藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

予想の本気度。

金融のプロが読む予想が、もっぱら大外れし、市中の投資家の話が現実的になる・・・
マーケットの話題ではしばしば取り沙汰される。
自分も長らく金融経済の教育講座に出ていたが、様々なテーマの講義の直後に「で、先生円高?株安?」と聞く生徒に講師が汲々としていたのを思い出す。

とかく商売人たちは"結果だけ"を求めるけれど、「それ」を当てるのは博打のようなものなのだろう。
日経の記事も「プロの躓き」と題して「円・ドルダービー」と題しているが、それを専門に取り扱っているプロにも難しい事柄を、むしろ素人が同レベルで予想の当落にに参加していることのほうが「お門違い」であろう。

プロスポーツ界での評論よろしく、どれだけ緻密に予想し、仮説を立てても、様々な外的・内的要因で結果は大きく変わってくる。
そうした現象は自分たちの日常生活でもよくある出来事で、事前に熟考を重ね、考えを廻らすことは大事だが、「結果が大きければ大きいほど、正確に右か左か」を言い当てることは難しい。

「円・ドルダービー」は巷の話題としては面白いが、本物の賭けにするには複雑すぎるテーマなのである。
けれど、結果を楽しみにワイワイ酒盛りする、というのは楽しいことだし、むしろそんなものだ、という割り切りがあれば楽しめるのではないだろうか。

プロは何につまずいたのか 円・ドルダービーを振り返る

2014/3/29 7:00
日本経済新聞 電子版
 なぜプロの予想は当たらないのか――。毎月末の締め切りで1カ月先の円相場と株価の予想を読者が競う円・ドルダービーと日経平均ダービーに、アナリストら「市場予想のプロ」が参戦して、まもなく1年がたつ。振り返れば残念ながら、プロの成績は読者に比べて芳しいとは言えなかった。様々な情報とツールを駆使して相場の先を読むプロは、なぜか、基本的に素人である読者の予想にかなわない。そこには、なにか相場の予想に潜む深い事情があるのではないか。プロはどんな予測をし、何につまずいたのか。まずは円・ドルダービーから、その謎を探ってみよう。


 素人が、常にプロに勝っていた。それが、2013年3月末から14年2月末まで計11回(13年12月末は休戦)、読者とプロが円相場予想を競った結果だ。

 円相場の予想を応募した読者の中で、最も実際の相場に近い値を当てた優勝者の予想をプロの予想と比べてみると、いつも優勝者のほうが現実に近い予想を出していた。さらに、11回中5回は現実の相場と同じ値を当て、ピタリ賞となった読者がいた。

 読者の中に、たまたま突出して優れた予想をする人がいたのだろうか。

 そんなことはない。読者の予想を平均してみても、プロに勝っている。11回の予想結果を、読者平均とプロ5人で比較すると、それぞれが最も実際の値に近い1位を獲得した回数は読者平均が5回(グラフAでは応募者)。それに対して、5人のプロは最高でも3回にとどまる。やはり、素人は強かった。

 まず、この1年に実際の円相場はどう動いたのか思い出してみよう。

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 13年の東京市場は1ドル=87円台で始まった。「アベノミクス」で、日銀の大胆な金融緩和に対する期待を背景に円安・ドル高基調となり、それが春ごろまで続いた。その後、米国の金融緩和の縮小による新興国経済への不安や、米財政問題を受けて、リスク回避の動きが強まり、値動きは不安定となった。年末から年明けにかけて1ドル=105円台まで円安が進んだが、米国の寒波やウクライナ情勢への懸念で、再びドルの上値が重い展開となった。

 こうした中、読者の予想の平均値は、実際の円相場をよく見通したといっていい(グラフB)。実際の円相場と予想値がどれくらい大きく違ったかを表す「乖離(かいり)幅」を毎月計算してみると、最も小さかったのは13年5月末。実際の相場は4月末の1ドル=97円82銭から1ドル=100円62銭まで円安・ドル高が進んだ局面だ。このとき読者平均は1ドル=100円69銭を予想。なんと、わずか7銭の僅差だった。


