藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

見たいものは何だろう。


世界でも比類なき血液型占いが好きな日本人。
遺伝子占いは、もう必ず「当たる」を予感させる。

ある立食パーティで、口角泡を飛ばして「血液型論」に興じる日本人を見て外国人が相当驚いていたのを見たことがあるけれど、そういう反応を見ているにつけ、日本人は「傾向分析」が大好きで、しかも人間を"一人一人"ではなく"かたまり"で見たい人種なのだとつくづく思う。
どだい、「一人一人違う顔を持つ」という風に物を見ない。
○○業界の人は、とか
△△会社系の人は、とか
もっと顕著なのは□□地方、◇◇県の出身と聞くだけで、もう性格はある種のステレオタイプに割り振られているようだ。


1万円からの遺伝子検査 体質の「弱点」あらわに
2014/4/22 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 自分の遺伝子に潜む、がん、生活習慣病のリスクや個人の体質──。これらを調べる遺伝子検査を誰でも受けられる時代がやってきた。2014年4月には、1万円で自分が「がん体質」かどうか調べられるサービスもスタート。現状の検査で分かることや問題点、検査の選び方、近未来像を明らかにする。
 1万円で自分の遺伝子を調べて「がん体質」かどうか分かる。そんな個人向け検査サービスが、2014年4月に始まった。
 手がけるのは「music.jp」「ルナルナ」などを運営する大手IT(情報技術)企業エムティーアイの子会社、エバジーン。「DearGene」(ディアジーン)の名称で、遺伝子解析サービスを提供する。
 自宅で唾液を取って送ると、胃がん、肺がん、食道がんなど8種類のがんに関わるといわれる遺伝子を調べて、傾向とリスクを報告する。「市場調査では、1万円ならば自分の遺伝子を調べたい人が多く存在する」とエバジーン社長の秋田正倫氏はニーズの高さを期待する。
 同年1月には東大出身者が立ち上げたベンチャー企業ジーンクエストも、遺伝子検査サービスを新たに始めた。特筆すべきは検査項目の多さ。糖尿病、脳卒中、高血圧症から花粉症、男性型脱毛症、ニコチン依存や記憶力、忍耐力、甘み摂取傾向に至るまで、約200項目の病気リスクや体質を分析できる。
 2014年は日本でも、個人向け遺伝子検査が身近になるとみられる。背景にあるのは遺伝子解析機器の進歩による検査コストの大幅な低下だ。現在、人間1人が持つ全遺伝子(ゲノム)ですら10万円程度で調べられる。健康診断並みの手軽さで誰でも遺伝子を調べられる時代がやって来たといえる。
■遺伝子を知れば「弱点」が分かる
 一般的な健康診断では、血圧やコレステロール値などを測って病気の兆候を調べる。だが、がんや生活習慣病は、個人の体質に由来する部分も3割前後あるといわれている。
2013年に検査に使う解析機器の価格が急落。以前は数十万円した全遺伝子(ゲノム)解析コストが大幅に下がった
 そこで、個人ごとの遺伝子の僅かな違い(遺伝子型)を調べて「あなたの心筋梗塞の遺伝的リスクは平均よりも1.3倍高い」など、健康診断からは分からない自分の体質と病気の遺伝的リスクを解明するのが遺伝子検査だ。
 2013年、女優のアンジェリーナ・ジョリー乳がんの遺伝子検査を受けてがんになる可能性が高いことが分かり、予防のために乳腺を除去した。一方、日本の主な個人向け検査は、遺伝が主な要因となる重大な病気は検査していない。がんでも、生活習慣が発病の主な要因となる病気のみを調べている。
 とはいえ、病気になりやすい遺伝子型があることが検査で分かれば、今後の生活を改善する強い動機づけになる。「運動や食事の改善も、遺伝子情報を知る人のほうが長く続ける傾向が強い」(遺伝子検査会社サインポスト社長の山崎義光氏)。
メタボ気味の記者が実際に2種類の遺伝子検査を受けてみた。直前の健康診断ではコレステロール値が高く、遺伝要因も疑っていたが、実際には遺伝的リスクは低いとわかった
■予期しない遺伝子リスクが明らかに
 個人向けの遺伝子検査には、検査キットを使って自宅で調べ、ウェブサイトで検査結果を確認できるものと、病院や個人経営のクリニック、歯科医院などで受けられるものがある。
 実際に編集部の記者(36歳、男性)が2種類の検査を受けてみた。直近の健康診断の数値は総コレステロール値が249、LDLコレステロール値が159とメタボの危険性が見られた。これらの値を見て、「遺伝要因もあるのでは」と疑っていたところだ。
 だが検査の結果、コレステロール異常に関わる遺伝リスクは低いことが分かった。食事や運動などの生活改善に取り組めば、コレステロール値を下げられる可能性が高いわけだ。
 一方、検査では「PON」「一酸化窒素合成酵素」などの遺伝子型を持っていることが分かった。これらは血管内の活性酸素を増やし、動脈硬化を進みやすくする要因だ。またマラソンなど激しい運動をすると血液の流れが悪くなる可能性があるため、ストレッチやヨガなど静かな運動を選んだほうがいい、という指摘もあった。
