藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ゲームを凌駕せよ。

若者のスマホゲーム中毒が問題になっているという。
ネットワークに常時繋がっているおかげで、ゲームソフトと一人で遊んでいるのと違い、中毒性が非常に強いという。
嘆かわしい、と言うは易しだが、自分も若ければ「そっち」に入っていただろうことを思い出す。

三十年前。
まだ「ゲーセン」が出来始めたころで、繁華街に出かけ、いちいち百円玉を投じ、という手間があったのにあんなに流行っていたのである。
あの「ゲーセン」が持ち運べるようになったならそりゃ中毒にもなるか。
時代は常に陰と陽、悪い文明も併せ持ってしまうものである。

帰宅後や休日は一日中ゲーム漬けだ。体力が戻るまでは、ほかのゲームをしている。A介は休日が最高に楽しくて充実しているという。「ほかのゲームが一通り終わると、最初のゲームがまたできるようになっている。最高に効率がいい」。

思考停止である。
「ゲームができないとイライラして周りのものを破壊したくなる」
なんと怖い発言だろうか。
まさに中毒。

試しに麻雀ゲームなどをするサイトに接続してみると、深夜でもその混雑ぶりに驚く。
何千・何万という人が、別々の場所にいて、スマホやpcの前で黙々とゲームに取り憑かれている様子を想像すると気味が悪い。
ラスベガスのカジノというよりも阿片窟を覗いたような気がする。

こうした"刺激物"はいつの時代にも形を変えて存在するものだが、興味のある子供たちに「禁止令」を出してもなかなか届かない。
むしろ「もっと面白いもの」を積極的に教えてあげないと、と思う。
ゲームよりももっと複雑で、時間の使い甲斐のある本とか、映画とか、音楽とか、習い事とか、学問とかを知らないのは若者の不幸である。
大人はそうしたことを伝える責任があるのに違いない。

スマホゲームにどっぷり ID乗っ取りアイテム横取り
ソーシャル新人類の不夜城(9)

2014/6/24 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
ITpro
 いつでもどこでも、どんな時でも。スマートフォンスマホ)の普及は、これまでリビングで閉じていたプライベート空間を、学校や電車の中など公的な空間にまで拡張させてしまった。その弊害のひとつが、急成長を遂げているソーシャルゲームだ。手が空けばところかまわずゲームに興じるのは当たり前、中には友人のアカウントを乗っ取ってアイテムを奪う事件も起きた。今や「不夜城」と化したソーシャルメディアから、子どもたち守るにはどうしたらいいのか。その処方箋を、元小学校教員でIT(情報通信)ジャーナリストの高橋暁子氏が解説する。

スマホがあればいつでもゲームに興じられる(写真はイメージ)
スマホがあればいつでもゲームに興じられる(写真はイメージ)

 電車に乗って辺りを見回すと、ほとんどの乗客がスマートフォンスマホ)を操作している。利用しているのはゲームかソーシャルメディアだ。

 普段持ち歩くスマホを使って、無料でゲームが楽しめるのは実に魅力的だ。多くの大人そして子どもたちが、ソーシャルメディアとゲームが一体化したソーシャルゲームに時間を取られ、これに縛られた生活を送っている。

 急速に成長しているソーシャルゲームだが、従来の専用機で遊ぶゲームに比べてとてもシンプルで単純なものが多い。開発の敷居が下がった一方で、中毒性は高くなっている。

 多くのゲームは友達同士が交流して協力する必要があり、友人関係がかかわるため、なかなか途中でやめられない。また希少性(レア度)の高いアイテムは利用者の所有欲求や承認欲求を刺激するが、それらを手に入れるにはアイテムを購入する必要がある。アイテム欲しさが高じて、不正アクセスなどにより他人のアイテムを奪う例も出現している。

 ソーシャルメディア関係のトラブルは女子に多いが、ゲーム関係でトラブルが起こるのは圧倒的に男子が多い。一口にゲームの問題といっても、その中には高額課金、長時間利用、人間関係など様々な問題が絡んでいる。

