藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

変わる人生観

生涯賃金二億八千万円。
こんな話は、もう終盤戦の自分たちはともかく、これから社会人になる人にはどう聞こえるのだろうか。

Nikkei Onlineより。
先日上場を果たした友人から聞いた感想。
「今は忙しすぎて健康の方が心配」とのことだった。
また「まとまった資産を得て、それを生かすとか、また楽しむとかいうのも今のうち。(彼は五十代)使えない年配になってからの富はむしろ空しいだろう」と言っていた。
お金についての考えは皆さん一家言あろうかと思うが、これまた昔のように"ひたすら上昇志向"ということでもなさそうである。

よほど豊かなのだろうか。
それとも人口減少なので将来にあまり経済的な期待がないのだろうか、「たくさん稼げばok」と思っていない20代が増えているという話。

自分たちは「たくさん稼ぐ」だけで大変なプレッシャーだったし、もう周囲のマジョリティも疑いなくそんな価値観があったと思う。
(思えば、そこから終局的にはバブル経済へと突入していったのだけれど)
恵まれた経験のない世代に「あまりガツガツするな」といってもなかなか聞く耳をもたない。
今の中国の株民の人たちみたいなものである。

ところが、内戦もなく人口は減っているとはいえ、まだまだ技術も国土もある日本が全体的に成熟ムードなのは不思議である。
また特にEUなどと比べて、地方が「魅力的な地方都市」として機能しているところも少ない。
田舎は悪だ、とばかりに都市部に機能が集中しているのもとても歪である。
これは今後地方分権が進み、地域の首長がリーダーシップを発揮すれば劇的に変わる可能性がある。
今の日本の地方は壊れた箱モノしかないけれど、地方が中央の補助金、公共事業ありきから本気で脱した時にようやく日本の地方行政が始まるのではないだろうか。

二億八千万円を40年かけて稼ぐ。
時代は変わりつつある。

生涯収入が2億円多くても幸せな人生とは限らない
きょうの積み重ねがバラ色老後をつくる(2)

2012/9/11 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
今月のテーマは「きょうの積み重ねがバラ色老後をつくる」ということです。20歳代の人にとって、これからの社会人人生はとても多彩であり、それぞれの人生の選択を踏まえながらバラ色老後を目指していかなければなりません。

■「たくさん稼げばOK」というほど単純でない
このとき、よく勘違いされるのが「要はお金をたくさん残せるかどうかの問題なのだろう」という早合点です。あるいは「自分はそれほどお金を稼げそうもない普通の人間なのでバラ色の老後は無理なのだろう」という悲観論も、大きな勘違いです。

確かに、人より多くお金を稼げば人より多くお金が手元に入ってきます。しかし、人より多く稼げる人は、人より豊かな生活を望みますので、お金が残るかどうかは分かりません。老後に必要なお金も多くかかります。

それこそマイケル・ジャクソンのような稼ぎ方をしても、稼いだ以上にお金を使ってしまえば破たん状態に陥ります。バラ色老後どころではありません。

逆にいえば、年収が平均以上でなくても、しっかりとした生活を営めばバラ色老後を引き寄せることは可能なのです。

お金と幸せというものは、お金がたくさんあればそれに比例して幸せが倍増するほど簡単な関係にはありません。しかし、そこに人生の面白さがあります。

さて、お金と幸せが一対の関係になかったとしても、やはり「稼げるお金はしっかり稼ぐ」ことが人生の幸せを長い目で見て引き寄せるポイントになります。過度な負担やストレスを抱え込まない範囲で、自分の能力に見合った金額を報酬としてもらうことは、現役時代を生き抜くためにも、老後の準備に取り組むためにも必要です。

■正社員か非正規雇用か……
若いうち、特に学生の時期から、働き方が違うとどれくらい生涯収入格差が生じ得るか、少しイメージを持っておきたいところです。

そこで、いくつかのデータを見てみましょう。

大卒男子が正社員となった場合、生涯賃金で2億8千万円とされています(ユースフル労働統計2012)。近年低下傾向にあるものの、それでも大きな金額を40年ほどかけて稼いでいくことがわかります。