 別の検査では、年を取ると失明の原因ともなる「加齢黄斑変性」の遺伝リスクが高いことが分かった。発症倍率(オッズ比)は、最もリスクが低い人に比べると3.85倍だ。ただ結果を詳しく読むと、記者と同じ発症リスクがある遺伝子型を持つ人が日本人の40〜49%はいることも分かった。必要以上に気に病む必要はなさそうだ。
 このほか、血栓肺気腫など、予期していなかった病気の遺伝的リスクも比較的高いことが判明。健康や生活習慣を考え直すきっかけとなった。
 検査では、髪の太さや記憶力、痛みに対する敏感性、寿命など、体質のさまざまな遺伝的特徴も分析された。ただし、こちらは心当たりがある分析(例えば検査結果の通り、耳あかのタイプは湿型)もあれば、今は実感がない分析もあった。興味深いが、参考情報程度に捉えてもいいのだろう。
もう一方の遺伝子検査では、加齢黄斑変性血栓肺気腫などの遺伝的リスクが比較的高いことが判明。ただし、同様の遺伝子型を持つ日本人は数十パーセントおり、気に病むほどのリスクではなさそうだ
■検査・分析の質は玉石混交
一般の遺伝子検査では、個々人の遺伝子の僅かな配列の違いである遺伝子型を検査。研究論文などのデータを基に、その遺伝子型にどの程度の発症リスクがあるかを算出する
 こうした遺伝子検査が、病気のリスクをすべて明らかにできるわけではない。例えば肥満に関連する遺伝子は300個以上見つかっているが、多くの検査で調べる肥満遺伝子は3〜4個しかない。病気のほとんどは複数の遺伝子や生活環境が複雑に影響し合っており、解明されていない部分も多い。検査結果は、現時点の研究から分かる“傾向”だと思ったほうがいい。
 検査結果の質にもばらつきが大きい。根拠となる研究論文を示して、病気になる確率を慎重に示す検査もあれば、たった1つの遺伝子型から「あなたは○×△の病気のリスクがある」と断定する検査もあるという。
 現状、日本では遺伝子検査に関する法規制がなく、「頭の良さが分かる」など科学的根拠が明確でない検査もある。つまり、やった者勝ちの状況なのだ。「気軽に受けたものの、結果が正しいかどうか判断できず、不要なサプリメントなどを買わされるケースもある」と北里大学大学院医療系研究科教授の高田史男氏は警鐘を鳴らす。
 そこで、経済産業省主導の研究会が検査のルール作りに乗り出した。分析に利用する研究論文の信憑性にレベル付けをするなどの案が出されており、今年度中にはある程度のガイドラインが出される見込みだ。
遺伝子解析技術の進歩に合わせて、新しい検査サービスが次々に登場している。目立つのは検査の低料金化と、検査項目の大幅増加だ。一般向けで国内初となるがんの遺伝子検査「ディアジーン」は、1万円を切る戦略的な料金設定に注目が集まる。従来の検査とは桁違いに多い約200項目を検査するジーンクエストのサービスも今年始まった
■将来は「全遺伝子で1万円」
 遺伝子検査を受けるときには、「どの遺伝子を調べたのか」「判断の根拠とする論文やデータは何か」「同じ遺伝子型を持つ人は人口の何パーセントいるか」などが明記されているサービスが望ましく、検査結果を見るときもその点をチェックしたい。
 例えば、病気のリスクを評価する基となる研究論文は、欧米人の遺伝子を調べたものが主流。だが、発症リスクは人種による差が大きいため、「日本人に合った解析結果を知るには、同じ日本人や東アジア人を調べた論文やデータベースを使っているほうが望ましい」(遺伝子検査大手、ジェネシスヘルスケア遺伝学研究所所長の佐藤バラン伊里氏)。
 検査結果の意味が分からないときに電話などで問い合わせができる業者かどうかも、サービスを選ぶ判断基準の一つになる。
経済産業省の調べでは、国内で遺伝子検査を受け付ける企業やクリニックは740以上あり、現在も急増中。ただ肝心の遺伝子検査は専門の検査機関に委託する業者が多く、パッケージや価格が違っても検査内容は同じケースも少なくない。また、サービスの質は玉石混交で、粗雑な検査、分析がなされる危険性もある。そこで検査を選ぶ際に、上記の項目についてチェックしておきたい
 現在は多くの課題があるが、北里大学の高田教授は「ルール作りが進めば、遺伝子検査はさらに進歩する」と話す。というのも、人間の全遺伝子(ゲノム)を検査する速度やコストはさらに下がる。数年後には1人分のゲノムが数分間で解析でき、コストも1万円程度で済むようになると予測されている。そうなれば、数十万人規模のゲノムを解析・比較でき、より正確な病気リスクの解明が進むとみられる。
 近い未来には、遺伝子検査と健康診断の結果を照合することで、病気のさらなる予防に活用できる可能性が高い。日本人で初めて、自分のゲノム情報を実名公開した慶應義塾大学先端生命科学研究所所長の冨田勝氏は、「ゲノム解析によって個人の体質が明らかになれば、病気を治療するときに、その人の体質に合った薬を効果的に投与しやすくなるだろう」と予測する。
 民間でも「検査結果を基に、スマートフォンスマホ)やウエアラブル機器が個人の食事や運動を指導する」など、遺伝子検査を起点とした新たな健康サービスが盛んになるとみられる。IT企業などのさらなる市場参入も予想され、この分野は今後注目の的となるはずだ。
(ライター 根本佳子、日経トレンディ 荒井優、写真:近森千展)
[日経トレンディ2014年4月号の記事を基に再構成]