藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

著作の背景。

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論

著者の島岡さんに、さらにフォローしていただく。


もう書き尽くしたか、と思ったらそうでもなく。
ムクムクと、さらに思いが進む。


それは「著者の人となり」であり、「著者のここに至ったストーリー」に対してである。
興味を持った著作の書き手の「人となり」が気になるのはファンである読者の特権であり、まあ自然な欲求である。(と思う)


著書のプロフィールでは、

島岡要(Motomu Shimaoka)
Harvard(ハーバード)大学准教授。
大阪大学卒業後10年余り麻酔集中治療部医師として敗血症の治療に従事。
Harvard大学への留学を期に、非情に迷った末に臨床医より研究者に転身。
Mid-life Crisis と厄年の影響受けて、Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ。
現在はボストン小児病院でPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する。
2004年アメリカ血液学会新人賞を受賞。2008年にはハイランド・ベンチャーキャピタル起業家フェローシップを受賞し、BusinessWeekにとり上げられる。
専門は細胞接着と炎症。

「大体」分かったようで、いま一つ物足りない。
もっとその周辺が知りたい。
そうだ。
著者のブログみよう。


いまアーカイブに残っている一番昔の記事から。
ハーバード大学医学部留学・独立日記 第二部 三重大学医学部編 ... 2007年01月

米国ではふつう研究者はそのキャリアで、少なくとも2回は研究テーマを変更することを必要とされる。
1回目は博士号を取ったのち、研究室を移り新しい指導者のもとで、新しいテーマでポスドクをはじめ自分の知識と技術を広める。
2回目は独立して研究室を始める時であり、今まで指導者のもとで行ってきた仕事に別れを告げ、自分の新しいテーマを探求する。


(中略)


研究者がアカデミックな環境で生き残っていくためには、「変化」をmanageする能力が、サイエンスの能力と同様に重要であると思う。
私自信も「変化」に対する苦痛・恐怖と日々格闘しているので、今後も「変化」と研究者のキャリアについて取り上げていきたい。

もうすでにこのプログに書かれている内容は、「研究者の仕事術」でカバーされていた。
そして、著書の「はじめに」へと戻る。

(前略)
しかし、研究者がプロフェッショナル/エキスパートをめざす過程では、仕事の最大の報酬とは人間的成長なのです。
成長に伴いより大きな仕事に取り組むチャンスが巡ってくるので、決して楽になることはありません。
楽しいことも増えますが、同時に苦しいことも増えるのです。
これがプロフェッショナル/エキスパートとして働き・生きることの醍醐味なのです。(後略)

なぜそこに。


ブログのアーカイブを見る限り、大体2007年以降の著者の活動は本著作に表れているようである。
ますますそこに至る諸事情に興味が向く。

・医師を志すことになった動機
・思春期の過ごし方、興味のあったこと
・米国留学が与えた影響
・海外で働く決意、の理由


そしてそれらが、「自らの仕事の最高の報酬は、人間的成長である」という部分につながってくるのではないか。
今の「研究者の仕事術」に魅せられるほどに、そのルーツが知りたくなる、読者とはタチの悪いものである。


また自分のそうした欲求もさることながら、今思春期にある若い人たちには是非とも聞かせたい。
「大人の選択」を語れる「本当の大人」はずい分減ってしまっているような気がするから。


また著者のプロからそんなことが知れたらいいな、という一読者の読後感でした。