藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

十年かけて。

世田谷区長の保坂さんの記事より。
特定秘密保護法が可決されたのは今年の重大ニュースだけれどそれでは終わらない、という話である。

通常国会には、過去3回廃案となった「共謀罪創設」や、集団的自衛権憲法解釈変更に道をひらく、「国家安全保障法」等の国会提出がささやかれている。

確かに必ず次には憲法の軍備の問題に近づく「お題」が待っているだろうし、幾つかの選択肢を国が用意して国民に問わねば、「ある人たち」の思惑だけで国のかじ取りが曲がっていってしまう危険があると感じる。

こうした話は、一朝一夕に深まらないし最終的には、個人の人生観とか価値観が"日本の文化"に反映されていくことになるので、是非に今の十代、二十代の人にこそ真剣に考え始めてもらいたいと思う。

自分は今の日本の国家権力は、国防という意味ではユルくて、また「戦争しらず」の世代が寡占になって国民の意識も低すぎると思っている。
他国に頼らない国防、というものを決して"侵略ツール"として使わない工夫をしたうえで「編み出す」ということが日本にならできるのではないだろうか。
そんな「道なき道」をぜひ切り開いていきたいものである。

特定秘密保護法 弾丸列車は止まらないのか
12月6日、特定秘密保護法参議院本会議で可決され、成立しました。日比谷野外音楽堂で開かれた反対集会には会場に入りきらないほどの人が詰めかけ、国会の外では大勢の人が声をあげている中での強行突破でした。それはまるで、これまでに見たこともない弾丸列車のようでした。
 衆参両院ともに強行採決によって成立させた審議は稀(まれ)に見る強引さでした。同時に、法案の採決が焦点になるにつれて、高まった市民の危機感の広がりもかつてないほどのものでした。ジャーナリスト、学者、文化人、映画人と反対声明が次々と出ました。私は、「特定秘密保護法」成立のニュースを聞いた直後、ツイッターにこのように書き込みました。
<議論もそっちのけで、壁を破って進む姿を見て、「決められる政治」「ねじれの解消」の結果を思い知った人も多いだろう。永田町には「日本人は忘れやすく、世論の高まりも半年続いた例はない」という伝承があるのを御存知だろうか>(12月6日23時44分)
 かつて国会議員として与野党が折衝する現場にいた時、強行採決の前後によく与党議員から聞いた言葉です。その時はどんなに大きな出来事に見えても、「人の噂(うわさ)は75日」のことわざ通り、関心が継続したためしはなく、今は熱くても冷めるのも早い、という統治感覚を正直に語っているのでしょう。
 はたして今回はどうなるだろうか、と投げかけて、私は続けました。
特定秘密保護法案で終わるわけではない。年末年始をはさんで始まる通常国会には、過去3回廃案となった「共謀罪創設」や、集団的自衛権憲法解釈変更に道をひらく、「国家安全保障法」等の国会提出がささやかれている。世論とこれを伝えるメディアの力で、強くブレーキをかける必要がある>(12月7日0時7分)
 このツイートは、数日かけて1700回リツイートされました。反響は大きかったといえます。
「論点は出尽くした」(安倍政権)どころか、この法律には、国会でほとんど審議されていない「共謀・教唆・煽動」が入っている、と指摘してきました。何が「特定秘密」か否かも不明であるのに、その情報に接近しようと話し合ったり、その行為をうながしたりすることが「犯罪」として処罰されるのです。これについては、前回のコラム「『目配せ』」でも成立する共謀罪特定秘密保護法案」で詳しくふれています。
 これに加えて、包括的な「共謀罪」の創設が来年の国会での日程にあがっています。
 少しややこしいので繰り返しの説明になりますが、特定秘密保護法(25条)では、秘密を知ろうと話し合っただけで「共謀」したと認定され、処罰される可能性があります。一方、包括的な共謀罪の創設は他の600以上の犯罪にも「共謀罪」を適用するというもので、刑事司法の基本ルールを変更するという話です。
 つまり、特定秘密保護法案の強行審議で開かれたとば口は、さらにこの国の社会を深く切り刻んで全面変更するための一歩となる恐れがあるのです。
 朝日新聞社の電話による全国緊急世論調査(7日)では、秘密保護法の国会での議論が「十分だ」は11%にとどまり、「十分ではない」が76%に達しました。また、共同通信社の全国緊急電話世論調査(8日、9日)によると、特定秘密保護法について、次の通常国会以降に「修正する」との回答は54.1%、「廃止する」は28.2%で、合わせて82.3%に上りました。
 憲政史上でも類を見ないほどの強行突破は、高い支持率に支えられていた安倍内閣のこれからにも影を落としています。上記の共同通信社の調査では、安倍内閣の支持率は47.6%と、前回(11月)より10.3%急落、第2次安倍内閣発足以来、初めて50%を割りました。また、不支持率は38.4%(前回26.2%)でした。特定秘密保護法の強行審議に多くの国民が批判的で、積み残しの問題が多くあると感じているのです。
 これまでの日本の社会は残念ながら、「人の噂は75日」と言うまでもなく、強い関心と危機感が時間の経過とともにフェイドアウトすることが多くありました。
 ところが、特定秘密保護法に続く強行路線が次の通常国会でも続くとしたら、忘れるいとまもなく危機感は重層化し、「イヤな社会」に転じる警戒感は薄まるどころか強まっていくでしょう。
 この1年に行われた衆参の国政選挙で、国会の議席は与党が圧倒しています。弾丸列車を何本でも走らせることができる状況にあります。ただし、強行策の連続で世論と民意が離反していくと政権は浮力を失います。すると、列車は徐行するか止まらざるをえなくなります。その鍵を握っているのは私たちであり、メディアの報道です。
 急坂を転げるようにして弾丸列車を増発するのか、世論と民意の離反を敏感に察知し、慎重に立ち止まるのか。それを見定める分岐点が訪れています。

保坂展人(ほさか・のぶと)1955年、宮城県仙台市生まれ。世田谷区長。高校進学時の内申書をめぐり、16年間の「内申書裁判」をたたかう。教育ジャーナリストを経て、1996年より2009年まで衆議院議員を3期11年(03〜05年除く)務める。2011年4月より現職。『闘う区長』(集英社新書)ほか著書多数。