藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ラジオか配信か。

数年前、まだアップルの音楽配信が出始めたころ、"これからはダウンロードの時代になる"と喝破した同僚がいた。
その時は「そりゃまあそうだろう」くらいにしか受け止めていなかったが、こういうことなのかもしれない。
クラウドもついに巨大化し、本物の「download era」がやってくる。
英国の配信会社"spotify"がそれらしい。(後掲)

自分も最近はインターネットラジオ、と呼ばれている「宣伝のない、聞き放題のコンテンツ」を常習している。
数十を超えるジャンル別のチャンネルと、全部で数百時間を裕に超えるコンテンツは、気分に合わせた音楽を聴くには満足である。

だが、流れる曲はランダムであり、作品や演奏者の指定はできない。

ネットラジオなら当たり前である。

夢の所有方式

ラジオから流れてくる意外な曲に新鮮さを感じ、耳を傾ける。
そんなことがラジオの良さだろうか。(ただ今Joan Baezの歌う、素朴なアベマリアが流れてきた♪)

一方、正反対の欲求が「自分の好きなアーティストの作品やカバー曲を好きなだけ聞けたら」である。

もう"ベートーベンのピアノソナタとバイオリン系の協奏曲と交響曲を24時間聞いてやろう。
しかも演奏者別に"とか、"ノラ・ジョーンズのアルバムを最新のものからデビューに遡って聞いてみよう"とか、「所蔵しているならでは」の聴き方が実現したなら、これは革命的である。
自分もコツコツ買い貯めたCDをi-Podに入れていたが、ハードディスクが損傷してそれきりにしている。
たかだか数百枚のCDしか持っていないが、改めて入れなおす気にはなかなかならない。
"もし1600万曲が詰まったi-Podが、月々800円($9.99)で使い放題"なら…これを使わない手はないだろう。
ダウンロードの時代は今年が幕開けになるようである。
ネットの本当の恩恵というのは、新しい段階にはいるだろう。

nikkei onlineより
1600万曲を聴き放題 巨大「音楽クラウド」サービス スポッティファイの実力(上)
 気に入ったアーティストの曲を買い、iPod(アイポッド)などで聴く。こんな当たり前の音楽の楽しみ方に、欧米で革命が起き始めた。英国の音楽配信会社スポッティファイ(Spotify)の出現だ。同社は1600万を超す曲をネット配信。利用者は曲を選ぶだけで、パソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)など好みの端末で思いのままに聴ける。すでに利用者は1000万人を突破した。日本進出も間近といわれるサービスの実力はどれほどか。実際に試してみた。
 音楽愛好家の一人として最初に感想を言っておきたい。10歳代から海外のアーティストのレコード、CDを買い音楽を楽しんできたが、今後も月に輸入盤CD1枚程度の料金を払ってスポッティファイを使い続けられるなら、私が購入する回数は大幅に減る。昨年は20枚以上のアルバムを買ったが、今後は年に2、3枚になるかもしれない。それでもこれまでより音楽を楽しめるし、音楽を通じた交友関係を広げることもできるだろう。それほどインパクトがあるサービスなのは間違いない。
 スポッティファイは2008年にスウェーデン出身のダニエル・エク氏が創業した音楽配信会社。クラウドを通じ、利用者が望む曲をパソコンやスマホに配信するオンデマンド型のサービスが売り物だ。曲間に入る広告や有料会員から得る月決め料金の収入で運営。楽曲のネット販売とクラウドへの保存サービスを主体とするアップルのビジネスモデルとは異なる。現在、本拠を置く英国やドイツ、フランスなど欧州12カ国と米国の計13カ国でサービスを展開している。
サービス中の13カ国では、同社のサイトで登録しパソコンにアプリをインストールすれば、半年間は制限なく曲のストリーミング配信を受けられる。広告の排除や良い音質を望む人には「アンリミテッド」(米国料金は月4.99ドル)と、対象国外やスマホでも聴ける「プレミアム」(同9.99ドル)の有料コースが用意されている。今回はプレミアムで使い勝手を検証した。
 まず、実際にどんな曲が聴けるかを調べる。アプリの検索窓にノラ・ジョーンズ(Norah Jones)と書き入れると、アルバムのコーナーに現れたのは5月1日に世界発売されたばかりのアルバム「リトル・ブロークン・ハーツ」(Little Broken Hearts)。その下に彼女の過去のアルバムが表示された。
欧米の著名アーティスト中心にポップス、ジャズ、クラシックを網羅した1600万曲超のライブラリーは、同社によれば、一人の人生が約80年だとすると、生きている間は常に違う曲を聞き続けられるほど豊富だという。
それだけで魅力的だが、加えて常に最新の曲を聴けることも利用者急増の原動力になっている。ユニバーサル・ミュージックやワーナー・ミュージックなど世界の有力レーベルと連携しており、独自レーベルで作品を発表したビートルズやサービス対象国以外を中心に活動するアーティストを除けば、かなりの曲を聴くことができる印象だ。
 では過去の名曲を探してみよう。検索窓に指揮者のエーベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)と書き入れ、アーティストのコーナーに行くと、現れたアルバムは実に数百枚。ロックのローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)も1964年のデビューアルバムを手始めに50以上のアルバムが表示された。
 もちろん曲名で調べることもできる。ベートーベンの交響曲第9番(Beethoven Symphony No.9)というキーワードで検索すると、カラヤンヴィルヘルム・フルトヴェングラーらの指揮によるもの20以上のアルバムが示された。曲が見つかれば、あとは画面下部のプレイボタンをクリックするだけだ。
 次にスマホのアプリで聴いてみる。東京都心ではiPhone(アイフォーン)の携帯電話回線でも曲はすぐ流れ始めた。曲の切り替え時も音の遅れはほとんど感じられない。選んだ曲をランダムに流すシャッフルを利用した場合も使用感は同様だ。
 少々驚いたのは音質の良さだ。iPhoneでノラ・ジョーンズの曲をCDからmp3(320kbps)形式でインポートしたものと、ハイクオリティの設定でスポッティファイから配信されたものをヘッドフォンで聴き比べたが、素人の耳には差が分からなかった。同社では音質に定評がある「Ogg Vorbis」というフォーマットを採用しており、その効果が感じられる。
もっとも、音質が良い分、データ量はそれなりに大きい。ハイクオリティで1時間聴いた場合、受信データは約70メガ(1メガは100万)バイト。同じ条件で毎日1時間聴いた場合、1カ月で通信データ量は2ギガ(ギガは10億)バイト。携帯電話回線を使う場合は通信速度制限の対象になる可能性がありそうだ。
 だが、「プレミアム」ではこの問題もあっさり解決できる。利用者は曲をパソコンやスマホにダウンロードして保存することもできるからだ。
 再生は専用アプリに限られ、使う端末ごとにダウンロードする必要はある。それでも同社のライブラリーの曲すべてを、買った曲と同様、自分の所有物のように聴けるというわけだ。

