藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

起爆と継続の矛盾。

糸井さんの対談より。

スタートアップに必要な人々と、
スケールアップに必要な人々と、2種類の人々が、状況に応じて必要なのだ、と。

さらに盲点が。

会社を起業するときに役立つ長所というのは、
あとで短所になってしまいますから。

起爆剤的に物事を始める「爆発力」。
それがその後の「継続」には邪魔というか、「異質なもの」になることはしばしば経験している。
むしろ"短所"に!

今までも起業とか経営とかについての書物や講演や語りを数限りなく聞いてきた。
分かってきたのは「こうすればいい」的な解法はなく、「経営って限りなくオリジナルでユニークなもの」なのかも、とか
その「百人百態」な中でも何か経営哲学的な「思想」が必要なのではないか、ということくらいである。
(つづく)

起業のスキルと成長のスキル
糸井
お話をうかがっていると、
この6年間、ハブスポットは
とても順調に成長してきたようですが、
逆に、これは予定外だったぞ、とか、
ちょっとうまくいかなかったな、
みたいなことがもしもあれば
ぜひ、聞いてみたいです。

ブライアン
もちろん、たくさんありますよ。

ひとつ、とても驚いたことを挙げましょう。

創業当時、私と直接仕事をしていた
中心的なメンバーが8人いました。

その8人のうち、いま何人が
ハブスポットで働いていると思いますか?

糸井
‥‥ひとり?

ブライアン
正解です(笑)。

糸井
へぇー、そうですか。

ブライアン
それは非常に驚いたことです。

つまり、こういうことだと思うんです。

スタートアップの時代に必要とされる人と、
会社が軌道に乗って成長していくときに
必要とされる人は、だんだん変わってくる。

それは、決してその人の能力がないとか、
そういうことじゃなくて、
必要とされる質やスキルが変わってくるんです。

それが自分にとってはとても驚いたことだった。

糸井
ああー、なるほど。

創業当時、そういうことになるとは、
想像してなかったわけですね。

ブライアン
ぜんぜん。

糸井
会社をはじめたとき、
それがバンドのようであると思ったのかな。

ローリング・ストーンズのように。

ブライアン
うん、そうですね。

長く続くロックバンドみたいに思っていた。

糸井
そしたら、違ったんですね。

ブライアン
違ったんです。

その後、ある教授が説明してくださったんです。

彼らが変わってしまったのではなくて、
スタートアップに必要な人々と、
スケールアップに必要な人々と、
2種類の人々が、状況に応じて必要なのだ、と。

デイヴィッド
CEOとしてのあなたは、どちらの人ですか?

ブライアン
やはり、創業者ですから、
スタートアップに必要なタイプの人間で、
軌道に乗った会社を成長させるためには、
もっと学ばなければいけないと思っています。

アメリカには、重役や役員が
日常的にやるべきことを指導する
Executive coach」という人たちがいるんですが、
そういう人を雇って、
レーニングしているところです。

糸井
危機感を持っているんですね。

ブライアン
そうですね。

会社を起業するときに役立つ長所というのは、
あとで短所になってしまいますから。

スタートアップのときは、
自分自身ですべてをコントロールして、
決断もすべて自分で下す。

それが、自分にとっても会社にとっても重要で、
大きな長所でもあるんですが、
会社が成長するにつれ、逆に短所になってしまう。

糸井
うん、うん。

それに気づかないままの人も
たくさんいるでしょうね。

ブライアン
まぁ、私の場合は、自分で気づくだけでなく、
社員や、いろんな人から
フィードバックをもらいますから(笑)。

糸井
でも、それをきちんと受け入れるのが
すごいことだなと思います。

さっきも言いましたけど、
自分はインターネットのネイティブじゃない」
という認識もそうですし、いまおっしゃった
かつての長所が短所になる」ということも、
会社のために、非常に冷静に、客観的に、
自分をコントロールしているように思えます。

どうしてそんなふうにできるんでしょう?

