藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

競争のあるべき姿。

また、素早く問題点を解決したり複雑な機能を設計したり、常に新しい技術の習得を続けてそれをほかのエンジニアと共有するエンジニアは自然と周りから一目置かれるようになります。

真っ当な働きをするエンジニア。
それをあくまで固定的・権威的な「制度」ではなく、「自然と一目置かれる」ような制度。
もうここ半世紀もマネジメントの論法は次々と登場するが、結局はこういうことではないだろうか。
目標設定にコミットメントし、それをスコアリングし、結局数字で判断し、という「科学的」なやり方ではなかなかこうした「暖かなマネジメント」は構成しにくいのではないだろうか。
今をときめくGoogleがそうしたやり方を採用していることが、むしろ新しく不思議でもある。

グーグル社内でのエンジニア同士の関係は受験生同士の雰囲気にも似ているのではないかと感じることがあります。受験はもちろんほかの受験生との競争なのですが、同じように希望校を目指す仲間と一緒に成長できる機会でもありました。たとえば模試でライバルに負けないためには、ほかの受験生の足を引っ張るのではなくひたすら勉学に打ち込むことが必要です。

なんということだろうか。
大組織、特に日本の大組織では「足を引っ張る」というのは通常のふるまいである、という。
客のためにも、取引先のためにもならないが、それでも「出る杭は打つ」というのが日本の大組織の理屈だという。

表向き、あくまで例外はあるのかもしれないが、それにしてもGoogleのそうした「ホワイト企業」ぶりは、IT企業の人間にとってもまた、世界中のこれからのベンチャー創業者にとってもお手本ではないだろうか。
昨今取り沙汰される「日本発ベンチャーへの資金枯渇」というような話題でも、ぜひ今一度考えてもらいたいと思う。
日本企業はリスクマネーをとる習慣がなく、「安全な投資」しか意思決定されないことが多い。

安全な投資、などは実はタカが知れていて、要は「経営者が腹をくくって投資するかどうか、ということなのだが、そうしたことをする経営者は稀有なのである。
日本が「創業の芽」を本当に発芽させようとするなら、そうした投資環境の整備こそが最も重要な対処ポイントであると思うがどうだろうか。

儲かった後のNISAがどうとかではなく、「これから」を考えている人の目線になって制度設計をする必要があると思うのである。

グーグル全社員に刻まれるDNAとは (及川卓也
2014/2/12 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 検索エンジンからウェブブラウザー(閲覧ソフト)「クローム」、自動運転車に至るまであらゆるものにIT(情報技術)の力で改革を起こそうと試みる米グーグル。創業から15年たった今も、ベンチャー時代の勢いを保ちながら成長を続ける。日本法人設立も2001年と海外の拠点として初めて開設。そこに06年に入社したのが日本人エンジニアの及川卓也氏だ。
 彼の役割はクロームの日本での開発リーダー。エンジニアとして技術はもちろんチームの統率力にも秀でており、本社からも信頼されるエンジニアとして一目置かれる。社内外から慕われる及川氏がグーグル流のイノベーション(革新)の起こし方の一端を明かす。

 米グーグルは、なぜイノベーション(革新)を起こし続けることができるのか。私はエンジニアとして米ディジタル・イクイップメント・コーポレーション(DEC)や米マイクロソフトで働いた経験がありますが、グーグルは企業として成熟してもイノベーションのスピード感が変わりません。

 シリコンバレーの企業でも、ベンチャーから抜け出し経営が軌道に乗ってくると官僚的な流れがどうしても出てきてしまう。それがグーグルにはありませんでした。起業直後から働き始めた社員も最近入った社員も、スピードが落ちた瞬間に「グーグルがグーグルでなくなる」ことを意識して働いているからでしょう。

