藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本屋の実力。アナログの矜持。

ついに本屋のポテンシャルに日の当たる時代が来たようである。(かどうかはともかく、一聴に値すると思う)
本屋さんの"POP"は、その本屋さんにとってはずい分重要な営業アイテムである。

その店に通い慣れた客にとっては「当店店長のイチオシ!」とか書いてあると、普段は見ない写真集でさえ、お!と手に取ってしまうこともある。

書店員が売りたい本を選ぶ「本屋大賞」創設から約10年。
顔も知らない同士が賞をきっかけに、つながり始めた。書店の垣根を超えて、フリペやPOPを共有する動きが各地で進む。

行きつけの店の、客と店員の間の信頼関係が知らぬうちに出来ているのである。
書店にせよ、あるいは飲食店やアパレルにせよ、そうした「小さな信頼関係」というのは、商売にはとても大事なこと。
だが、これまでその「小さな誠意」はあまり広がることはなかった。
なによりもそうした出来事は「地域」に根差していたからだろう。

一方、ネットの世界ではロングテールよろしく、ネットの検索連動広告、インタレストマッチが幅を利かせている。
(実際、ごく簡単な"似たもののお勧め"とか、"過去の検索の集積の表示"などは、ぼんやりした店員よりはよほど効果があるだろうし)

それが変わりつつあるという話。
例えば「あるお店」で客の"心に刺さったPOP"が集められ、先行されて全国に配布される。
「小さなキラ星のようなPOPが、全国をかけ巡る」のである。
もう一書店の店員さんの思いつき、ではない。
まさに、書店という集合体の「本屋さんの逆襲」なのである。


アマゾン、危うし。

本屋さんの逆襲(4)「うちの店」の垣根超えて
「ご自由にお取りください」。四つ折りのコピー用紙が東京・三省堂書店有楽町店の書棚脇の箱に差し込まれている。書店員手書きの広告カード「POP」はおなじみになったが、こちらは持ち帰りできるフリーペーパー(フリペ)だ。

同店の佐々木貴子さん(30)は昨秋、飛鳥井千砂さんの小説「タイニー・タイニー・ハッピー」のフリペをつくった。登場人物の相関図をイラストつきで。
すると、1日約100冊売れた。「うちの店舗は、文庫1位で1週間200〜300冊。大ヒットです」
フリペは、神奈川県内の三省堂書店に勤める比嘉栄さん(35)が1年前、他の書店に呼びかけ、いまは関東から九州までの7〜8店舗間で交換するまでに広がった。
「自店発行のフリペは1カ月で50部なくなったが、他店発行も30部は減る」。フリペのために来店する人や、他店に置いてあったフリペを見て、発行元の店に本を買いに来る人もいたという。

書店員が売りたい本を選ぶ「本屋大賞」創設から約10年。顔も知らない同士が賞をきっかけに、つながり始めた。書店の垣根を超えて、フリペやPOPを共有する動きが各地で進む。

中原ブックランドTSUTAYA小杉店(川崎市)の長江貴士さん(29)は、自店で使うPOPをツイッターに載せ、他店でも使えるようにしている。「小さい店なので、うちの店だけでアピールしても広がっていかない。POPやフリペを共有して、面白い本を知ってもらって本好きを増やしたい」

そんなつながりが、この夏、一つの形になる。
5月末、東京都の啓文堂書店三鷹店の西ケ谷由佳さん(34)のもとにファクスやメールで、別のチェーン書店の店員が作ったオビの図案が次々と届いていた。

「胸せまる。ダメっぷり」(「海も暮れきる」)、「よさこいが見たくなる小説です」(「夏のくじら」)。企画した夏の文庫フェア「ナツヨム 2012」用のオビだ。

「夏の本屋は、出版社が企画した『夏の100冊』ばかりで、どこも同じ本しか並んでいない」。常連客の一言をきっかけに、書店発のフェアを思いついた。

知り合いの書店員や出版社員に呼びかけて推薦本50冊を募り、オビを書いてもらった。西ケ谷さんは「フェイスブックツイッターで互いにつながったことで可能になった」と話す。

「ナツヨム」は当初、啓文堂書店三鷹と多摩センター(東京都多摩市)の2店舗だけのはずが、ほかの店からも開催要望があった。結局、「ナツヨム」のオビは、北海道から広島まで少なくとも15書店に並びそうだ。(おわり)

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