藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

社会にあふれる問題の分析。

電力買取をベースにしたメガソーラ事業に海外資本の進出が加速。
東北などの地元に不安が走る、という記事。
コンパクトにいくつかの問題が複合されていて、問題分析の練習になりそうである。
記事の要旨は「福島原発事故後のエネルギーとして注目されている太陽光発電・メガソーラーに中国資本が続々参入してきている」という話である。

こうした話題にどう反応するか、つまりいかに多角的な切り口で問題を見るか、ということが重要だろう。
記事からはまず「エネルギー安保」と称し、日本のメガソーラ事業に「外資(特に中国系)」が参入していることを問題にしていることが窺える。

まず、「外資の参入についての見解をどうするか。」

というのが一つ。
外資は採算が合わなくなるとすぐ撤退する」というが、そんなものどこの資本か、ということにはほとんど関係ない話である。あるとすれば、政府が「撤退しないよう」に補助金を出す、ということくらいで、論点になっていない。

資源エネルギー庁は、エネルギーセキュリティの重視から『国の生産活動の根幹となるエネルギーの安定供給に向け、「各エネルギー事業は国内メーカーが中心となるのが望ましい」』

というのが二つ目。
「安定供給に向け」という物言いは一見なるほど、と思ってしまいそうだが実に曖昧である。
外資は安定供給せず、国内資本ならなぜ安定するのか。
それはやはり政府の補助とか、いわゆる「ビジネス以外の理由」が介在しているのではないか。
そもそも買い取り価格が決まっている上での事業である。
何か「外資と国内資本」に予め違う色が付いているかのような見方は、資本主義的ではない。
そして

メガソーラーは広大な土地を要する分、まちづくりに影響する。契約満了後の土地利用も更新か撤退かで大きく変わりまちづくりの長期ビジョンは不透明となる。

街作りに影響するのなら、予め利用後の契約についてもきちんと交わしておけばよい。
一例だが、自分の知る関東のメガソーラ販売業者は、「契約終了後は太陽光パネルは放置していただいて結構です」と言っていた。
ビジネスとして取り組む彼らはそんな感覚なのである。
重ねて言うけれど「外資かどうか」ということは関係ない問題である。

そもそもが「エネルギーの安定供給」が目的であれば、資本の色は関係あるまい。
また「国内外メーカーで性能の優劣はほとんどなく、価格競争で国内メーカーが後れを取る。」ということならば、むしろ国内メーカーを使うほど、価格競争力はなくなる道理である。
それが嫌ならまた税金で補てんするのか、一体エネルギーが優先なのか、日本企業が優勢なのか、極端にブレている。

そして、問題は核心に行きつく。

一体「発送電分離」は正しい政策なのか、ということ。

そして、さらに今再稼働されつつある「原発稼働・再稼働」について自分たちはどういう対処で臨むのか、という根本の問題についての態度を決めない限り、このような"不毛な是非論"が幾らでも湧き起るだろう。

原発についてのコンセンサスを決めないうちに、原発輸出をしようという企業や、再稼働しようとする首長は出てくるし、反対派は政治家も含めて大いに(検討されないという)不満を持ったままである。
そんな上で、エネルギーの買い取り制度とか、メガソーラでの売電事業とか、をどんどん積み重ねても、建設的な議論には到底ならないのは中学生でも理解できる。

問題点について、たとえ間違っていても「方針」を出しながら進んでゆく、という基本姿勢がなかりせば、いつまで経っても経験値の積み重ならない「噂と気分だけ」で漂っていく国になるだろう。
政権や、政治家にはそうした「整理能力」こそが必要だと思うのである。
原発稼働ありき、とか
経済優先、とか
基地移転ありき、とか
憲法改正(軍備)ありき、とか
いう「現象」ばかりを追いかけても決して問題は解決しないだろうと思う。

今の子供たちの世代のために、自分たちはせめてそうした「争点整理」だけはしてゆかねばならないのではないだろうか。

中国系メガソーラー、続々と東北進出 国産後退、エネルギー安保に影
2013.5.1 10:27
 東日本大震災代替エネルギーに注目が集まる中、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を展開する中国系を中心とした外資系企業が、東北で土地確保を本格化させている。国が固定価格買い取り制度を開始して「採算ベースに乗った」(資源エネルギー庁)という背景があるが、地元からは「制度を利用して利益をあげたら撤退するのでは」と不安の声もあがる。国はエネルギーセキュリティーの重視を掲げるが、国内メーカーの競争力低下を勘案しないままの門戸開放に疑問符が付いている。(大泉晋之助、渡辺陽子
「未利用地の有効活用につながる」。市有地2カ所で中国系企業によるメガソーラー事業が予定される岩手県奥州市では、担当者が参入を歓迎した。場所の一つは、解散手続きをしていた土地開発公社の未利用地約4・3ヘクタール。処分しようとしていたところ落札したのが、メガソーラーを開発し世界で事業展開する中国系企業だった。
一方、不安を口にする自治体もある。「海外資本の進出なんて、これまでなかった」。岩手県金ケ崎町の担当者の表情は複雑だ。同町では、国が太陽光発電の固定価格買い取り制度を開始した平成24年7月前後にメガソーラー事業が急増。民有地4カ所で事業契約が締結され、うち1件が大手中国企業の子会社だった。同町のケースは民有地への進出のため、細かな契約内容に町が介入できない。
■「被災地食い物に」
メガソーラーは広大な土地を要する分、まちづくりに影響する。契約満了後の土地利用も更新か撤退かで大きく変わりまちづくりの長期ビジョンは不透明となる。「採算が合わずさっさと企業が撤退ということも。被災地が食い物になる」。地域に不安がくすぶる。
 岩手県では国の推進策に応じ、太陽光発電で22年度の約3万5千キロワットを32年度には4倍の14万キロワットに引き上げることを目標としている。23年11月にはメガソーラーに適しているとみられる県内の未利用地50カ所を選定したリストを作成。県が把握する限り18カ所で契約締結、少なくとも4カ所の主体は海外資本という。
■後れ取る国産
メガソーラー市場は17年ごろまで、日本企業が世界シェアの大半を占めていた。その後、安価な中国系・台湾系企業が急伸し、22年には中国・台湾で世界シェアの6割程度、日本は1割を切るまでに低迷する。資源エネルギー庁新エネルギー対策課によると、国内で稼働するメガソーラーのうち、8割は中国・台湾などの海外製品という。
中国系企業については供給過多を指摘する声もあり、世界最大級メーカーだった中国のサンテックパワーが今年3月に破産手続きを開始した。ユーロ圏経済の停滞で、これまで国策としてメガソーラーを誘致してきたドイツでは、固定価格買い取りなどの補助制度を縮小。このため「欧州で食えなくなったメーカーが日本に進出している」(国内メーカー担当者)とみる。
国の生産活動の根幹となるエネルギーの安定供給に向け、資源エネルギー庁は「エネルギーセキュリティーの観点から、各エネルギー事業は国内メーカーが中心となるのが望ましい」との立場だが、国内外メーカーで性能の優劣はほとんどなく、価格競争で国内メーカーが後れを取る。
国内メーカーの競争力底上げをなおざりにしたまま、急速に門戸を開いた国の施策に、東北大学大学院の桑山渉特任教授は「国内メーカーを中心とした仕組みを作らず、中途半端な施策を進める国のあり方には疑問。電力料金でまかなわれる買い取り制度は、国民の税金を投入しているようなもので、それが海外メーカーに吸い取られるのは問題だ」と指摘している。