ブライアン
‥‥できているかなぁ(笑)。

糸井
デイヴィッド、友だちから見てどうですか?

デイヴィッド
彼はきちんと変わってきたと思います。

たとえば、起業してすぐのころ、
彼は会社についてなんでも知っていました。

いま、会社でなにが起こってる?」って訊くと
なんでも答えることができた。

それから数年が過ぎたころ、
同じように質問すると、
あの部署でなにが起こっているのか
ぜんぜんわからないんだ」と答えるようになり、
彼はそれに対してすごく
フラストレーションを感じているようでした。

ところが、いま、彼は、
会社のすべてを知らないことに対して、
かならずしもすべてを知る必要はない」
というふうに感じているんです。

まるで、ある種の悟りを開いたような感じで。

糸井
つまり、信じて、任せられるようになった。

ブライアン
たとえば、ゴルフみたいな感じなんですよ。

私は、ゴルフの先天的な才能はぜんぜんない。

それで、レッスンを受けたりして、
まあまあのスイングができるようになった。

でも、たぶん、多少ギクシャクしている。

天性の才能じゃないけど、まあ、ましになった。

そこにお金もかけたし。

リーダーシップというのもそれと同じで、
私は生まれつきの才能はないので、
それをコーチングで一所懸命それを学んでいる。

つまり、天性の性分としては、
すべてを自分でコントロールしたい」んです。

それを一所懸命抑えて、
セルフコントロールするようにしてるんです。

だから、できているといえるのかどうか。

糸井
でも、結果的に、できてますよね。

自分を客観的に律して、
こうあるべきだ」というところに
向かって動いている。

ブライアン
そうですね。

改善しようと思って、努力はしています。

私は、いくつも会社を経営しているわけではなく、
ハブスポットがはじめて経営する会社です。

CEOになったのもはじめてです。

ですから、それを努力してやろうとしてる。

糸井
やり遂げていると思います。

よく学んで、たくさん努力して、
いってみれば、「優等生」ですよね。

でも、あえて言いますけど、
あなたは、もともとはそんなに
優等生」じゃなかったんじゃないか
という気がするんですけど。

ブライアン
そうですね(笑)。

自分をコントロールしてますよ、やっぱり。

糸井
で、それはね、
いつの間にか社長をやっているぼく自身と
けっこう似ているような気がする(笑)。

ブライアン
ハハハハハ、そうですか。

糸井
なんだろうね、それ。

で、本来のじぶんと違うからといって別に
フラストレーションを
抱えてるわけじゃないんだよね。

ブライアン
はい、不満があるわけじゃない。

だから、状況を受け止めているんですよね。

瞑想のとき、鼻から息を吸って口から吐いて、
というように。水が流れるように(笑)。

糸井
そうそうそう。

だから、じぶんに訊きたいようなことを
ブライアンに訊いてるんだね、さっきから。

ブライアン

デイヴィッド
私から見ると、ふたりともすばらしいと思う。

価値のある組織をゼロからつくりあげて、
いまも大きく成長させている。

私は創業時代にハブスポットの
社外役員になりました。

それ以外にもいくつかの会社の
アドバイザーをしていますが、
基本的には本を書いたり講演したりして、
ひとりでやっているので、
ふたりのことをほんとうに尊敬します。

私にはとてもできない。

糸井
たぶん、デイヴィッドは、
ブライアンがやっているのをすぐそばで見て、
自分のことのように満足しているんだよ。

だから、ブライアンとは別のことが考えられるし、
的確なアドバイスも送ることができる。

デイヴィッド
たしかに、会社の成長を近くで見てきて、
けっこう満足しています。

いい立場にいるな、と思います(笑)。

ブライアン

糸井
いってみれば、F1のドライバーと、
ピットでマシンを直すメカニックですね。

別々の才能と視点が必要ですけど、
レースをするうえでは、一体じゃないですか。

デイヴィッド
ああ、たしかに。

ブライアン
うん、そう思います。
(つづきます)