これに対し、フリーターやアルバイトのまま60歳まで過ごしたとすればどうなるでしょうか。賃金上昇がほとんどない働き方であるため、生涯賃金はどんどん開いていきます。ざっくり試算しても、9000万円から1億円程度と考えられます。この段階で2億円弱の収入格差になります。

なお、ここには退職金が含まれていませんので、さらに1000万円以上の受け取り差がつく可能性があります。

老後の人生も考えると生涯収入はさらに拡大します。もし、国民年金を未納するフリーターとして60歳まで過ごした場合、老後の年金はゼロです。しかし標準的な会社員として60歳まで働いた場合、老後の年金は国のモデルでも月額16万〜17万円はもらえます。平均余命を考えると約20年はもらえますから、実はこれ、3840万円の収入になるほどの財産なのです(バラ色老後に公的年金は絶対必要です。その話は改めてします)。

これらをすべて合計すると2億3千万円以上の違いが「働き方」を通じて生まれる可能性がある、ということが分かります。

もちろんここでは極端な例を示しているものの、働き方の違いが大きな収入の違いを生む、ということを若い世代は心に留め、しっかり仕事に励むことが大切です。毎日をしっかり働き、そこからバラ色の人生とバラ色の老後を作っていくのです。

■自分の働き方に応じたバラ色老後の過ごし方
最初にも述べたとおり、今回のコラムのねらいは格差について脅しをかけて、「稼げない人は人生終了」と言うことではありません。むしろその逆です。

今回伝えたいのは、「人は自分の身の丈に合った稼ぎ方を考える必要があり、その先のバラ色老後のデザインも考える必要がある」、ということです。

社会人であっても、前述のモデル通りに稼げない人もたくさんいます。最初はフリーターであって途中から正社員として中小企業に入るケースもあるでしょう。スムーズに高所得のサラリーマンになれるのは数%もいません。

しかし、それぞれの暮らし方の中から老後に必要な水準を見いだし、それぞれの働き方の中から自分の将来にお金を残していけばいいのです。きちんと老後に向かって備えた人には、誰でも自分なりのバラ色老後が近づいてきます。

ときどき見受けられるのが「現役時代の所得は高かったけれど、贅沢をしすぎて貯金はほとんどゼロ、老後もゼイタクをしたいのに年金は少ない(実は平均よりは多いのだが)」と途方に暮れるケースです。毎月50〜60万円の給与をバンバン使っていた独身男性などが年金生活に入って20万円しかもらえず、貯金もほとんどないと困っていたりします。

普通の子育て夫婦は年収500万〜600万円くらいの家計であることが多いのですが、こうした世帯の老後がバラ色であることも多く見受けられます。しっかりやりくりし貯金もしていたことで老後の資産もそれなりに蓄えることができ、また、生活水準も夫婦合計23万円程度の年金でも困らない程度であるため、自分たちにちょうどいい老後の幸せを得られているからです。

ふたつの例は「たくさん稼げばバラ色老後になるとは限らない」ということを示しています。

■若い世代はまず仕事をがんばる
若い世代についてはまずは仕事をがんばってください。できるだけたくさん給料をもらえる技術を身につけ、きちんともらえる仕事を探す努力をすることも大切にしてください。人生の中で何度か、チャンスがあなたのすぐ近くにやってくるはずです。

そして、自分の働き方(稼ぎ方)にちょうどいい生活を見つけ、そこからしっかりお金を将来に残すことが大切です。そこから、ひとりひとりのバラ色老後につながってくる、というわけです。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。論文「個人の老後資産形成を実現可能とするための、退職給付制度の視点からの検討と提言」にて、第5回FP学会賞優秀論文賞を受賞。近著に『お金の知恵は45歳までに身につけなさい』(青春出版社)。twitterでも2年以上にわたり毎日「FPお金の知恵」を配信するなど、若い世代のためのマネープランに関する啓発にも取り組んでいる