藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

アウトプット指向。

脳科学者の人から「自分の生きているうちに全容が解明されることはないだろう」という予言を聞いたことがあるが、健康の話、病気の話、薬の話とか。そう言えばそれだけじゃなくて物理の話とか宇宙の話とかでも門外漢がスッと理解できるものは少ないし、なによりも時代が進むにつれどんどん新発見が出てくる。

一昔前の常識は基準ではなくなり、だから今のスタンダードも「ほんとかな?」と思うのも無理もないだろう。
何につけ人類が真理にたどり着くのはまだまだ先のことなのかもしれない。

脳の記憶についての日経記事。
記憶に関わる脳の「海馬」を活性化させるには「目的と制限時間の設定」が重要だという話。
結局自分で海馬の存在や「感情系や記憶系」が脳のどこにあるのかを意識することはできないけれど、どうも

「思考・感情・記憶系」という脳の記憶部位に対し、「運動・理解・視覚・聴覚系」の働きの話を聞いていると、入力と出力のバランスが重要なのではないかな、と思った。

自分たちは普段視覚、聴覚、触覚といった方法で圧倒的にインプット過多に過ごしている。
「目的を意識する」とか「制限時間を決める」というのはそんなインプットの洪水に制限をすることになる。
さらに、日常生活のバランスで言えばアウトプットが極端に少ないのではないか。
「話す」というアウトプットは膨大だが、なにせ話したことは記録に残らない。
どんどんどんどん話しても、そのうち互いの記憶に残っているものは僅かでしかない。
「後に残るアウトプット」としては文字とか作品とかだが、その量たるやインプットとは比べるべくもない。

外国語を習得するのに「短文の音読」が非常に有効だというが、ともかく知識の理解とか記憶には「相当な量のアウトプット」を心掛ける必要があるのではないだろうか。

何でもメモし、記録を整理し、そこから何かのアウトプットを生み出す。
ということが脳が偏らずに活性化する秘密なのではないかと感じたのだ。

インプットの刺激ばかりじゃ、そのうち慣れてしまうし「インプットを分析・加工して次の何かをこね繰り出す」ということがそもそもなくなってくる。
ネット時代だからこそアウトプットを見直す必要があるのではないだろうか。

「海馬」を働かせるコツは 脳専門家のオススメ記憶術 2015/10/24 6:30日本経済新聞 電子版



 「記憶のアウトプット力」を高める第一歩は、脳が効率的に記憶する仕組みを知ること。脳が記憶するメカニズムについて研究を行ってきた医学博士・加藤俊徳さんに聞いた。


■「目的」と「時間」を設定すれば海馬はよく働く

 記憶に関する著作も多い脳専門医の加藤俊徳さんによると、「記憶力を効率的に高めるには、記憶に関わる脳のメカニズムを知ることが不可欠」という。

 記憶は、脳内で情報伝達を行う神経細胞のネットワークによって整理、蓄積される。下の図は、加藤さんが脳内に存在する神経細胞を、機能ごとに8つの系統に分類したものだ。このうち記憶に関わるのが、側頭葉に位置する「海馬」。入ってきた情報の取捨選択をして集積し、必要に応じて取り出す“記憶の司令塔”だ。しかしこの海馬、実はデリケートで怠け者なのだという。

 「膨大な情報をやみくもに詰め込むだけでは、海馬がストレスを感じて働かなくなり、記憶力が低下することもある。いざ使いたい時に情報を引き出すためには、海馬が働きやすい形で、効率よく情報を入れることが重要です」

脳には1000億以上の神経細胞が存在し、似た働きをする神経細胞が集まってグループとして働く。加藤さんはこれを「脳番地」と名づけ、機能別に8系統に分類。記憶力の要となるのは海馬周辺の記憶系脳番地だが、その活性には思考系・感情系の脳番地も深く関わっている

 海馬を働かせるポイントは2つある。1つ目は使う目的をはっきりさせること。「例えば、資料を読み込む時には漫然と読むのではなく、『明日のプレゼンで引用したい』など、情報をアウトプットするシーンを具体的にイメージする。目的が明確になれば、海馬は俄然(がぜん)やる気になるのです」