■「いつでもどこでも」で中毒患者が増加

 中高生の間で数年前まで多かったのは、パソコンを中心としたオンラインゲームの問題だ。だが、パソコンに向かい続ける形のオンラインゲームの時代はスマホの普及とともに下火になっていった。スマホを使えば、いつでもどこでも無料でゲームができるようになったからだ。

 「学校に行くのはゲームの体力が復活するまでの暇つぶし」と高校2年生のA介は言う。最近のスマホゲームは、ゲーム内のキャラクターの体力がなくなると、復活してゲームを再開できるまでに時間がかかる仕組みになっている。

 A介は、ゲーム内のキャラクターの体力が戻ったら誰がいてもどこにいてもゲームをする。それがA介の最優先事項なのだ。「回復するまでの時間はもう体で覚えてる。回復したのにゲームができないとイライラして周りのものを破壊したくなる」という。

 たとえ授業中でも、ゲーム内の体力が回復したらゲームをする。誰かと話していても構わずゲームをする。A介の生活はすべてがゲーム中心だ。「だってせっかくゲームができるようになったのにもったいないでしょ」。

 A介が得意げに見せてくれたゲームの画面を見ると、A介のハンドル名がランキング上位に食い込んでいた。帰宅後や休日は一日中ゲーム漬けだ。体力が戻るまでは、ほかのゲームをしている。A介は休日が最高に楽しくて充実しているという。「ほかのゲームが一通り終わると、最初のゲームがまたできるようになっている。最高に効率がいい」。

■保護者に隠れてお金をつぎ込む

 A介はゲーム内の課金サービスも利用している。「小遣いやバイト代をもらったらすぐにコンビニで、全額(電子マネーの)WebMoneyにする。(クレジットカードを使った課金をしていないので)親はゲームにお金を使っていないと思っている」と言っていた。

 「うちの子に限って、ゲームにお金をつぎ込んではいない」と思っている親は多いかもしれない。通常、ゲーム内課金のサービスを利用するにはクレジットカードなどが必要だ。ではクレジットカードを自分で持てない子どもは、どのように課金サービスを利用するのか知っているだろうか。

 コンビニの一角に、カードがずらりと並んでいるのを見たことがあるだろう。ここには、A介が使っているWebMoneyをはじめ、多種多様なカードが並んでいる。これらのカードは全て年齢確認や本人認証などがなく購入できるため、ゲーム内で課金サービスを利用したい未成年ユーザーが多く利用している。

セブン-イレブン・ジャパンの取り扱いプリペイドカード紹介ページ。コンビニでは各種プリペイドカードや電子マネーを気軽に購入できる
セブン-イレブン・ジャパンの取り扱いプリペイドカード紹介ページ。コンビニでは各種プリペイドカードや電子マネーを気軽に購入できる

 「まさか子どもが…」と思う保護者は、Q&Aサイトを覗いてみよう。課金サービスを使う道を探る未成年からの質問であふれている。回答からWebMoneyiTunesカード、Google Playカードなどの存在を知った未成年は、保護者に隠れてコンビニに走り、プリペイドカードや電子マネーを入手して、課金サービスを利用しているのだ。

WebMoneyのホームページ。コンビニで年齢確認などはなく購入でき電子マネーとしてネットで使える
WebMoneyのホームページ。コンビニで年齢確認などはなく購入でき電子マネーとしてネットで使える

 ゲームでの、未成年への高額課金が問題となったため、現在ではサービスごとに年齢で利用できる月額利用料に上限が設けられるようになった。具体的には以下のようになっている。


 ただし最初の設定で年齢を偽ると、この対象からは外れてしまう。利用料に制限が付くことを嫌がり、年齢を高く設定した子どもの話を聞いたことがある。上限があると言っても、「月額1万円」ともなると保護者は十分に高いと感じるだろう。

■友達のアカウントを乗っ取る

 ゲームサイトを介して、友達同士の犯罪行為も発生している。しかも低年齢化が進んでおり、中高生だけでなく小学生がアカウント乗っ取り行為をして、補導、書類送検された例もある。まったくの第三者からの不正アクセスやアカウント乗っ取りにより有料アイテムが奪われる事例もあるが、子供たちの場合、自分の知り合いや友達をターゲットとする例が少なくない。

