藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

今の常識を再考すること。

テーマはホルモン剤の服用の是非について、だがそれにしても高々この5-60年の生活の変わり方に驚いた。

昭和20年代では一人の女性が子どもを産む人数は約6〜7人、女性の平均寿命は昭和22年で54歳でした。妊娠と授乳を合わせて約2年間排卵が無かったことを考えると生涯の排卵回数はおよそ50回だったと言われています。

こんなに差があったとは思わなかった。
平均出生率が2を切る、という話題が出て久しいが、戦争で多数の死者が出た直後からみれば「産めよ増やせよの波」が一気に収束に向かっているのが分かる。
日本の文明の程度もあるのだろうと思うが、今は自然に「現状維持程度がよい」という無意識が日本人にはあるのかもしれない。
6-7人もの子供を一人で産み切る女性も大変だが、それを支える父親も大変な苦労である。
それが少数の子供を英才的に育てる、という風潮になっていったのはまさに社会の流れであり、成熟ということなのだろう。

著者の言うように「自然が一番」という自然信仰もたかだか数十年の環境の変化でガラリと意味合いが変わっているということは、

今の自分たちの環境と生活習慣、そして何よりも価値観を見つめなおす上で非常に参考になる要素であると思う。

自分の生活のスタイルとか、習慣とか、異性や家族との付き合い方とか、さらには人生観、死生観についても、もっと「違うアングル」から見てみることができるのではないだろうか。

あまりに固定化して「もうそんなものだろう」と思えることにこそ、発想の転換のヒントが隠れているのかもしれないと思うのである。
「常識は疑うべき」という非常に教訓的なお話であった。

ホルモン剤は「不自然」か
週末に家族で上野動物園に行きました。絵本でしかみたことのなかったゾウさんやキリンさんを間近で見た娘は、大きさに圧倒されて凝視していました。暑い日だったので熱中症予防に気を使いましたが、これからもっと暑くなるのかと思うと、しばらくは動物園より水族館がいいのかなと思います。

 先週の「自然の摂理ってなんだろう」に数々のコメントをありがとうございました。今回はまたも妊娠・出産・育児にはあまり関係ありませんが、「自然のホルモンバランス」について書いてみようと思います。
 「自然妊娠」「自然出産」同様に「自然なホルモンバランス」が一番良いと思っている人は多いのではないでしょうか。産婦人科外来を受診する患者さんに低用量ピルをはじめとするホルモン剤を処方しようとすると、初めは抵抗感を示される方は少なくありません。 「ホルモン剤は怖い」「がんになる」というような誤解については、副作用の程度や頻度、ピルはむしろ卵巣がんや子宮体がんのリスクを減らすということを説明すると理解してもらえるのですが、「ホルモンバランスを人工的にコントロールしていいのか」「自然なホルモンバランスがいちばんよくできていると思う」と考えられている場合には、少し時間を取ってお話しないといけなくなります。
 薬を飲んでいない時のホルモンバランスが「自然なホルモンバランス」だと考えている方が多く、それが不正出血や月経不順などの支障をきたしているならば、規則正しくストレスの少ない生活をするなどしてなるべく薬を使わずに正常な排卵周期にしたいと考えているようです。支障を来している程度によってはねばらない方がいいこともあるのですが、ここでは薬さえ飲まなければ自然なのかということを論じたいと思います。
現代の暮らしは「自然」なのか 昭和20年代では一人の女性が子どもを産む人数は約6〜7人、女性の平均寿命は昭和22年で54歳でした。妊娠と授乳を合わせて約2年間排卵が無かったことを考えると生涯の排卵回数はおよそ50回だったと言われています。
 現在は平均初産年齢が30歳を超え、出生率も低迷しており、生涯の排卵回数は約500回とその違いは実に10倍です。毎月排卵が起こり、子宮内膜が増殖して剥がれ落ちることを繰り返すことが、子宮内膜症、子宮体がん、卵巣がんの発症に関連し、未産婦や子どもの数が少ない女性を中心にこれらの病気が増えているのです。そして低用量ピルの内服はこれらのリスクを低下させます。
 自然であることがいいことだと漠然と考えている人も、そもそも現代女性のライフスタイルそのものがホモサピエンスとして自然なのか、と疑問に思うのではないでしょうか。「薬を飲んでいないありのままの自分のホルモンバランス」だけを自然だと考えるのはあまりにも近視眼的であるということが分かっていただけると思います。
 更年期障害に対するホルモン補充療法にしても、そもそも閉経後にこれだけ長生きするようになったことが「不自然」なのですから、あまり自然・不自然でものを言うより、メリット・デメリットで考えた方がよいように思います。
 ホルモン剤に限らず薬には作用と副作用があります。必要なものは使い、そうでないものは控える、それにつきます。「私は断固自然でいきます」という方は是非、20代から6人の子どもを産んでいただきたいと思います。