藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

決着はいつ。

安倍政権になり、にわかに中央銀行の振る舞いについての報道が多くなった。
なぜなら、「日銀本流」の考え方が変わったからである。
前総裁の白川氏、というのはそのアカデミックなキャリアの中でも飛びぬけて優秀だったらしい。
そうした人が、官僚側でものを考えるのか、あるいはリベラルな「革新派」でものごとを捉えるのか。
まあ普通は保守サイドなのだろう。
用意され、約束された赤絨毯から、進んで降りて野生の草むらに分け入ろうとする人は滅多にいないものである。

「なぜ世間の仕組みが変わらないのか」ということの正解は分からなかったけど、銀行預金の金利がゼロに近く、しかし経済成長もなく、一時危機を迎えていた銀行のバランスシートだけは改善した、ということは日本人ならだれでも感じていることである。

先日中国の友人とそんな話をしたら、「日本人はまるで役人に飼いならされた羊のようだ」と感心していたが、さもありなん。

日経の記事を見るに、ここ十年で日本も米国もおよそ100兆円づつ、欧州も同程度に貨幣を"錬金"して凌いできたようだが、世界的な「多重債務」が破たんするのは止むを得ないことだと思う。
問題はすぐに市場は正常には戻らず、その「練金に巣食った人たち」が既得権益へしがみ付くことだろう。
巨額の債務は、棒引きにするか、長期の分割で返済するかしかない。
徐々に長期での返済が穏当だけれど、今のところ100兆円を取り戻せる算段は立っていない。
"(貯えは)「何もなかった」と思えばこれからは正しく暮らしていける"という精神状態に、先進国がいつ移行できるのか、が今世紀前半の見どころではないだろうか。
日銀の総裁人事も、そうした動きのとば口だという風に見えるのである。

【経済が告げる】編集委員・田村秀男 「白川日銀」莫大な負の遺産
2013.2.28 03:51
 国会承認手続きが順調に行けば、3月20日には黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が誕生するが、新総裁に引き継がれるのは白川方明(まさあき)総裁が築き上げた莫大(ばくだい)な負の遺産である。いったい、「白川日銀」とは何だったのか。
 日銀生え抜きの理論家、白川氏は京都大学教授時代(2006年7月〜08年3月)を除き、独立日銀の政策決定に深く関わり、日銀が理想とするインフレ率ゼロ%以下を達成してきた。いわば白川氏は「15年デフレ」の立役者で、本人もそのことを矜持(きょうじ)としているフシがある。
 昨年秋、安倍晋三自民党総裁が登場して日銀への大胆な政策転換を求め始めたとき、白川総裁は「後世、日本の金融政策を振り返った歴史家は、1990年代後半以降の日本銀行の金融政策が如何(いか)に積極的であったか、大胆であったか、あるいは革新的であったかとみると思います」(11月20日の記者会見)と言い放ったのである。
 「積極的」を「消極的」、「大胆」を「臆病」、「革新」を「伝統」に置き換えれば白川氏は極めて正しい。2008年9月のリーマン・ショック後、日銀が包括緩和政策なるものを始めたのは実に2年余後の10年10月で、柱は小口の資産買い入れである。以来、外部から金融緩和圧力が高まるたびに小出し方式で追加緩和してきた。チリも積もれば山となる式で、ことし末には100兆円を突破する見通しだ。対照的にリーマン後、米連邦準備制度理事会FRB)は資産を2倍、3倍と短期間で増やしてドル安、デフレ回避、株価回復に成功してきた。マーケット理論によれば円の対ドル相場の水準は、日銀資金発行残高をFRBのドル資金発行残高で割った値で落ち着く。09年秋、100兆円の日銀資金投入があれば、1ドル=100円が実勢レートになった計算になる。
 日銀は超円高を招き寄せた。小出し方式で国債を追加購入すると、外国の投機勢力は安心して国債を買うのでますます円高が進み、デフレ圧力が増す。消費者は物を買わず、企業は設備投資をしないので、景気は悪くなり、若者の就職難が起きる。
 日銀が積み上げた100兆円の資産は「黒田日銀」の足かせとなる。日銀のスタッフたちはすでに十分緩和していると言い張り、大規模な量的緩和論の「黒田総裁、岩田規久男副総裁」コンビを悩ますだろう。
 もう一つの難題は実質高金利に慣れきった金融界である。
 日銀は「事実上のゼロ金利政策」を標榜(ひょうぼう)しながら、金融機関が日銀に預ける超過準備に0・1%の金利を払っている。そればかりか、日銀はリーマン・ショック後、民間銀行の基準金利であるTIBOR(東京銀行間取引金利)が市場実勢金利を大幅に上回るのを知りながら、放置してきた。TIBORは住宅ローンや中小企業向け貸し出しの土台となる金利で、実体経済やわれわれの暮らしに影響する。銀行はこうして日銀の庇護(ひご)のもとに高めの金利で楽々と高収益を稼いできた。かれらを貸し出し増に駆り立てるためには、少なくても日銀当座預金金利をマイナスにするのが当然だ。
 いきなり直面する壁は白川流理論で染まった政策審議委員たちである。日銀政策は総裁、副総裁2人と6人の審議委員で構成される政策委員会の多数決次第だが、総裁でも投票権は1票分しかない。委員たちは与(くみ)した政策の失敗を認め、新首脳陣に全面協力すべきだ。
© 2013 The Sankei Shimbun & Sankei Digital