私見だが、特に最近、関西に帰る度に思う。
何か東南アジアの異国に来たような気がするのだ。
原因は、行き交う人たちの体型、服装、そして「顔つき」である。
男性も女性も頬骨が高く、鼻が低め。
服装は派手目。原色多し。特に年配者。
若い人たちは、それなりにかなりお洒落なのだが、どうも上海あたりの都心にいるような感覚を覚えるのは自分だけだろうか…
それはともかく。
関西人と味覚の話。
「大阪はフグの消費量が日本一。フグ鍋には昔からポン酢が使われていて、そこから浸透したと考えられます。それに鍋文化が違う。東京は味を付けて煮込む寄せ鍋。関西は昆布だしの水炊きで、お供としてポン酢がよく使われます。その中でこだわりが生まれたのでしょう」
大阪がフグの消費トップとは知らなかった。(確かに安いですわ。東京に比べ)
それにしても、出汁文化の関西が、味の濃いきついポン酢をつけて食べてどうするのか。(出汁の味など消えてしまいませんかね)
それにしても思い当たる。
自分が。
学生時代には何にでもポン酢をかけていた。
トンカツも、豆腐も、むろん鍋や焼き肉はオールポン酢。
澄まし汁や白米にすらかけて食べていたこともある。
魚介類も。
よく周囲からは訝られたものである。
店の料理人さんはイヤな感じもしただろう。
多分自分はあの"酸っぱい刺激"の依存症になり、刺激がないと済まなくなっていたのだろうと思う。
今どきの冬の間は、週に一度は豚肉と白菜の一人鍋を催していて、特に最近は「豚肉食べ比べ」などをしている。(豚はなかなかに奥が深い)
タレはポン酢とゴマだれの半分半分になっている。
関西人なぜ「ポン酢」が好きなのか
大阪に赴任して初めての冬。生まれも育ちも大阪の友人から夕食に招かれた。献立は冬の定番「水炊き」。食卓に3本並んだポン酢のラインアップに驚いていると「普通やで。大阪人はポン酢にこだわんねん」。東京と大阪ではポン酢の種類や消費量に違いがあるようだが、それはなぜか。ポン酢事情を探った。手始めに近所のスーパーに向かった。ポン酢コーナーには20種類以上が並び、価格は200円程度から700円近いものまで。大手メーカー、ミツカンの「味ぽん」などのほか、地元の大阪府や兵庫県、かんきつ類の産地の徳島県や大分県で製造した見慣れない商品も多かった。
■家ごとに定番
「関東の標準的な店舗では15種類程度ですが、関西では20〜25種類置いています」と、全国で食品スーパーを展開するライフコーポレーション大阪本社の仕入れ担当者。関西では料理や好みに応じて使い分けるのが一般的で、品ぞろえが求められるという。ユズ果汁やダシなどが利いた濃厚タイプと、シンプルなタイプに分けると「関西は濃厚タイプが6割、関東は1〜2割。高くても『これやないとあかん』というポン酢が各家庭にあって、売れ筋にあまり変動はありません」と教えてくれた。
1本700円近いが根強い人気を誇る旭食品の「旭ポンズ」。大阪人に好まれる味の秘密に迫ろうと、八尾市にある工場に向かった。町工場のような建物の奥から水色の作業着を着た高田悦司社長が迎えてくれた。
同社がポン酢を発売したのは1967年。当時ポン酢は普及していなかったが、創業者が大阪のふぐ料理店「づぼらや」で出されたポン酢に目を付け、1年以上かけて開発した。味の決め手は徳島産のスダチ、北海道利尻産の昆布など厳選した食材だ。「うちのはスダチをふんだんに使うてますから、酸っぱいけどまろやか。親子代々ファンで、上京した子どもに送る人もおりますねん」
ポン酢へのこだわりはわかったが、経緯が知りたい。全国の食文化を研究する奥村彪生さんに尋ねると、明快な答えが返ってきた。
■購入額、関東の2倍
「大阪はフグの消費量が日本一。フグ鍋には昔からポン酢が使われていて、そこから浸透したと考えられます。それに鍋文化が違う。東京は味を付けて煮込む寄せ鍋。関西は昆布だしの水炊きで、お供としてポン酢がよく使われます。その中でこだわりが生まれたのでしょう」
ポン酢市場でシェア5割のミツカンは64年、当時の社長が水炊き店で出されたポン酢の味に感動して「味ぽん」の前身の商品を発売した。まず関西で売り出し、3年後に全国発売。ポン酢文化を広めた。現在でも関西の1世帯あたりのポン酢購入金額は、関東の約2倍という。
大阪でポン酢が売れる理由は他にもある。「東京は味付け文化、大阪は食材の味を生かし、味を補う文化。ほのかなスダチの香りと優しい酸味、カツオと昆布のうまみが混然一体となったポン酢は、まさに万能の調味料。焼き魚でも餅でも、何にでも合う。味にうるさい関西人が好んで使うのはそのためです」と奥村さんは解説する。
そういえば友人も「空揚げも、冷ややっこも、ギョーザも、ポン酢で食べたらおいしいやん」とうれしそうに話していた。きょうの夕食に合うポン酢を探しに、再びスーパーへ向かった。
(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)
[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2011年12月7日付]