藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

まだ中小企業の時代

 
*[ウェブ進化論]市場はこれから。
技術が優秀だと言われ続ける日本の中小企業だが、こんなところにもビジネスチャンスがあったという話。日経産業より。
抽象零細企業が人手不足で、ニーズがあぶり出されてきた格好だ。
スタートアップのネクスタ社は在庫管理や設備の監視などを自動化してクラウドで提供するという。
社長はあのキーエンス出身の三十代。
そう聞くだけで、あらゆる中小企業にニーズが散らばっているに違いない、と思う。
大手が提供する一般的なシステムにはパッケージという概念がなく、オーダーメードが大部分を占める。簡単なシステムでも特定の顧客企業向けに新規に作ることが多く、どうしても価格が高くなりがちだ。
日本のソフトウェアは30年前からこう言われているが、未だに体質は変わっていないらしい。
クラウド全盛時代には、まだこれから「真正面のシステム開発」が広がっていると思う。
こういったアプローチから「匠の技の伝承」にもITが活躍できることを強く願う。
 
ネクスタ、中小の製造現場にデータ取り入れ抜本改革

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

システム開発スタートアップのネクスタ(大阪市)は人手不足に悩む中小製造業向けに、在庫管理や設備監視などを自動化できるクラウドサービスを提供している。NEC富士通など大手企業も同様のサービスを提供するが、高額で中小工場には導入が難しい場合も多い。ネクスタは安価に導入できるサービスで、悩める中小企業を助けようとしている。

 
複雑な調合のアナログ現場をシステムで効率化する

あまりにアナログな現場

ネクスタの永原宏紀社長は2015年、ある化粧品工場を見て目を疑った。「数千種類の原料や分量の計量を、まだ目視確認で続けているのか」。あまりにアナログな現場は、永原氏の予想をはるかに超えていた。
 
この工場では数トン単位の分量で原料を混ぜ合わせる工程があるが、種類や分量を1つでも間違えば数百万円単位の損失が出てしまう。とても見過ごせない事態なのに、手作業でミスが起きやすい現場が放置されている。それは、なぜなのか。
 
「大手が提供するシステムの導入コストが高すぎることと、顧客である製造現場のITリテラシーの低さが原因」。永原氏は工場自動化が進まない理由を、こう分析する。中小メーカーの工場では、多くの作業を人間の勘に頼る昔ながらの状況が続いているという。
 
「人口減に伴ってシステム化の需要は必ず出てくる」。永原氏はこう直感し、17年にネクスタを設立した。工場の在庫や生産設備、原料調合などを管理するクラウドサービス「SmartF(スマートエフ)」を中小工場などに提供している。
 
工場がネクスタの生産設備の管理システムを導入すると、生産ラインの稼働時間と停止時間を集計してモニターでリアルタイムで確認できる。
 
生産ラインの多くは何らかのトラブルで停止する。稼働状況をラインごとに即座に把握して停止原因をいち早く把握すれば生産性を大きく改善できる。大手企業が提供するシステムは1000万円を超えることも珍しくないとされるが、ネクスタは初期費用を15万円程度に抑えた。
 
ここまで価格を抑えられた背景には共通化の工夫がある。大手が提供する一般的なシステムにはパッケージという概念がなく、オーダーメードが大部分を占める。簡単なシステムでも特定の顧客企業向けに新規に作ることが多く、どうしても価格が高くなりがちだ。
 
永原氏は過去にキーエンスに勤めて独立した「卒業生」だ。2000社以上の製造現場を見て回り、500件以上のシステム導入を手掛けた実績を持つ。その膨大なノウハウをベースに開発したのがスマートエフだ。ITに不慣れな中小メーカーのスタッフでも使いやすいように、シンプルに設計してある。
 
中小工場では今後も人手不足が続くとともに、熟練工の高齢化が進んでいく。多くの作業を自動化できるサービスの潜在需要は大きい。

 
永原社長は町工場の人手不足をシステム化で支える

キーエンスでの経験を生かす

永原氏は09年に同志社大学を卒業し、工場自動化に不可欠なファクトリーオートメーション(FA)機器を扱うキーエンスに入社した。「営業力を身につけたい」という希望が企業選択の決め手だったという。
 
希望通りに営業担当に配属されたが、入社直後は思うように成果が出せず「最初の1年は挫折を味わった」(永原氏)。特に顧客の新規開拓で苦労した。スロースターターだった分だけ顧客の潜在需要を限界まで考え抜く日々を過ごした。
 
この日々は無駄ではなかった。顧客が抱える潜在的な悩みの探り方などを徐々に身につけ、入社3年目には所属事業部のランキングで全国1位に上り詰めた。
 
その後はキーエンスを退社し、実父が経営するシステム会社で5年間システムなどの営業以外の業務を経験する。2社での幅広い経験を経て、ネクスタを起業した。
 
「知っていますか。実はビー玉を作れる工場は日本にもう数カ所しか残っていないんです」。永原氏は神妙な面持ちで語る。彼を起業へと突き動かしたのは、キーエンス時代にも見た日本の製造業の深刻な状況。なんとか挽回しなければならないという思いは強い。
 

「日本の中小製造現場はすごい」

「日本の中小製造業の現場が持っている技術力はすごい。なくなるのは本当にもったいない。システム化で日本の製造業を守れる存在になりたい」。多くの「キーエンスOB起業家」と同様に、日本の製造現場を立て直そうとしている。
 
それを実現するには製造現場に多い「システムがないと使いづらいが、何とかなる」という思い込みを解消するための丁寧で根気強い説明が重要になる。
 
(大阪経済部 千葉大史)