藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

支援を届ける力。

震災の一月後あたりからちらほら聞こえて来た話。
日経webより。

「支援のお金を上手く配れない」。

未曾有の災厄は「その後の支援網も重要なインフラである」という教訓を残した。
被災者、生存者の情報交換も重要だが、支援網については「その後数年間」も続くものである。

復興に向けて刻々と変わる現地のニーズをとらえきれないことだ。被災状況を自ら確かめようと飛び込んだ、ある企業のCSR担当者は「現地に足を運ぶたびに支援ニーズが変わり、なかなか方針を決められなかった」と漏らす。

せっかく富士通などIT大手が参画しているのだから、今ひとつ突っ込んだシステムを構築してはどうかと思う。
国の補助も出す大義名分も十分にある。

ただ記事本文にも示されているが、ITの「売ります買います」的な支援情報の交換だけではうまく機能しない。
肝心なのはソフトウェアである。
この場合は「企業の支援心」と「現場の要望」をマッチングさせるアドバイザリー業務になるだろう。

この度の経過を聞いていると、「企業が自社スタッフを被災地に派遣し、直接、支援を企画した」というケースが最も機動的で、上手くいっているようである。
その逆、日赤や有名NPOに丸投げ、というケースはお金が滞留したり、また小さなNPOに委託した物については使途のレポートなどが不十分のようである。

ただ、人が介在する「ソフトサービス」が必要だからといっても、システムの出番は大きい。
まずは「支援網全体の設計」だろうと思う。

支援ポータル

なにせ非常時である。
だけれど末端の組織である市区町村レベルから、「取りまとめ」をしないと支援と要望がスレ違うだろう。
町内会レベルの単位で、しかも「損傷している地域」を隣接した地域や規模の大きなNPOがフォローしながら、末端の状況を把握する連絡網が何よりも基礎となるだろう。
こうした連絡網が日ごろから整備できていれば、街の壊滅を防ぐことは無理でも、生存した人たちへの支援の焦点を絞ることは可能である。
そうして集めたものをBBSなどの掲示板方式でネットワークすればよいのだ。
国か県が支援のポータルサイトを運営しても良いだろう。

支援ポータルとして、被害状況、生存者情報、各地域の現況、支援サポートなどを統合し、「復興ポータル」としてはどうだろうか。

現在も、日本中で、あるいは世界中から支援のオファーが来ており、また「本当の復興へ向けて」といった動きも散見される。
まだ遅くはない、行政、とくに「地方自治」のリーダーシップを発揮するのは今ではないだろうか。

宙に浮いた企業の復興支援金、見えてきた課題

義援金」から「支援金」へ。東日本大震災では復旧から復興へ軸足が移る中で、企業が被災者の緊急支援として「義援金」を送るだけでなく、復興事業を応援するために被災地で活動する団体に「支援金」を拠出する動きが目立つ。経団連で被災地支援を手がける政治社会本部主幹の長沢恵美子さんは「中長期的にじっくりと我が社らしい支援を考えたい」といった先を見据えた相談が増えていると話す。阪神大震災の際には見られなかった企業の社会貢献活動の新しい形だ。


■支援金1000億円の半分が滞留
 三菱商事ヤマトグループソフトバンクは100億円を超える多額の支援金を元手に基金や財団を設立。復興支援コンサルティングを手がける藤沢烈さんは、こうした企業の支援金を合わせると「総額1000億円規模に上る」と推計する。支援金が被災地で有効に使われれば、復興を後押しする大きな力になるはずだ。

 ところが藤沢さんは「1000億円の半分近く、500億円弱の使い道が定まっていない」と漏らす。

 「仮設住宅を支援したいが、どうしたらいいか。支援金は3000万円ある」「事業展開するチェーン店で寄付を集めたが、納得できる寄付先が見つからない」――。日本財団CSR企画推進チームリーダーの町井則雄さんの下には、こうした相談が舞い込む。なかには「早く支援先を決めないと、決算に間に合わない」と焦る企業もあるという。

