藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

発明の素地。

イノベーションは、突き詰めると確率のゲームだ。賢明な世界では多くのアイデアが開花するだろう。

アニマルスピリッツと呼ばれる「元気さ」は、たちまち

「個人の投機的事業がどれほど変革的なものになるかは当然判断が難しい。火星へのロケット発射や小惑星での採掘は、1492年以降のコロンブス交換に匹敵する方法で経済利用に向けた宇宙開拓へつながるかもしれない。もしくは、費用のかかる無益な試みとなる可能性もある。

という危険をはらんでいる。
要するに「発明とリスク」というのは隣り合わせであり、そこにチャレンジする人物が現れるかどうか、ということが重要なのだろう。
その意味では個人が宝くじに挑戦するのと変わらない、熱く、しかし無謀な賭けへの情熱が数あってこそいつか「大発明」へのつながりになるのだろう。
記事ではそれがシリコンバレーの富豪につながればよし、ということだが「事業にかける情熱」というのはつまりそうした投機的なことも含んだ情動なのである。

起業にはある種の狂気が必要だ、とはよく言われるものの「その意義」については単なる無益な試みではない、ということを若者には分かってもらいたいものである。
予め勝敗の分かっているところにイノベーションなどないのである。

[FT]シリコンバレーの富が発明の母に(社説)
2013/8/19 14:00
(2013年8月19日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

発明家トーマス・エジソンは、発明に必要なものは「優れた想像力とがらくたの山」だけだと考えていた。多くの発明品を残した米国の発明家であり起業家でもあった同氏にとってはそれで十分だった。同氏は「がらくた」を白熱電球など現代生活に不可欠なものに変える能力により19世紀に財産を築いた。だが、最近のような財政難の時代には、最も大胆なイノベーターは(変人とも呼ばれているかもしれないが)かなりの財産も持っている可能性が高い。

■投機的事業は富豪が考案
シリコンバレーにある民間の研究所で温められているアイデアを1つのカテゴリーに収めることは難しい。その中には、試験管で培養したハンバーガー肉を作り出すプロセスや、小惑星から金属を採掘する計画が含まれる。「ガリバー旅行記」のジョナサン・スイフトが風刺した、キュウリから太陽光を採取する装置を超えるものもある。これらの投機的事業に共通するのは、これらがすべてシリコンバレーの富豪が考案したものであるということだ。彼らは現代インターネットの中心にある一般向けアプリケーションを開発したとき、技術的大躍進により財産を集めた。

こうしたアニマルスピリットにニーズがあると主張する向きは多い。2年前、米経済学者のタイラー・コーエン氏は著書「大停滞」の中で、欧米の経済成長減速はイノベーションの停滞の結果だと主張した。過去の繁栄は未利用地の開拓や普通教育の導入といった「もぎとりやすい果実」を貪ることによって成り立っていた。コーエン氏は、これからの世代にはさらなるインスピレーションが必要だと言う。

■富をイノベーションを起こす力に
知識の最先端でのイノベーションは常に資本を求めて争ってきた。だが、新たなアイデアの必要性は従来式の資金調達先が縮小しつつある時代に生まれる。電気自動車ベンチャーテスラ・モーターズなどを創業したイーロン・マスク氏や米グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリン氏といったシリコンバレーの富豪がこのギャップを埋められるのであれば好都合だ。個人の投機的事業がどれほど変革的なものになるかは当然判断が難しい。火星へのロケット発射や小惑星での採掘は、1492年以降のコロンブス交換に匹敵する方法で経済利用に向けた宇宙開拓へつながるかもしれない。もしくは、費用のかかる無益な試みとなる可能性もある。

個人のインスピレーションは常に称賛に値する。ただ、人類は賭ける対象を広げることもしなければならない。ブリン氏やマスク氏などは個人的な冒険を追求するとき、がらくたとアイデアだけで取り組まざるを得ない若き日のエジソンのような者のことも考えるべきだ。イノベーションは、突き詰めると確率のゲームだ。賢明な世界では多くのアイデアが開花するだろう。