藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

制度設計の難しさ。

全国の上下水道が維持費の岐路に立たされているという。
さもありなん。
水道だけでなく、道路、高速道路、電気、ガス、さらには通信や郵便などのインフラが「人口縮小・GDPマイナス」の国では問題になってくる。

それまでは、まあ「揃えて、維持して当たり前」といった地方と中央政府のコンセンサスは、まったく「認識の違い」をもたらすようである。
コンパクトシティ、という言い方もされているようだが、もう広くあまねく「どこにでもすべてのインフラを敷設し、維持する国」という常識はなくなるのだろう。
世知辛いようだが、インフラを維持できる規模での集落とか、人口とか、税収とかがなければ、「ただそこに住んでいる」ということだけではインフラの維持は難しいらしい。

逆に今も存在する「中央政府のインフラに頼らない」ような村落には無用の話でもある。
これからは地方都市はそうした「財政の自給自足」とか「エネルギーの自給自足」を考え、そしてある程度まとまった単位で運営されてゆくようである。

地方分権ならぬ地域分権であり、それも日本のような狭い国土の中でもそうした「細分化の統治」が必要になるほど、地域の統治モデルは意外に小さいものなのではないかと思う。
「便利な地域の都心」と「不便だけれども長閑な地域村」という具合に日本の地域のカラーも区別ができてゆくのではないだろうか。
そう思えば、欧州の地域の村は、まったくそのような理屈で営まれているようにも思う。
日本もこれから熟成が進むのに違いない。

上水道の料金55倍に 広がる地域格差 水道行政の構造改革必要
高度成長期に整備された上水道の老朽化が進み、更新総額を単年度の料金にまとめて上乗せした場合、最大で55倍以上に膨れあがる地域が出ることが、桃山学院大大阪府)の研究で分かった。原則として自治体単位で運営される水道事業者は全国に1千以上。水道網を維持するためには抜本的な対策が必要だが、地方の零細事業者には限界がある。

 日本水道協会によると、全国の上水道の総延長は約63万2800キロ(平成22年度時点)。うち法定耐用年数の敷設40年を超えた管は7・8%に当たる4万9000キロ(同)と地球1周を上回り、増え続けている。

 老朽化率が最も高い大阪府では、約5分の1に当たる19・54%(同)が老朽管。東京は5・58%(同)にとどまるが、18年からわずか4年間で倍増した。

 公営企業のため、料金収入によって水道管や浄水施設の更新などを賄う独立採算が原則で、仙台市では老朽管約720キロの更新が必要だが、予算、職員、施工業者の数を考慮すると約190キロまでが限界で「経過年数や重要度を踏まえ、優先順位を付けて進めていくしかない」(市水道局)。

 老朽管の更新費を研究する桃山学院大の矢根真二教授(産業組織論)の試算では、今後50年の更新費を単年度の料金に上乗せすると、老朽管を抱える事業者の料金の全国平均は4・6倍に跳ね上がる。北海道では値上げが必要ない事業者もある一方、静岡県では55・41倍、茨城県では40・99倍に達する事業者も出る。


矢根教授は「実際には数年間をかけ分割して水道料金に上乗せする形となるが、値上げは避けられない。一部で値上げすれば、追随する動きが出て、地域間の料金格差が拡大することは確実だ」と指摘する。

 ただ、現状では老朽管を全面更新する抜本的な解決策はなく、長期的な視野に立ち費用を積み立てるなど地道な取り組みが必要だ。

 矢根教授は「地方には職員数人という零細事業者もあり、長期的な計画を立てるのも難しい」と述べ、水道をめぐる厚生労働省総務省国土交通省などによる縦割り行政を改め、料金制度や水道網を責任を持って計画する部署を設立するなど構造改革の必要性を提唱している。