藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

大人の思惑は大人のために。


つい先日、インターネットのフィルタリングについて、出版社から取材があった。

「フィルタリングは是か非か」という、まあありがちなものだったが。

取材が終わって、ふと考える。

「フィルタリングが、はたして若者を「何か」から守れるだろうか」と。

自由の中で。


それこそ20年前、有害図書、とか猥褻図画、とかいわれたいたものも、今やネットの前ではそのカテゴライズが無力化している。
インターネットがもたらす便利さや生産性は、同様にいわゆる「青少年」にもその影響を避けえない。


ネットの普及をある意味嘆くのではなく、じつは「そういうこと」は若者の間では常に起ってきたことなのだ、と解すればそれほどの違和感は抱かないはずである。
大人たちは、自分たちが「その子供の世代だったころ」の感覚を忘れ、「子供」には「大人の世界のもろもろ」を見せてはならない、と考える。


がご多分にもれず。
実はその時にすでに「子供」は大人の世界の大部分の「におい」を感じている。
そして、大人が「アダルト向け」のような存在を「不自然なまでに子どもから遠ざけようとしている」ことも十分に察知している。

隠し事が一番の興味になる。


そこで、問題なのは現代のこと。
もう昭和初期のように、経済力とか、権力で「子供たちとの距離」を隔絶しておく時代は過ぎ去った。


良くも悪くも一般的なレベルでは「情報の秘匿性」は失われつつある。
特にパソコンとか、ネット上では昔のように「大人の子供」にアクセスの差異はなくなりつつある。


自分が十代のころから、いわゆる「有害図書・出版物」から子供を隔離する、という動きはあった。
だが、自分は「隔離される立場」から非常な違和感を感じたものである。
そして、その「タブー」が何者なのか、というのはむしろ当時の自分の最重要課題になった。


つまり。
大人たちが遠ざけようとするものは、それはそのまま「反力」となって、興味を引くものになってしまうのである。
しかも、大人たちが「子供への悪影響」を心配してのそういった措置は、当の子供たちにとってはほとんど「関係のないハードル」になり下がっているのも、自分が経験してきた通りである。


子どもたちは、大人が思うほど「実は幼くないのだ」ということを、時の大人たちはなかなか想像できないものなのである。


これからの子供への接し方。

そうして。
つまり「大人」が想像し、意図する「子供への規制」は実効せぬことが多い。
実は意識的には、子供の興味は大人の「はるか近く」にすでに達しているのである。
そこで大人のとれる態度はただ一つ。

子供にもまったく「大人同様」に接する。
というコミュニケーションの改善で多くの問題は氷解するだろう。

子供は、社会人経験の浅さとか、人間関係の経験では「子供」である。
だが大人たちの持つ機微とか、日常は見せぬ「暗部」について、誰よりも鋭く大人の顔色を読み、察知しているのは実は子供である。
これまでの出版物よろしく、ネットでの「若年層規制」のような話を聞く度、「実はそこに規制の本筋はないのではないか」と感じて仕方ない。


現実は恐らく「はるか先」を行っている。
大人たちが「なぜそれを有害と考えているか」とか「本当の姿はこんなことなのだ」ということを正面から表明するような機会を設けない限り、「現行の規制」はより「隠れた蛮行」を若者に促してしまうのではないか。


若者も、今も昔も「本音ベース」の会話を求めているのではないか、と今更ながらに思う。
少なくともネットのフィルタリングを不満に感じない若者はいないだろう。



子にフィルタリング、親の7割 小5と中2の保護者調査
携帯電話を持つ小学5年と中学2年の保護者の70%が、有害サイト接続を制限する「フィルタリングサービス」を子どもの携帯電話に導入させているとの調査結果を、日本PTA全国協議会がまとめた。
フィルタリング対策を強化した「有害サイト規制法」が昨年4月に施行され、利用率は前年の調査より13ポイント上がったが、相川敬会長は「7割はまだ低い。もっと利用してもらいたい」と話している。


調査は昨年11月、小学5年と中学2年の計3869人(回収率81%)と、その保護者3624人(同76%)が回答。
携帯電話を持っているのは小5が20%、中2が42%で前年とほぼ横ばいだった。
携帯電話を持つ子どもの保護者に聞いたところ、フィルタリング機能を「導入していない」は24%、「一度導入したが解約した」も4%いた。


機能を利用しない理由は、小5の保護者の44%、中2の保護者の59%が「子どもを信頼しているから」。
サービスを知らなかった▽お金がかかると思った▽導入方法が分からなかった▽面倒だった、という回答もあった。
解約の理由は、「子どもの希望で」「子どもを信頼しているので」が多かった。

フィルタリング機能は、携帯各社のサイトから無料で設定できるほか、販売窓口に持ち込めば対応してくれる。
規制法施行後は、18歳未満の利用者に携帯各社が機能を提供するよう義務化。
利用するかどうかは保護者が判断する。


フィルタリングには、安全なサイトだけに接続できる「ホワイトリスト」と、出会い系やアダルトサイトへの接続を制限する「ブラックリスト」の2方式がある。
調査では79%が違いを「知らなかった」と答えた。(見市紀世子)