんな心理状態の人に対して「株やりませんか」とか「お金、使わないと課税しますよ」とかいってもまったく響かぬ。
却って警戒心を煽るだけである。
高齢者が、高齢者のこれからのためになることに投資する、その視点で「藩」を経営した藩主が栄えることだろう。


それにしても、早く現実的なプランに入ってもらいたい。


<記事全文:産経ニュースより>

経済危機克服へ「廃県置藩」 民間エコノミストらが秘策提言
経済危機克服のための有識者会合に参加したエコノミストや学識経験者らは16日、都道府県を廃止し、全国に300の藩を設置する「廃県置藩」や、不動産市場などの活性化に向けた「預金課税新設」などを提言した。

「廃県置藩」を強調したのは、中谷巌・三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長。中央省庁の機能や官僚を各藩に分散して地方分権を徹底し、本格的な地域おこしにつなげたい考えだ。


深尾光洋・慶大教授はデフレによる景気悪化を防ぐ必要性を指摘し、預金残高への課税新設を提案した。
課税を嫌った資金が株式や不動産資産などに流れる効果に、期待できるとしている。


リチャード・クー野村総合研究所主席研究員は「継続的な政府支出は効果がある」との持論を展開した。
これに対しモルガンスタンレー証券のロバート・フェルドマン経済調査部長は「生産性向上につながらない需要喚起は負債が残るだけ」と構造改革の必要性を訴えた。

伊藤元重・東大大学院経済学研究科長は「高齢者が保有している金融資産を動かすことが必要」と説明。住宅資金などとして子どもに資金贈与した場合に、課税を期限付きで免除する案を提言した。

内需拡大に関しては、翁百合・日本総合研究所理事が医療、介護、少子化対応のための環境整備が必要と述べた。