■さっさと決めて走る、そしてなんでもオープンに

及川卓也(おいかわ・たくや、写真中央)グーグル日本法人 シニアエンジニアリングマネージャー 早稲田大学理工学部卒業。外資系コンピューター会社でオフィスシステム開発などを担当後、米マイクロソフトに出向し、ウィンドウズNTの開発に参加。その後、マイクロソフト日本法人に転職し、ウィンドウズ製品の開発を手がける。2006年グーグル入社。ウェブ検索などのプロダクトマネジメントを担当後、08年からクロームの日本オフィスでの開発リーダーとして、社内外の技術者とともにウェブ技術を推進する。11年の東日本大震災の際、有志とともにITで復興支援を支えるコミュニティーである「Hack For Japan」を立ち上げた
及川卓也(おいかわ・たくや、写真中央)グーグル日本法人 シニアエンジニアリングマネージャー
早稲田大学理工学部卒業。外資系コンピューター会社でオフィスシステム開発などを担当後、米マイクロソフトに出向し、ウィンドウズNTの開発に参加。その後、マイクロソフト日本法人に転職し、ウィンドウズ製品の開発を手がける。2006年グーグル入社。ウェブ検索などのプロダクトマネジメントを担当後、08年からクロームの日本オフィスでの開発リーダーとして、社内外の技術者とともにウェブ技術を推進する。11年の東日本大震災の際、有志とともにITで復興支援を支えるコミュニティーである「Hack For Japan」を立ち上げた

 誰でも経験が長くなると、意思決定する際に一瞬決断が遅れてしまうことはよくありますよね。グーグルでチームのマネージャーがそんなことをすれば、入社したばかりのチームメンバーからさえ「それって、官僚的で決断が遅いですよ」とたしなめられることもあります。

 さっさと決めて走りださなければという空気が、経営トップから社員一人ひとり人まで社内のあちこちに漂っている。それがグーグル特有の、スピード感が途切れることがない社風を生み出しているのだと思います。

 もう一つ、なんでもオープンにしようとする姿勢がDNAとして染みついているのも大きな特徴でしょう。できるだけ必要な情報を公開し、社内外で共有すると考えるのがグーグル流。通常であればガバナンス(企業統治)に配慮してクローズドにするであろう情報まで、私たちは大半を社内で公開してしまいます。社外に対して都合の悪い情報でも、必要であればきちんとオープンにする。そして称賛も批判も含めてすべてを恐れず耳を傾けます。

 さらにグーグルは、ユーザーからのフィードバックや社外からの批判も含めて、次のアクションにつなげます。だからβ版としてサービスを実験的にどんどん公開します。

■「よき市民」でなければ認められない

「上司があれやこれや言う前にエンジニア間で自発的に学ぶ空気が生まれていることです」。及川氏はグーグルの社風を象徴するエピソードをこう明かす
「上司があれやこれや言う前にエンジニア間で自発的に学ぶ空気が生まれていることです」。及川氏はグーグルの社風を象徴するエピソードをこう明かす

 グーグルの企業文化を端的に示す言葉があるので紹介しましょう。「スタートアップのカルチャーを維持することが大切なのではなく、自分たちが成長してきたようなスピードや方法で、企業文化をよりよく改善することが大切だ」というものです。創業者のセルゲイ・ブリン氏とラリー・ペイジ氏が過去に語った言葉です。今がベストだとは一瞬たりとも思わずに、変化し続ける。グーグルの全社員が、変化しないことの方を恐れます。

 この企業文化を守るためにグーグルは、人材育成に非常に力を入れています。入社したばかりの新人であっても、リーダーシップが求められます。

 もちろんプロジェクトに参加したばかりなど経験が少ない人の場合は、リーダーシップが求められる範囲は小さい。影響範囲も少ないことがほとんどですが、それでも一人ひとりが担当者としてリーダーシップを発揮し、しっかりと社内外に向けて説明責任を果たさなければなりません。なにをいつどうするか個人に責任を持たせるのです。新人だからといって「私一人では決められません」「分かりません」「できません」というのは許されません。