実際、手間もほとんどかからない。パソコンのアプリで聴きたいアルバムを選び、すべての曲を新しいプレイリストとして登録。次にスマホでアプリを立ち上げると、プレイリストには既にそのアルバムが表示されている。あとはアルバムをタップし、画面上部に現れるアベイラブル・オフライン(Available Offline)のボタンをタップするだけ。ロックの標準的なアルバムなら、無線LANなどの高速回線で10分もあればダウンロードできるだろう。
 実のところ、このダウンロード機能こそ、スポッティファイが従来と一線を画す、新時代の音楽サービスであることを示すものだ。
 アップルが日本で提供を始めた音楽クラウドサービス「iTunesイン・ザ・クラウド」にしても、米国などで展開する「itunesマッチ」にしても、クラウドを通じて聴けるのは、あくまで所有する楽曲に限られるからだ。
 曲のダウンロードし放題となると、かつて著作権侵害と認定された音楽ファイル共有サービスと同様の印象を持つ人もいるかもしれない。現実は全く異なる。日本音楽著作権協会JASRAC)の小島芳夫業務本部副本部長は「(事業者が正当な)対価を払ったクラウド上の楽曲を、専用プレーヤーだけで聴くことができるサービス。そこに海賊盤など著作権侵害が発生する余地はない」と指摘。「(スポッティファイは)究極の音楽サービス。日本に進出する場合も、拒む理由はない」とまでいう。
実際、同社がサービスを展開する国の一部では、海賊版の流通がが減ったとの見方が出ている。また、スポッティファイ自体も国際展開で海賊版対策を売り物にしている。「音楽著作権を巡る国際会議などで、楽曲の著作権を守る強みを、しきりにアピールしている」(小島氏)という。
 スポッティファイは日本進出の意志を明確にしている。同社のサイトを日本で開くと、進出時に連絡するため、メールアドレスの登録を促すコーナーが表示される。また、ソニーは欧州で展開する「ソニーエンタテインメントネットワーク」の音楽クラウドサービスを、12年中に国内で開始する方針を表明している。スポッティファイとかなり似たサービスだけに、競争も本格化するだろう。
 日本でも夜明け前にある夢のジュークボックス、音楽クラウド市場。スポッティファイが主役を演じる可能性は十分にある。根拠の一つとなる交流サイト(SNS)機能などについては(下)で紹介する。
(生活情報部 望月保志)