 なぜ企業の支援金が十分に生かされないのか。

 第1の壁として、有名な団体に支援金が集中した問題がある。震災直後に「迅速な支援」を打ち出した企業からの寄付は、知名度があり、社内決済を得やすい特定非営利活動法人NPO法人)や団体に集中。広報不足などから資金集めに苦労する団体が少なくない一方で、50億円も集まって十分に使い切れない団体も出ているという。多くの支援企業に埋もれて「顔の見える支援ができなかった」と苦い思いをした企業は、中長期の復興に向けた支援先選びに慎重になっている。

 第2に「我が社らしい支援ストーリーが描けない」という悩みもある。日本では企業の社会的責任(CSR)の文化が十分根づいていないところが多い。CSR担当者が2〜3年で異動し、欧米のように専門家が育ちにくい。支援方針が定まらないのに、経営陣から「早く支援先を決めろ」「そんな小規模なものでなく、大企業の我が社らしい支援を」と、短期で目に見える結果を求められると嘆く担当者もいる。「これまで100以上の団体の活動現場に足を運んで関係を築いてきたので、震災直後からすぐに連絡を取り合うことができた」(メリルリンチ日本証券シニアヴァイスプレジデントの平尾佳淑さん)といった外資系企業に比べ、経験も知識も人脈も不足している。

武田薬品工業は製薬会社らしい支援策として、ヘルスケア・カンパニーのトップが「元気を届けるアリナミンの1本1円、1錠1円を支援金にしよう」というアイデアを提案。年間売上高8億円を原資に5年間にわたってNPO法人などを支援する「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」が誕生した。だが武田のように「我が社らしさ」を打ち出せた企業は珍しい例だ。

 まだある。第3の壁は、復興に向けて刻々と変わる現地のニーズをとらえきれないことだ。被災状況を自ら確かめようと飛び込んだ、ある企業のCSR担当者は「現地に足を運ぶたびに支援ニーズが変わり、なかなか方針を決められなかった」と漏らす。政府や自治体の復興計画の遅れも響いた。「支援しようと準備した分野に第3次補正予算自治体予算が計上され、支援方針の組み直しを余儀なくされた」という声もあった。

 支援金を受け入れる側の課題も見えてきた。NPO法人をはじめとする非営利団体は、活動状況や会計処理に関する情報公開が不足するなど、組織として未成熟な場合も多い。被災地支援で注目されるNPO法人の1つ、NPO法人カタリバ(本部・東京都杉並区)もまた新たな課題に突き当たっている。

■まるで投資家のような質問

深刻な津波被害を被った宮城県女川町で7月に夜間学校「女川向学館」を立ち上げたところ、国内の企業だけでなく、海外の財団からも支援の声がかかり始めた。

 11月中旬、東京・六本木のゴールドマン・サックス証券(GS)の本社会議室で、GSの投資アドバイザーら7人とカタリバの理事が夜8時過ぎまで白熱した議論を交わした。GSが資金を提供するだけでなく、社員の専門性を生かしたボランティアとしてカタリバに知識やスキルの面でも協力しようというものだ。冒頭、カタリバ理事の岡本拓也さんはこう切り出した。「海外の財団から、まるで投資家のような質問を突きつけられている。1000万円寄付したら、何人の子にどんな支援ができるのか。社会にはどんな影響を与えられるのかといったものだ。ぜひ投資家の視点から海外ファンドレイジング(非営利団体が活動資金を集める行為)の戦略に助言してほしい」



 岡本さんは公認会計士で、外資コンサルティング会社から3月に転職したばかり。夏には海外経験が豊富な「海外ファンドレイジング」の担当者も迎えた。海外にも通用するNPO法人へと脱皮できるか、正念場を迎えている。12月中旬から岩手県大槌町でも他の外資系企業の支援を得て同様のプロジェクトを始める計画で、岡本さんは「英語での情報開示に力を入れる」と気を引き締める。

 被災地ニーズをつかみきれない企業と、情報発信力が限られるNPO法人。欧米では両者をつなぐ媒介として「中間支援組織」が根づいている。数多くのNPO法人の情報発信などを手助けする一方で、支援金を拠出する企業などとの間を仲介する。企業には「目利き」として信頼できるNPO法人を紹介する。日本でも日本NPOセンター(東京・千代田)やETIC.(東京・渋谷)、パブリックリソースセンター(東京・中央)といったNPO法人日本財団などが知られるようになってきた。企業が中長期的な復興支援を実りあるものにするためには、中間支援組織とうまく連携することも1つのカギになる。

