藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自己出版の時代。


出版社を通さない創刊雑誌「AiR エア」が好調だという。

売り上げの分配はアップル社が30%、編集者・デザイナーが30%、著者が40%。「AiR」の場合、約3500部で採算が取れ、5千部売れれば原稿料が紙の雑誌並みになるという。

はて。
もっと低い採算点でいけそうなものだが、今後は記事単位に、小銭程度から買えるようなコンテンツも出てくるのだろうと思う。
いよいよ著作も「本」という単位だけでなく「コンテンツ・記事単位」のロングテールになるのだろう。
けれど結局「発言者の数」は飛躍的に増えても「質の高いコンテンツ」←つまり書籍、はこれまでとそれほど大差ないのではないだろうか。
恐らくきちんとした本は、編集者なしに、作者の思い付きではなかなか仕上がらないだろう。

一人の作家が、何年もかけて書きため、コツコツと推敲し、あるいは一定の編集をへて流通する。

そんな作品がゴロゴロと出てくるのが自己出版の時代なのかと想像する。
それでも今よりずい分楽しそうな気がする。

作家らの電子雑誌「AiR エア」 販売好調、宣伝に課題 
既存の出版社を通さず、作家の瀬名秀明さんら書き手が集って6月に売り出した電子雑誌「AiR エア」。
割安の先行版で早くも採算ラインをクリアし、7月26日には北川悦吏子さんの新作などを追加した正式版を発売した。
「こぎ出した先に嵐が待っているかも知れないが、手応えは感じている」と、執筆陣の一人で編集取りまとめを担当した堀田純司さんは話す。

出版社を抜く「中抜き」という形態が注目されたが、「それは本意ではない」と堀田さんは言う。
「出版不況で雑誌が減り、本の企画は名のある書き手に偏る。このままでは新人が世に出る機会がなくなると思い、電子の世界に挑戦してみた。『AiR』を小説、評論、エッセーなどをひとまとめにした雑誌形式にしたのは、ここから新たな書き手が出てほしいと思ったから」


堀田さんは漫画編集者からフリーライターとなり、書籍編集者としても『生協の白石さん』などを手がけた。
「今後、IT企業や芸能プロダクションなどが、出版社を介さず電子書籍を出そうとするだろう。
そうなると逆に、書籍の『品質管理』や法務、著作権処理などを担ってきた編集者や出版社の役割が再認識されると思う。
ただ、今のような大組織は維持できず、小さなユニットに細分化されるのでは」


「AiR」は、米アップル社のiPad、iPhone用に同社の配信サイト「アップストア」で販売。売り上げの分配はアップル社が30%、編集者・デザイナーが30%、著者が40%。「AiR」の場合、約3500部で採算が取れ、5千部売れれば原稿料が紙の雑誌並みになるという。
「実売印税方式で再販制度にも守られないというのは、怖い気もする。容赦ない資本主義の嵐に飛び込むようで」


アップル社の審査の結果、「販売対象は17歳以上」と年齢制限が付いた。
サイトの商品説明には「バイオレンス」「わいせつ」「アルコール、タバコ、ドラッグ」などが注意事項として挙がっている。

「紙の雑誌ならそんなことは考えなくていいが、今回は女性が肩を露出する挿絵はやめようとか、いろいろ気をつけた。商業出版だから何らかの基準があるのは当然。ただ、単一の基準で支配されるのは困るので、アップル以外の販路もあるのが望ましい」


課題は宣伝。
出版社のように、電車の中づりや新聞広告を出す資金力はない。
創刊は多くのメディアが取り上げてくれたが「それはご祝儀。次からは頼れない」。


代わりに期待するのがツイッターだ。
「こまめに情報発信し、編集者、著者、読者が意見をつぶやいたり、ひとの感想を読んだり。
それが『読書』の一部となるような、新たな本の読み方が生まれたら面白いですね」(小原篤