 コミュニティーサービスとゲームが楽しめ、小中学生に人気が高いAmebaピグでは、以下の手口で聞き出したアカウントに不正アクセスする事件があった。仲良くなったユーザーとチャットしていて、「アメG(アメゴールド。ゲーム内仮想通貨)を増やす裏技を教えるけど設定が必要。説明が難しいから(やってあげるから)、IDとパスワード教えて」「限定アイテムをプレゼントしたいが、(あなたのアカウントに)ログインしなければできない。IDとパスワードを教えて」と持ち掛けるのだ。

Amebaピグでは他のユーザーとチャットができる。この機能を使ってIDとパスワードを聞き出し不正アクセスする事件も発生している
Amebaピグでは他のユーザーとチャットができる。この機能を使ってIDとパスワードを聞き出し不正アクセスする事件も発生している

 こうしたアナログな方法でIDとパスワードを聞き出した後、相手のアカウントに不正ログインする。さらにIDやパスワードを変更して本来のユーザーがログインできないようにした上で、有料アイテムなどを奪うのだ。

 「『無課金が来た』とバカにされたことがある。無課金だと(買えるアイテムが限定されるため)可愛くなれない。課金アイテムがほしかった。もっと部屋もアバターも可愛くしたかった」――。以前に不正アクセス未遂で補導された女子中学生に話を聞いたときの理由がこれだった。

 本連載でこれまでに取り上げてきた承認欲求が、課金アイテムの入手に向かい、それが高じて不正アクセスでほかの人のアイテムを奪うという行為につながったのだ。子どもたちは不正アクセスを悪いこととは思わず、ましてや犯罪行為であるとは理解していない場合が多い。こうした未熟さが、事件につながる行為に子供たちを走らせてしまう。

■まだ残る10代の高額課金トラブル

 約1年前の2013年4月、消費者庁は消費者トラブルが多発するソーシャルゲームなどについて「消費者が実行すべきポイント」を公開した。その中の情報によると、契約者の年齢層は30代が33.2%と最も多かったが、10代以下(未成年)も21.6%と比較的高い割合を占めていた(図1)。

図1 契約者の年代 消費者庁による相談実態。契約者は10代以下も高い割合を占める 出展:消費者が実行すべきポイント 〜「ソーシャルゲーム」、「口コミ(サイト)」、「サクラサイト」について〜
図1 契約者の年代 消費者庁による相談実態。契約者は10代以下も高い割合を占める 出展:消費者が実行すべきポイント 〜「ソーシャルゲーム」、「口コミ(サイト)」、「サクラサイト」について〜

 相談内容を見ると「高額利用・返金など」が35.4%とトップ(図2)。そのうち「未成年者取消」は5.4%、「高額利用・高額請求(未成年)」も11.1%とかなり高い割合を占める。

図2 相談内容 「高額利用・返金など」がトップ。「未成年者取消」「高額利用・高額請求(未成年)」もかなりの割合を占める 出展:消費者が実行すべきポイント 〜「ソーシャルゲーム」、「口コミ(サイト)」、「サクラサイト」について〜
図2 相談内容 「高額利用・返金など」がトップ。「未成年者取消」「高額利用・高額請求(未成年)」もかなりの割合を占める 出展:消費者が実行すべきポイント 〜「ソーシャルゲーム」、「口コミ(サイト)」、「サクラサイト」について〜

 ピークとされる2012年前半と比べるとやや減少傾向にあるが、利用金額については、「10万円以上100万円以下」が全体の36.2%で最多と、依然として高額課金者が多かった。まだ子供たちを対象とした高額課金問題は全て解決されているわけではない。進行中の問題であると理解しておいたほうがいい。


高橋暁子(たかはし・あきこ)
 ITジャーナリスト、情報リテラシーアドバイザー。SNSなどのウェブサービス、子どもの携帯電話利用をはじめとした情報モラル教育、電子書籍などに詳しい。元小学校教員であり、昨今の教育問題にも精通している。本や記事の執筆のほか、携帯電話やSNSなどをテーマに講演、セミナー、監修、アドバイザーなども手がける。近著は『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)、『ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条』(共著、マイナビ)。