 前述の武田薬品工業は「タケダ・いのちとくらし再生プログラム」を立ち上げる際、CSRシニアマネジャーの金田晃一さんが日本NPOセンターに「復興支援を長期で手がけたい。ぜひパートナーになってください」と依頼した。8億円もの資金を「生きたお金」にするには「現地のNPOを熟知していて、かつ高い知見を持つ中間支援組織の協力が不可欠。一企業では包括的な支援はできない」と考えたためだ。売り上げの一部を支援金とするため、株主や消費者にも説明責任が生じる。そのためにも専門家の力が必要だった。

■「中間支援」の重要性一段と

 キリングループの場合は、飲料1本あたり1円の売り上げを中心に総額60億円の支援金を拠出し、被災地を支援する「キリン絆プロジェクト」を3年間展開する。その最大の柱が本業との関連が深い農業や水産業の復興支援だ。2011年は農業復興に4億円を充てる。単なる再生でなく、復興に向けて何ができるのか。地元の農協幹部や農業改革に取り組む個人、国や県の農政担当者、東北大学の研究者などと対話集会を重ねた。関係者に声をかけて集めたのは、藤沢氏ら外部コンサルタントからなる「中間支援者」だ。



 「農業スキルに加えて経営学も含めた研修を実施し、次世代につないでいきたい」「全国の農業従事者をつなぐ機会としてはどうか」――。様々なアイデアが出るなか、初年度は中古農機具を全国から集めて修理し、被災地に届ける。支援事業のパートナーは公益社団法人日本フィランソロフィー協会(東京・千代田)。来年以降の出資テーマについても、外部協力者の力も借りて現地ニーズに耳を傾けながら探る考えだ。

 東日本大震災を機に、CSRを発展させたCSV(Creating Shared Value=共有価値の創造)と呼ばれる新しい動きも生まれつつある。本業とCSRを合わせ、本業を生かした支援活動を展開するものだ。ハーバード大マイケル・ポーター教授は「ハーバード・ビジネスレビュー」1・2月合併号で「これからはCSRからCSVの時代になる」と予測した。企業が事業利益を元手に社会貢献活動を実施するのではなく、企業の利益向上と社会的課題の解決を両立させて企業と社会がともに成長すべきだと説く。被災地支援は日本が抱える課題の解決につながり、ひいては新興国のBOPビジネス(低所得層支援ビジネス)にも応用できる可能性がある。

 富士通もCSVを模索する企業の1つだ。

 震災直後には、被災者の現状を調査して支援につなげるプロジェクトに、クラウドを活用した情報システムを提供。現在は宮城県石巻市で在宅医療を進める「祐ホームクリニック」をシステム面で支える。いずれも顧客管理システムとして活用していた技術で、これまでにも鳥インフルエンザ口蹄疫の被害状況の把握に応用した経験がある。

■支援金よりも本業生かした支援

 パブリックリレーションズ本部長代理の堀越知一さんは「中長期に支援金を出す予定はない。本業を通じて復興を支援する」と強調。医療・介護情報の集約、農業や水産業の流通システム構築など、町づくりにIT(情報技術)の活用を提案する。具体的には、被災220自治体のうち50自治体前後に導入を提案し、新たな地域モデルづくりを目指す計画だ。その先には新興国などへの輸出も見据える。12年度には専任スタッフ50人ほどを被災地に送り、自治体予算が足りない分は自社負担でシステムの構築に臨む。負担分としては「年間20億〜30億円規模の支出を見込んでいる」(堀越さん)という。

 支援と本業が結びつけば、企業も支援事業を継続しやすくなる。だが復興支援との接点をなかなか見いだしにくい業界もある。NPO法人パブリックリソースセンターの岸本幸子事務局長は「本業と支援、そのマッチングに最も力を入れている」として、企業ごとに支援プロジェクトをオーダーメードで作成する。ただ「現地で企画・立案・運営を担うプロジェクトマネジャーが足りない」と課題を提示する。

 本業と支援活動を融合させるCSVの試みは始まったばかり。企業の理解や活用が進み、推進する団体や人材が整えば、企業の復興支援金がより有効に被災地で活用されるはずだ。

(野村浩子)