 プロは3人が円高を予想していた。円安とみていた2人のうち、乖離幅が最も小さかったニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミスト(1ドル=98円50銭を予想)でも2円12銭、実際の相場とずれた。全体的に、読者の平均よりも乖離幅がかなり大きい。

矢嶋康次氏
矢嶋康次氏

 なぜ、そんなことになったのか。矢嶋氏は、大きな理由として、月初に発表された米国の雇用統計を挙げる。5月の雇用統計は市場予想を上回って堅調だった。これを受けて円安・ドル高が勢いよく進行した。矢嶋氏は「円・ドルダービーは毎月末に翌月の月末終値を予想する。しかし実際は、翌月初めの雇用統計で月間の相場が決まってしまう場合が多い」として「どちらかというと円相場よりも、米雇用統計を当てに行く感じだった」と、ため息をついた。

 読者平均は1年間に5回、1位を獲得したが、プロ5人の中で1位になった回数が最も多かった人は3回だった。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストだ。

上野泰也氏
上野泰也氏

 上野氏は「方向性としては円安で、大きく円高には振れないだろうという姿勢で臨んだ」と振り返る。勝利した3回とも、すべて円安方向の予想を出していた。とはいえ「この1年は一気に動いてピタッと止まる『ストップ&ゴー』の繰り返しで、リズムがつかみにくかった。モメンタム(勢い)に左右される相場だった」と、予想の難しさを明かす。

深谷幸司氏
深谷幸司氏

 「相場の予測は極めて困難だった」と実感するのは、FPG証券の深谷幸司社長だ。「日銀の金融緩和への過剰な期待と、投機的な円先安観の高まりが、円安・ドル高を後押しした。これが難しくなった背景だ」と分析する。その上で「昨年末の段階で、米金融緩和の縮小により円安・ドル高が調整局面を迎えることを的確に予想できれば、年初以降のドル低迷を予想できたのではないか」と、悔しさものぞかせる。

 プロはそれぞれ、世界的なマネーの動きから為替を読み解くのに苦しんだ。岡三証券の保科雅之グローバル金融調査部長は「昨年の年央を過ぎて以降、米金融緩和の縮小による新興国市場からの資金逃避の懸念が出てきた。波乱材料をどう読むか、苦労した」。

保科雅之氏
保科雅之氏

 予想のタイミングそのものに悩む人もいた。円・ドルダービーでは、1カ月先の相場を予想する。これが、プロには意外に困難な課題のようだ。JFXの小林芳彦社長は「1カ月先の予想は、インターバンク(銀行間取引)出身者にとっては難しい」と言う。そもそも、プロの仕事は1カ月先のマーケットを当てることではないというのが、その指摘だ。「15秒前に見方を変えて意思決定するのがディーラー。予想と違っても、相場の波の中で利益を上げるほうがうれしい。当てにいくより、いかに早くマインドチェンジするかが大切だ」(小林氏)

小林芳彦
小林芳彦

 予想値と実績の「乖離幅」を基に、いわば「間違いの年間合計額」を計算してみた。読者平均は累計17円91銭。これに対して、プロで最も乖離幅が小さいみずほ証券の上野氏は、累計22円95銭だった。プロが読者に5円以上の差をつけられて負ける結果となった。

 累計の乖離幅、1位の回数ともに読者平均に敗北を喫したプロ。とはいえ、5人合わせれば、1位になった回数は11回中6回となり、読者平均より多い。4月からはプロの参加者が増える。これからの1年は、プロが底力をどう見せつけるか、その奮闘ぶりが注目される。圧倒的に強かった読者も油断は禁物だ。

 プロと一緒に円相場の予想をする円・ドルダービーには、誰でも参加できる。4月末の予想の応募締め切りは3月31日。上位10位に入ると、最高1万円の図書券を進呈する。