 特徴的な社風だなぁと思うのは、上司があれやこれや言う前にエンジニア間で自発的に学ぶ空気が生まれていることです。私が開発を率いているウェブブラウザー(閲覧ソフト)「クローム」はオープンソースプロジェクトであるため、誰でも機能追加や修正を行えます。

 ただプログラムを直接変更するためには、「コミッター」という権限を取得する必要があります。コミッターという権限は一種の称号で、プロジェクトのよき市民であるという意味合いもあります。

 つまりいくら優秀なエンジニアであっても、自分のやりたいことだけをやっているだけでは、コミッターになれません。バグをなくしたりほかのコミッターの作業を手伝ったり、自分のやりたいことだけでなく、プロジェクト全体が円滑に進む貢献をして初めて得られます。コミッターになれなければ、いくら優れたプログラムを書いてもその機能がクロームに採用されることはありません。

 たとえば新人が10人配属されたら、その10人は全員がなるべく早くコミッターになることが期待されます。コミッターにならないとやれることが限られるため、正式なタスクが与えられる前にまずはコミッターになることが新人の最初の課題となります。既存のプロジェクトメンバーも新戦力に早く正式なチームの一員になってほしいため、できるかぎり協力します。

 そのうち何人かがコミッターになり始め、それがまた刺激になり全員が早い段階でコミッターになります。このように切磋琢磨(せっさたくま)しあい自らを伸ばそうという環境が生まれます。

■受験生同士が鍛え合うような健全な競争

エンジニア同士の関係が、受験勉強に取り組む仲間同士の関係に近いと分析する及川氏。互いに永遠に刺激しあう環境があるのだという
エンジニア同士の関係が、受験勉強に取り組む仲間同士の関係に近いと分析する及川氏。互いに永遠に刺激しあう環境があるのだという

 エンジニアが自分の取り組みを紹介し、社内外からもゲストを呼んで最新の動向を学べるような刺激が受けられる場も設けています。「テックトーク」と呼ぶ社内の勉強会で、週に何回か開催されています。また、素早く問題点を解決したり複雑な機能を設計したり、常に新しい技術の習得を続けてそれをほかのエンジニアと共有するエンジニアは自然と周りから一目置かれるようになります。

 周りからも認められれば、社内でどんどん新しいチャレンジができるようになります。同時にほかのエンジニアも、自分も負けてられないとさらに仕事に打ち込む好循環が起こるのです。

 もしかしたらグーグルのエンジニアは、ある意味みんな生意気かもしれません。自分に自信がありますし、グーグルに入社してどこまで自分が通用するか腕試ししてやろうと思う野心的な人もいます。しかし周囲を蹴落とすかというとそんなことは全くなく、がんばって知恵をひねり出してプロジェクトなどに貢献しようとする。だからこそ、いい形の競争が生まれやすいといえます。

 これが良いたとえかわからないのですが、グーグル社内でのエンジニア同士の関係は受験生同士の雰囲気にも似ているのではないかと感じることがあります。受験はもちろんほかの受験生との競争なのですが、同じように希望校を目指す仲間と一緒に成長できる機会でもありました。たとえば模試でライバルに負けないためには、ほかの受験生の足を引っ張るのではなくひたすら勉学に打ち込むことが必要です。

 受験生同士が刺激し合いともに成長する。そんな関係はどことなくグーグル社内のエンジニア同士の関係をほうふつとさせるところがあります。受験は入試で終わりますが、グーグルは永遠に切磋琢磨(せっさたくま)できる仕事環境だといえるかもしれません。

 オープンに情報共有でき、年齢や経験に関係なくプロジェクトに貢献できるなど、グーグルは組織が大きくなっても起業当時に強みとしていたことが運営方法は変われど残っている。だから途切れることなく世界中のグーグルのオフィスから、日々イノベーションが生まれてくるのだと思います。