藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

梅田望夫に気をつけて(内田樹 拝)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

逆から見て気づく

ブックマークを含め、「ウェブ時代をゆく」は書評が多い。
(ひょっとしてweb史上では最多ではないか)


はてなスター」をもらったついでに、書評群を見てみるとあるわあるわ。
はてなブックマーク - ウェブ時代をゆくに関するumedamochioのブックマーク

しかしこの本は構造化の達人、が「目いっぱい分解し」ロジックを組み立て、「共通言語」で書かれた本である。


「ここが大事」と抜き書きするならともかく。また
「ここには賛成できぬ」と指摘するならともかく。


「ここは実はこういう意味で……」という「解説組」の人の書評がのき並み「著者の原文」より分かりにくくなっているのには苦笑した。

気をつけよう。梅田望夫の文章はヘタに解説せぬほうがよい。(恐)

ただ書評の中には、著者の論点をさらに深く抉るようなものもあり、これが2.0なのだな、とも感心した。
しかし。
芸術で、「優れた作品は簡潔である」とはよく言うものの。

「ちょっといいセンスの部屋じゃないか」という印象だったものが、
実は「ドイツのトップデザイナーがありとあらゆるデザインや機能を考え抜いて作っていたものだった」
そんな気分だ。


使ってみて分かるドイツ製のボールペン、みたいな。←ちょっと違った
(関係ないけどステッドラーの200円の蛍光ペンはとても使いやすい。ファンである。)


これからの梅田望夫


しかし、一体どこまでゆくのか。
ウェブ時代をゆく」の全体を思い返して思う。
おそらく渾身、の作。


そんなにホイホイ続編がでるはずもない。
だが待て、そう言えば。

あと一年くらい続くだろう忙しい時期を何とか乗り越えて、特に「ウェブ進化論」で始まったことに区切りをつけるための三冊の本を書く仕事を早く終えて、また短篇小説を一日に一篇読む暮らしに戻りたいと思う。

2007-04-06 - My Life Between Silicon Valley and Japan


やられた。
すでに地雷は仕掛けられていた気分。
まだ「あと二冊」出るらしい。


もちろんこれも何かの「ロールモデル」と「構造化」の所産だろう。


孤高だ。


ロールモデル思考法」は著者自身の、これまでの、「仕事と正面から向き合う方法」の総括である。総括、というよりは「要諦」か。

そして

これは将棋とかテストとか何か「競う」分野ではないから、この「高速道路」では大渋滞は起きない。その意味では高速道路というより「高速運航法」だろうか。


みんなが「自分の好き」を頼りにその理由を「構造化」し、
「いろんなお手本」を見つけて生きて行くというのはいいことだ。


渋滞もない。けれど、

ロールモデル思考法」のようなロールモデル(お手本)、を
もっと教えてくれ。


と読者は言い出すだろう。


読者とは勝手なものだ。
勝手に興奮して、増長する。

永遠の登攀(とうはん)

でも「先頭を行く人」というのはそんなものなのだろう。
昔、IBMの友人が「日本企業の(IBM互換)製品も、質は高いよ」という発言に対し、

それはそうだろう。我われのすぐ後を付いてきているのだから。


我われは違う。
道のない先頭を走っている。
その「360°を見ながらサバイバルする力」は甘く見ないほうがいい。

と言ってたのを思い出す。


著者と読者の「まったく新しい関係」はまだ始まったばかりだ。


孤高の「構造化の壁」を一人登るクライマー・梅田望夫が見えた。