 2つ目は制限時間を設けることだ。仕事を進める際、締め切りが近づかないとお尻に火がつかない人は少なくないが、実は海馬もそのタイプという。「10分以内にキーワード10個を覚える」など、制限時間を設定すると、海馬は活性化する。一時的に覚えればいい情報であれば、アウトプットの予定についても「3日後の商談の時に覚えていたら、以降は忘れてもいい」などと意識すると、海馬の負担が軽くなる。

 もう1つ知っておきたいのが、記憶には海馬だけではなく、他の部位も深く関わっているということ(上図)。脳のネットワークは互いに関係しながら働くので、視覚や聴覚、運動など様々な刺激が、記憶力の向上につながる。


■思考系、感情系…様々な刺激で記憶しやすくなる


 「特に、記憶に深く関わるのは『思考系』と『感情系』の部位。『思考系』は前頭前野に当たる部位で、物事を順序立てて考え、判断、実行する。扁桃体を中心とした『感情系』は、喜怒哀楽の表現や他人への共感に関わる。つまり、記憶する時には意味のない言葉の羅列よりも、思考系部位を刺激する『ストーリーとして理解できる情報』や、感情系部位を刺激する『これは面白い、共感できるといった感情を伴う情報』が定着しやすい(前ページ図)。『覚えた内容を人に話す』など、コミュニケーションを伴うアウトプットができればなおいい」

 目で見る、声に出す、耳で聞く、体を動かすといった、様々な感覚刺激も、記憶の定着に有効だ。加藤さん自身も日頃の業務や講演活動などで記憶力が必要となる時には、「目で見た情報を手を動かして書き写し、書いた情報を声でそらんじて耳で聞く」というふうに、できるだけ複数の感覚を同時に働かせるようにしているという。

 一方で、「現代の生活は聴覚刺激で記憶する機会が激減している」と加藤さんは指摘する。

 この10年の間に、ビジネスにおけるコミュニケーションの主たる手段は電話からメールにシフトし、「耳で聞き取って覚える」という行為自体が、生活の中で少なくなった。脳内で使われなくなった「聞いて覚える」という情報伝達の回路は衰え、記憶力にも影響する。オフィスにかかってくる電話に積極的に出て伝言メモを取るのも、実は記憶力アップにつながる。

 次のページでは、加藤さん監修による「記憶のアウトプット力」を測るドリルを実際にやってみて、力試しをしてみよう。 




■「妨害記憶」が情報を引き出すトレーニングに

 上のドリルは、加藤さんが考案した「記憶力を鍛えるドリル」の中から、特に「アウトプット力=必要な情報を引き出し、実践的に使う力」の実力を測り、鍛えるもの。アウトプット力とは、「思い出す力」とも言い換えられる。

 まず、(1)の絵柄を見て、5つの買い物リストを覚える。絵と文字の両方を見ることで、右脳と左脳が同時に働く。声に出して覚えてもいい。30秒程度で覚えよう。

 次に、(2)の計算式をゆっくり解こう。(1)で覚えた買い物リストをすぐに思い出すのではなく、全く関係のない計算をするというのが、このドリルのポイント。計算式が「妨害記憶」となって、「思い出す力」を鍛える適度な負荷になる。特に割り算は、脳を活性化するという。

 計算を終えたら、(3)の選択肢の中から、(1)で覚えた買い物リストを選ぼう。紛らわしい選択肢の中から、正確な記憶を引き出す力が問われるドリルになっている。

 こうした形で、「情報をいったん覚えた後に、全く関係のない作業を行ってから思い出す」トレーニングは、記憶のアウトプット力(思い出す力)を高める。

 日常生活の中でも意識して、記憶力アップにつなげよう。

加藤俊徳さん
医学博士。加藤プラチナクリニック院長、「脳の学校」代表。脳番地を用いた脳の強化法を提唱する脳科学者。『脳の強化書』『記憶力の鍛え方』『高学歴なのになぜ人とうまくいかないのか』など著書多数。


日経ビジネスアソシエ 2015年8月号記事を再構成]