15世紀の今。

宇宙旅行はSF作家の専売特許ではなくなった。
15世紀には多分、今の宇宙進出と同じくらいの案件だったはずの宇宙開発は、今現実のテーマになっている。

当時、スペインやポルトガルの領主は決して冗談ではなく「海の向こう」への進出を応援していただろう。
今「宇宙」への進出を、自分たちはどの程度の気合いで受け止めるべきなのだろうか。

科学はずっと進歩し、宇宙のリアルな姿も理解できているはずの自分たちにも、結構「近未来的」な話題になってしまっている。
過去の地球の勢力図にもならい、これからの宇宙を「侵略」と考えることはないと思うが「新大陸」に向けての心構えがいよいよ必要な時代になっているのではないだろうか。

あまりに広く、かつ遠い宇宙と今の自分たちはどう対峙していくのか。
そんなテーマは、国同士の確執の話をしているよりはよほど楽しい。

宇宙開発、陰の主役は金融
1980年代にSF好きの10代だった筆者は「宇宙」と聞くと、宇宙飛行士やロケット、異星人、そして英国のSF作家アーサー・C・クラークの小説を想起した。
今連想するものといえば、政府系ファンドやベンチャーキャピタル(VC)、それにゴールドマン・サックスなどの米金融大手だ。
読み間違いかと思う必要はない。米商務省は今月12日、宇宙探査・開発をテーマに重要会議を開いた。宇宙ごみデブリ)やロケット発射、全地球測位システムGPS)に関してだけでなく、年金基金に対して宇宙関連企業への投資をどう促していくかについても活発に意見が交わされたのだ。
アナリストの間では、現在はおよそ4000億ドル(約44兆5000億円)の世界の宇宙産業の市場規模が2040年までに1兆ドルを超すとの見方が多い。従来、宇宙開発の旗振り役は政府だったが、ロス米商務長官はこれからは民間が成長を主導すべきだと述べた。

そのために商務省は規制を緩めて起業家の参入を促し、VCやヘッジファンド、政府系ファンドからの投資だけでなく、年金マネーまでも呼び込もうとしている。
ロス氏は筆者に「宇宙産業には今、革命が起ころうとしている」と語り、ゴールドマンや米バンク・オブ・アメリカなどが最近、このテーマで専門の調査チームを立ち上げたことを指摘した。
民間資金の活用を掲げる裏で、トランプ米政権が科学研究予算の削減を求めていることに納得がいかない科学者もいる。科学者を官公庁へ送り込む運動を組織する非営利団体「314アクション」などは、政府内に「科学戦争」が起きていると断じているほどだ。
ロス氏らは、米国には仮説段階の科学研究をまず公的資金で支え、その後に起業家らが投資して、成長と技術革新を引き出してきた歴史があると説く。

問題は1回限りで終わること
事実、宇宙産業でも既にこうした動きが出ている。英実業家リチャード・ブランソン氏の宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックの有人宇宙船が13日、宇宙空間への試験飛行に成功した。一方、米アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏は商業衛星の打ち上げ事業に乗り出している。
こうした新規事業の特徴は個人の宇宙旅行だけでなく、ロケットの再使用や標準化も目指していることだ。ロス氏は「連邦予算は先端科学の案件に配分すれば有効に使われる。問題は案件が1回限りで終わることだ。現在、ロンドン―ニューヨーク間をボーイング747が定期運航しているが、飛行ごとに機体の設計変更が必要ならそう頻繁に往来できないだろう。再使用などの概念が極めて重要になっている」と話す。
宇宙関連の新規事業が黒字化するかどうかはまだわからない。最近の地政学的な緊張の高まりで、どんな影響が出るかも不透明だ。米国と中国が一段と敵対するようになれば、両政府とも安全保障を意識し、自国の宇宙産業への介入を強めるだろう。米ホワイトハウスは既に宇宙が戦争の新たな最前線になっていると言明した。
今ならまだ、クリスマスにおもちゃのロケットかクラークの小説を贈ればSF好きの子どもは喜ぶ。様々なマネーが最後の未開拓領域として宇宙を捉える今、関連企業の株価に連動するインデックス投信への投資も検討してもいいかもしれない。

By Gillian Tett
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