藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

背番号制度の憂鬱。

キラッと光る東洋経済、浪川記者の記事より。
人の書いた文章は"作者の子供"のようなものだけれどなるほど出自は分かるものである。

それにしても法人版の共通番号制度があるとは初耳だが、それがかつてのIT業界の蹉跌を踏襲しているという記事には喪失感を拭えない。
記事の指摘するようにITの世界では、数十年前から「統一コード」が試行され、総合的な統一が指向されるも、”業界の事情”とか”行政の事情”で「業界限定」のルールにしかならず、今のように「何十種類もの業界標準」が乱立するに至っている。

再び「法人マイナンバー制度」が、結局過去の「EDI(電子商取引)化の二の枚」に成らぬためには、何か別の設計制度を導入する必要があるだろう。

住基ネットで起こったことは、今再びかならず繰り返されるだろうという予感がする。
さらに記事が指摘するように米国発の「金融監視ねらい」の新コード体系の導入があるのならば、せっかく統一番号を日本で決めても、ふたたびそれが「ローカルもの」に成る可能性も大いにある。

政府は個人相手にした番号制度の失敗を、今度こそは生かして貰いたい物である。
IT関係者でなくとも、「コード設計の失敗」がシステム化にどれほどのダメージをもたらすかをよく考える必要がある。

結局すべてを税金でまかなうことになるのである。
システムは業務のために、組織の垣根を越えて作られなければならない。

法人版マイナンバー導入で何が変わるのか東洋経済オンライン 9月29日(日)8時0分配信
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法人版マイナンバー導入で何が変わるのか
 2016年から法人版のマイナンバー(共通番号)制度が開始される。といってもピンとこない人が多いかもしれない。

【詳細画像または表】

 マイナンバー制度は、国民一人ひとりに番号を割り振って、所得や納税実績、社会保障に関して一元的に管理するというものだ。今年5月に「行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)が成立したが、もっぱら個人を対象とした制度として話題となっていた。

 だが、この制度は個人だけでなく法人も対象としている。マイナンバー法の58条では「国税庁長官は、法人等に法人番号を通知する」と規定され、法人番号の付番対象が次のように列記されている。

 (1)国の機関および地方公共団体、(2)登記所の登記簿に記録された法人等、(3)法令等の規定に基づき登記のない法人、(4)国税地方税の申告・納税義務、源泉徴収義務、特別徴収義務、法定調書の提出義務を有する、または法定調書の提出対象となる取引を行う法人、である。要するに、一般企業はすべて法人番号が付く対象となるのだ。

 法人番号を導入することによって、財務省国税庁をはじめとした行政機関は事務作業の効率化を図ることができる。ただ使い道はそれだけではない。消費税引き上げに伴って、現在議論されている食料品などの生活必需品を対象とした軽減税率が導入された場合、課税される事業者が発行する税額記載の明細書(インボイス)を利用して軽減税率の確定が行われる可能性がある。その際、明細書を発行した事業者を特定するためには法人番号を使うのが合理的で、それがないと軽減税率の導入自体が難しいといわれている。
■ 縦割り行政の弊害

 そもそも、日本にはすでに企業コードはいくつも存在しており、上場企業なら証券コード、輸出入企業なら輸出入者コードが割り当てられている(表)。それぞれの業界の中で企業番号が割り振られているケースも少なくない。

 業種を超えた取引をする場合などでは、受発注の伝票処理などが円滑に進みにくいという事態も起こっている。

 その代表例がEDI(電子データ交換)だ。これは商取引に関する情報を標準的な書式に統一して企業間で電子的に交換する仕組みだ。発注や決済などの業務を効率化できるメリットはあるが、業種ごとに異なる規格があり、異業種の企業間でやり取りする場合は、余分なシステム開発をしたり、人の手による伝票の突き合わせや照会をしたり、といった作業を余儀なくされる。

 さまざまな事業を展開し多くの子会社を持つ企業では、この問題が顕著に現れて、グループ全体の効率性の改善が図りにくい要因にもなっている。そこで、一部の企業ではグループ内で共通番号制を導入する動きが起こっている。

 ある企業は「まず米国の企業グループでERP(企業グループ全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るためのIT手法)導入の際に共通番号を導入し、それをモデルとして国内にも採用した」と言う。

 これまで企業コードを使った効率化が進まなかったのは、「各省庁で関連業種のコード体系を構築した結果、企業コードの共通化が実現できなかった」(官庁関係者)ことに一因がある。いわば、縦割り行政の弊害だ。とすれば、全国共通体系の番号導入は、弊害を除去して企業の効率化を促進することにもなる。

 ちなみに、マイナンバー法では法人番号は原則公表され、官民で自由な利用が認められているのも、そこに狙いがあると見ていい。また法人番号に基づいて官庁や地方自治体など行政機関の間で情報連携ができるようになれば、企業の行政手続きの効率化にもつながる。

 かつて、EDIが企業間取引で浸透していった1990年代の米国では、その効率性の高さから、こんな言葉が流行した。

 「EDI or DIE(EDIをやるか、それとも効率性を改善できずにダメになるか)」

 数年後、企業番号の共通化を通じて、わが国でも同様のことが叫ばれていておかしくない。

■ 世界でも共通化の動き

 企業コードをめぐっては、マイナンバー法による法人番号とは別に、もう一つの番号共通化の動きが世界で起こっている。

 震源は金融分野だ。08年9月に発生したリーマンショックの反省からG20サミット(先進20カ国・地域首脳会議)の場では金融危機の未然防止策が論議された。その中で具体化した項目の一つが店頭デリバティブ取引のリスク規模の把握であり、その方法が企業コード体系の国際的な統一だった。具体的には、店頭デリバティブを取引する企業には共通体系コードであるLEI(取引主体識別子)の取得を義務づけるという仕組みになっている。

 国際的に統一された企業コードを付けて取引記録に記載すれば、デリバティブ商品が流通しても、その追跡(トレース)が可能となる。この企業コードは20ケタで構成され、その冒頭の4ケタは国コードということが決定している。米国などはその運営組織をすでに設置しており、日本も同様に運営組織を設置するのは時間の問題だ。監督官庁である金融庁も動向を注視している。

 現在はデリバティブという金融商品が対象とはいえ、デリバティブを利用する企業は金融機関に限らない。金融分野から始まった国際企業コード体系をほかの分野にも転用するという議論が国際的に起きる可能性もあると見る関係者もいる。「米国は半導体などシステムに直結する輸入品の製造に関するトレーサビリティにも神経をとがらせている」(電子関連企業)という声もあり、企業コードの先行きがどのような着地を迎えるのか、関心を寄せる日本企業は少なくない。

 共通化された企業コードを導入するメリットは大きいが、日本は世界的に出遅れている(表)。今後、普及を加速させるためには政府の環境整備が欠かせない。

(週刊東洋経済2013年9月28日号)(撮影:尾形 文繁)
浪川 攻