藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

国のサイズ感。

中国の国鉄が債務に喘いでいるという話。
何より、自分が中国に行っていた経験から直感すること。
それは中国は「高速鉄道の国」ではないと思うのだ。

その国で鉄道網が発達するための条件、というのは恐らく幾つかの係数が関係してくると思うが、

例えば日本など、国土が縦横に三千キロ四方くらいに入ってしまうくらいのサイズは、一つの適正値ではないかと思う。

高速鉄道で五時間を超えるような都市間を、いくつもつないでもあまり需要は伸びず、利用者は航空機にシフトしてしまう。

さらに都市の密度である。
米中のような大国は、「間がスカスカ」である。
アメリカで道路を走った際「これがアメリカか」と一番強く思ったのはだだっ広い空と何もない砂漠の中の一本道を見た時だった。

もう何時間走ってもほとんど景色は変わらない。
看板すら立っていない。
こうなると、途中々々の町で下車して、また地域の名物や観光などするような旅情ではなくなる。
都市と都市を結ぶ間は「ただ短い方がいいだけ」に思えてしまうのだ。
(EUはその点、特に海岸沿いには素晴らしい無名の地方都市が点在していて、歴史の重みを感じる。)

中国は北京to上海とか、内陸部にもガンガン高速鉄道を作っているが、そもそものビジネスや観光需要はあまり伸びぬと思う。
リタイア後に有り余る時間があるのなら、あるいは「あえて鉄道の需要」というのもあるかもしれないが、よほど成熟した欧州の海岸線の小都市、でもない限りそんな「のどかな輸送手段」は存続しない。
「主要な都市は高速鉄道網で結ばれる」という話だが、その安全性とメンテナンスの責任は運営サイドに残り続ける。
広い国土にどんな「導線」を建設するのか。
空路と合わせ、今一度再考する必要があるのではないだろうか。
日本の航空路網なども、同様の理由で「導線の再考」が必要だろうと思う。

“独立王国”中国鉄道省が解体 負債40兆円 迷走する建設計画
鉄道に関するあらゆる権益を握って「独立王国」と呼ばれた中国鉄道省が、17日に閉幕した全国人民代表大会全人代=国会)で決まった省庁再編で解体された。「日本の国鉄分割民営化を参考にした」(関係筋)とされる機構改革だが、昨年9月末段階で2兆6600億元(約40兆700億円)に膨れ上った鉄道省の巨額債務をどう返済するか。めどは立っていない。
 ◆行政と事業を分離
 鉄道省は道路や航空などを管理する交通運輸省に統合された上、同省の下に置かれる「国家鉄道局」として格下げ。さらに旅客運輸や鉄道建設を行う国有企業の「中国鉄道総公司」を新設。一体化していた行政部門と事業部門を明確に分離する。
 中国鉄道総公司の資本金として、財政省が新たに1兆360億元(約15兆8500億円)を国庫から出資し、鉄道省保有していた資産と債務と人員の大半を引き継ぐ。同総公司総経理(社長)には鉄道相だった盛光祖氏が就任した。債務の一部は資本金で返済するという。
 ただ、省庁再編を進める中央機構編成委員会は、「(鉄道省は)行政と事業の分離が先で債務処理は今後の課題」と債務問題を先送りした。債務問題を深刻化させている要因のひとつは、景気テコ入れ目的で中国政府が採算度外視で急がせた高速鉄道網建設だ。
2011年7月に40人が死亡した高速鉄道追突事故で「安全軽視」の批判を受け、一時は建設工事が全面ストップした高速鉄道網だが、12年後半から経済成長の下支え策として建設工事が本格再開した。07年にスタートしたばかりだが、すでに北京−上海、上海−杭州鄭州西安など続々と高速鉄道が開業。営業キロ数は総延長で9300キロを超えた。今年はさらに約3千キロが開業する見通しで、主要な都市は高速鉄道網で結ばれることになる。

 ◆大半の路線が赤字
 それにつれ財務状況はますます悪化する。国家予算や運行収入など以外に、鉄道債発行や銀行借り入れで建設費用をまかなってきたが、昨年は1〜9月に85億4100万元の赤字を積み増した。高速鉄道は割高な運賃との批判もあり、予測ほどには利用客が伸びない。北京−天津など短距離路線でわずかな黒字を計上する以外は、大半の路線で赤字が続いている。
 それでも中国政府は、輸出のパワーに陰りが出て、外資企業の対中投資も減速、個人消費など内需が伸び悩む中で、経済成長で年7・5%の政府目標を達成しようと思えば、過剰投資と知りながらも、高速鉄道網の建設をストップできない。そうなると鉄道省の解体は債務圧縮よりも、責任放棄へと突き進んでいく懸念がある。安全性への疑念も根強い。2年前の事故直後に各地で手抜き工事が発覚。「安全よりも建設を急いだ」との教訓は生かされていない。
 鉄道省の解体は当然の流れだが、無責任な債務処理や安全軽視の姿勢は、中国に対する信任をさらに引き下げることになる。(上海 河崎真澄)